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著者 | ジェニー・オデル |
訳者 | 竹内要江 |
発行 | 早川書房 |
発売日 | 2023/11/07 |
「意味」を持たない時間、その豊かさとは?
SNSなど、人々の関心を売買する「アテンションエコノミー(注意経済)」が跋扈する現代。そこから抜け出すために必要なのは、効率主義から離れてみること――つまり、「何もしない」ことだ。
つながりを避けては生きられない時代に自らにふさわしいあり方を見つけ出すヒントを、哲学者、鳥たち、該当を行き交う人びとが教えてくれる。アーティストでもあり作家である著者が、古今東西の芸術や思想の知見を駆使して綴る、新たなスタイルの自己啓発書。
【本書「はじめに 有用の世界を生きのびる」より】
何もしないでいることほど難しいことはない。人間の価値が生産性で決まる世界に生きる私たちの多くが、日々利用するテクノロジーによって自分の時間が一分一秒に至るまで換金可能な資源として捕獲され、最適化され、占有されていることに気づいている。
(中略)結局人生はいちどきりなのだ。哲学者のセネカは「生の短さについて」という文章のなかで、過去を振り返ると人生が指の間からこぼれ落ちていることに気づく恐怖について述べている。フェイスブックに夢中になって、ふと気づいたら知らぬ間に一時間経っていた誰かさんのことを言っているみたいだ。
【本書解説/小川公代(英文学者) より】
私たちは能力主義が蔓延(はびこ)る時代に成果を出さなければと駆り立てられ、何か大事なものを失いつつある。ただ、それが何かを言明することは難しい。本書は、その「何か」を死力を尽くして言葉にしようとする。
- はじめに―有用の世界を生きのびる
- 第1章 「何もない」ということ
- 第2章 逃げ切り不可能
- 第3章 拒絶の構造
- 第4章 注意を向ける練習
- 第5章 ストレンジャーの生態学
- 第6章 思考の基盤を修復する
- おわりに―マニフェスト・ディスマントリング:明白な解体
この記事では『何もしない』(原注pp.1-19)の参考文献(邦語)についてご紹介します。
参考文献一覧
ジル・ドゥルーズ(2010)『記号と事件: 1972-1990年の対話』河出書房新社
ジョン・スタインベック(1989)『キャナリー・ロウ: 缶詰横町』ベネッセコーポレーション
レベッカ・ソルニット(2017)『ウォークス 歩くことの精神史』左右社
デイヴィッド・エイブラム(2017)『感応の呪文: 〈人間以上の世界〉における知覚と言語』論創社
ダナ・ハラウェイ(2017)「人新世、資本新世、植民新世、クトゥルー新世ー類縁関係をつくる」『現代思想 2017年12月号 人新世 ―地質年代が示す人類と地球の未来―』青土社
著:ブルーノ・ラトゥール, 著:ダナ・ハラウェイ, 著:ティモシー・モートン, 著:中村桂子, 著:北野圭介, 著:篠原雅武, 著:大村敬一, 著:奥野克巳, 著:水口憲哉
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ハンナ・アレント(1994)『人間の条件』筑摩書房
アーシュラ・K・ル・グィン(1986)『所有せざる人々』早川書房
ハーマン・メルヴィル(2013)「代書人バートルビー」『アメリカン・マスターピース 古典篇』スイッチパブリッシング
ウォールデン(1995)『森の生活 上』岩波書店
H・D・ソロー(1997)『市民の反抗 他五篇』岩波書店
B・エーレンライク(2006)『ニッケル・アンド・ダイムド -アメリカ下流社会の現実』東洋経済新報社
スティーブン・グリーンハウス(2009)『大搾取!』文藝春秋
ジョナサン・クレーリー(2015)『24/7 :眠らない社会』NTT出版
デイヴィッド・ホックニー(1993)『僕の視点-芸術そして人生』美術出版社
著:デイヴィッド ホックニー, 編集:スタンゴス,ニコス, 原名:Hockney,David, 翻訳:泰嘉, 斉藤
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マルティン・ブーバー(1979)『我と汝・対話』岩波書店
エミリー・ディキンソン(1998)『ディキンソン詩集(対訳): アメリカ詩人選 3』岩波書店
W・ジェームズ(1992)『心理学』岩波書店
ゲーリー・スナイダー(2000)『野性の実践』山と渓谷社
デヴィット・フォスター・ウォレス(2018)『これは水です』田畑書店
レベッカ・ソルニット(2020)『定本 災害ユートピア――なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか』亜紀書房
ロビン・ウォール・キマラー(2018)『植物と叡智の守り人』築地書館
ヘンリー・D・ソロー(2005)『ウォーキング』春風社
ジョシュ・メイロウィッツ(2003)『場所感の喪失 上: 電子メディアが社会的行動に及ぼす影響』新曜社
著:ジョシュア メイロウィッツ, 原名:Meyrowitz,Joshua, 翻訳:一, 安川, 翻訳:香陽, 上谷, 翻訳:啓子, 高山
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