新刊紹介

新刊紹介_20241103

 
新刊紹介

佐藤郁哉『リサーチ・クエスチョンとは何か?』筑摩書房

概要

アカデミックな調査・分析、卒論・修論、探究学習から、マーケティング、ビジネス・リサーチにも!

問いを立て、調査・分析して報告する。その営みにおいて最初の関門である「問いを立てる」ことはそう簡単なものではない。それは立てれば終わりというわけではないからである。研究を進めていくなかで、当初の問いとは異なる形に問いを磨き「育てる」必要がある。そうした過程を経て、研究としてのセレンディピティが生まれるのだ。これまで語られてこなかった新しいリサーチ・クエスチョンとの向きあい方がわかる。

目次
  • はじめに――「リサーチ・クエスチョン」をめぐる不都合な真実
  • 序 章 論文のペテン(詐術)から学ぶリサーチ・クエスチョンの育て方
  • 第1章 定義する――リサーチ・クエスチョンとは何か?
  • 第2章 問いの内容を見きわめる――何について問うのか?
  • 第3章 問いの目的について確認する――そもそも何のために問うのか?
  • 第4章 「ペテン」のからくりを解き明かす――なぜ、実際の調査と論文のあいだにはギャップがあるのか?
  • 第5章  問いを絞り込む――どうすれば、より明確な答えが求められるようになるか?
  • 第6章 枠を超えていく――もう一歩先へ進んでいくためには?
  • おわりに/注/参考文献

打越正行『ヤンキーと地元―解体屋、風俗経営者、ヤミ業者になった沖縄の若者たち』筑摩書房

概要

路地裏で、基地のネオンの道の片隅で、暗いコンビニの駐車場で、
バイクを止めて、彼らの言葉を拾う。
それは暴力以前にあったお話、掟を生きる前の傷みの話でもある。
掟がなぜ作られたのか、掟の外部はあるのか、
夜の街で拾われた言葉から考えたい。
――上間陽子(社会学者)

バイクのうなり、工事現場の音、キャバクラの笑い、深夜のコンビニ前のささやき。
本書を満たす音をどう聞き取るのが「正しい」のかは、まだ決まっていない。
――千葉雅也(哲学者)

暴走族のパシリから始まった沖縄のフィールドワーク、10年超の記録。
第6回沖縄書店大賞沖縄部門大賞受賞、各紙書評で絶賛の話題書、待望の増補文庫化!

解説 岸政彦

生まれ故郷が嫌いだと吐き捨てるように言った、一人の若者。その出会いを原点に、沖縄の若者たちをめぐる調査は始まった。暴走族のパシリとなり、建設現場で一緒に働き、キャバクラに行く。建設業や性風俗業、ヤミ仕事で働く若者たちの話を聞き、ときに聞いてもらう。彼らとつき合う10年超の調査から、苛酷な社会の姿が見えてくる──。補論を付した、増補文庫版。

「沖縄で出会ったヤンキーの拓哉は、「仕事ないし、沖縄嫌い、人も嫌い」と、吐き捨てるように言った。沖縄の若者が生まれ故郷を嫌いだとはっきり言うのを初めて聞いたので、私は驚いた。彼が嫌いな沖縄とはなんなのか。そもそも、彼はどんな仕事をし、どんな毎日を過ごしているのか。そうしたことを理解したいと私は思った。10年以上にわたる沖縄での調査の原点は、そこにあった。」(「はじめに」より)

目次
  • はじめに
  • 第一章 暴走族少年らとの出会い
  • 第二章 地元の建設会社
  • 第三章 性風俗店を経営する
  • 第四章 地元を見切る
  • 第五章 アジトの仲間、そして家族
  • おわりに    
  • あとがき    
  • 補論 パシリとしての生きざまに学ぶ ―― その後の『ヤンキーと地元』 
  • 解説 打越正行という希望  岸政彦

野口裕二『増補 アルコホリズムの社会学―アディクションと近代』筑摩書房

概要

ひとはなぜアルコホリズム(アルコール依存)に陥るのだろうか。原因を「意志の弱さ」に求めていては何も解決しない。自分の意志ではどうにもできないと認めることが回復への第一歩となるのだ。そこから見えてくるのは、「自らの意志で欲求をコントロールする主体」という、近代社会の理想的人間像である。アディクション(依存症)とは、そうした近代的あり方の綻びが露呈したものに他ならない。だとすれば、回復への道は近代合理主義が切り捨ててきたものの中にこそ見出し得る──。ベイトソンやギデンズの思想に依拠しつつ、アディクションを社会学的に解明した先駆的名著。

目次
  • 序 章 アルコホリズムへの社会学的接近
  • 第1章 アルコホリズムとスティグ
  • 第2章 アルコホリズムの医療化
  • 第3章 家族療法としての断酒会とAA
  • 第4章 セルフヘルプ・グループの機能
  • 第5章 セルフヘルプ・グループの原点:AA
  • 第6章 集団精神療法
  • 第7章 集団精神療法の微視社会学
  • 第8章 地域ケアとネットワーク・セラピー
  • 第9章 共依存の社会学
  • 第10章 アディクションと近代
  • 補論1 アディクションの社会学
  • 補論2 オープンダイアローグとアディクション
  • 補論3 AAとスピリチュアリティ
  • 初出一覧
  • あとがき
  • 文庫版あとがき
  • 解説(信田さよ子)

ヤン・ヴェルナー・ミュラー『恐怖と自由―ジュディス・シュクラーのリベラリズム論と21世紀の民主制』みすず書房

概要

これほど多くの人がリベラルを攻撃したがるのはなぜだろう。その攻撃に正当性はあるのだろうか。リベラリズムを打ちのめして生まれる非リベラルな社会は、リベラルな民主制社会より良くなるのだろうか。それは誰にとって、どう良くなるのだろう。執拗な攻撃を受けてリベラルは自己批判を始めたが、それが実を結んでいないのはなぜだろう。――こうした問いにどう答えるかは、リベラリズムをどうとらえるかによる。そこで本書が指針にするのはジュディス・シュクラーである。
シュクラーは20世紀の最も重要な政治思想家のひとりであり、本書はその著名な論文「恐怖のリベラリズム」に依拠している。これは、身体的・精神的な残虐さの恐怖に人びとをさらす権力を注視し、そうした恐怖の低減をリベラリズムの礎に置く思想である。一見とても平凡に見えるこの思想がリベラリズムの真価をよく示しているということを、本書は21世紀の今の状況に即してリアルに語っている。
「リベラリズムは時代遅れなのか。廃れるべきは、偽りの方程式、偽りの対立、さらに誤った一般化を扱うリベラリズムについての議論である」。
巻末には「恐怖のリベラリズム」の全訳を併録した。

目次
  • 出発地――自己満足と自虐の狭間から
  • 第1章 これは一方通行路なのか?
  • 第2章 むち打ち症をわずらう
  • 第3章 シュクラーの地図を見る
  • 第4章 新しいルートを検索する
  • 到着地、ただし目的地ではない
  • 謝辞
  • 「恐怖のリベラリズム」 ジュディス・シュクラー
  • 訳者あとがき
  • 原注

ヒューゴー・ムンスターバーグ, 柳宗悦『民藝のみかた』作品社

著:ヒューゴー・ムンスターバーグ, 著:柳 宗悦, 翻訳:田栗 美奈子, 監修:朝倉 圭一, 監修:古屋 真弓, 編集:朝倉 圭一, 編集:古屋 真弓, 解説:鞍田 崇
概要

日本に四年滞在した東洋美術史の碩学が、〈民藝〉のすべてを工芸分野ごとに詳説。

民藝の精神から説き起こし、陶器、籠、漆器、玩具、織物、絵画、農家の建物、そして1950年代の民藝運動の隆盛にいたるまで。
日本の民藝の歴史を知るための最良の一冊。図版100点超収録。
附:鞍田崇「解説 いまなぜ民藝か」

本書は、日本の主要な民藝のあらゆる側面、特にその現状を知るための、よき入口を示してくれる。その内容は、民藝とは何かという初歩的な考察から、現在、日本で盛んになっている民藝運動についての説明まで、多岐にわたっている。読みやすく、よくまとまっているので、いつも手近に置いてすぐに参照できるし、図版の豊富さも多くの読者の興味を引くことであろう。著者はすでに東洋の芸術を扱った著作をいくつも発表しており、本書で取りあげるテーマを論じる資質を十分に備えている。――柳宗悦(「序文」より)

目次
  • 序文 柳宗悦
  • 第一章 日本の民藝の精神
    民衆的芸術に対する新たな関心/民衆のための芸術/世界の民藝の現状/民藝研究の歴史/美と実用性/日常品の美/実用性と芸術性/庶民の芸術/民藝の精神/今も生活に根ざす民藝
  • 第二章 陶器
    日本の民藝陶器/小鹿田(おんた)焼/小石原焼/苗代川焼/龍門司焼/二川焼/白石焼/島根県の窯業/布志名焼/牛ノ戸焼/瀬戸焼/立杭焼/益子焼/東北地方の窯業/楢岡焼/小久慈焼/堤焼/本郷焼
  • 第三章 籠と関連製品
    日本の籠製品の位置づけ/九州地方の竹細工/東北地方と各地の品々/手漉きの紙
  • 第四章 漆器、木器、金属器
    漆器の歴史と現状/秀衡塗/さまざまな漆器/木器/金属器
  • 第五章 玩具
    民藝玩具の産地/民藝玩具の起源/玩具の種類/こけし/三春駒/獅子頭/きじ馬と笹野彫/張り子/だるま/純信とお馬/三春人形/虎と牡牛の張り子/藁馬/流し雛/招き猫/犬宮と三猿/手まり
  • 第六章 織物
    民藝織物の現状/民藝織物の素材/織物のデザイン/織りと染め/沖縄の民藝織物/沖縄の紅型(びんがた)/沖縄の絣模様/沖縄の縞と格子模様/丹波布/被衣(かつぎ)とこぎん/絵絣/浴衣
  • 第七章 絵画と彫刻
    民藝と芸術の関係性/大津絵の歴史/大津絵の特色/大津絵の題材/絵馬/彫刻と拓本/仏教美術との関わり
  • 第八章 農家の建物
    農家の建物の伝統/泰山荘の屋根/泰山荘のデザイン/農家の間取り/岐阜・奈良・長野の農家/濱田庄司邸
  • 第九章 現代の民藝運動
    日本民藝協会の歩み/民藝作家の活躍/濱田庄司/河井寛次郎/芹沢銈介/棟方志功
  • 謝辞
  • 解説 いまなぜ民藝か 鞍田崇
  • 訳者あとがき

加須屋明子編『芸術と社会―表現の自由と倫理の相克』中央公論美術出版

概要

芸術の「自由」はどこに?
芸術と社会は時に対立し、表現の自由と倫理的制約は複雑な関係にある。その中で歴史修正主義や検閲が、権力の維持やプロパガンダのために使われてきた。芸術が社会に与える影響に焦点を当て、芸術が社会において果たす役割を探求する。

目次
  • はじめに 加須屋明子 
  • HOMO ARTIFEX ―芸術における自由について レシェク・ソスノフスキ(加須屋明子 訳) 
  • 戦後の歴史認識 日本とポーランド 吉岡洋 
  • 新しい回帰 アンダ・ロッテンベルク(加須屋明子 訳) 
  • ロマン・インガルデン ―人間と創造する義務 レシェク・ソスノフスキ(加須屋明子 訳) 
  • 芸術と民主主義 ポーランドと日本の事例から 加須屋明子 
  • 「展示」という制度と大衆 ―文化の基層構造から美術制度を捉える― 山下晃平 
  • 芸術の伝統 近代化と検閲 マリア・ブレヴィンスカ(加須屋明子 訳) 
  • ホロコースト芸術に対するポーランドの歴史政策 ピョトル・フォレツキ(加須屋明子 訳) 
  • 戦争の記憶と忘却 ―日本とポーランド― 重田園江 
  • ホロコースト写真をめぐる倫理的諸問題 カダン、 ≪諸国民なかの正義の人≫、カラー写真 加藤有子 
  • 国家主義者による記憶の流用について ピョトル・リプソン(加須屋明子 訳) 
  • ウェストスプレイニング ―中東欧諸国における政治歴史的主体の回復 現代美術作家の諸例から パヴェウ・パフチャレク
  • 高度情報化社会における検閲の考え方―AI時代を見据えて― 井出明 
  • ラウンドテーブル・ディスカッション 加須屋明子 編 
  • おわりに 加須屋明子 
  • 参考文献一覧
    図版出典一覧
    〔ワークショップ報告〕音響実践としてのブリコラージュ ―芸術表現の自由に関する国際会議への芸術的実践的貢献として― 講師 ダニエル・コニウシュ 司会 加須屋明子 
    行事一覧/ List of events
    概要/ Summary
    執筆者一覧
    事項索引
    人名索引

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