新刊紹介

新刊紹介_20240317

 
新刊紹介

細谷雄一, 板橋拓己編著『民主主義は甦るのか?―歴史から考えるポピュリズム』慶應義塾大学出版会

概要

歴史は繰り返すのか――。

ポピュリズムは民主主義をどのように崩壊させていくのか。
また衰退した民主主義はどうすれば再生できるのか。
現代の難問を解く上で、歴史からのヒントを与える注目作。

世界の潮流は、ポピュリズムを背景にした権威主義体制や、大衆迎合的な政策によって大きく変動している。
戦間期(1920~30年代)、戦後から現在までの各国の動きを歴史的視点から探り、民主主義との関係をめぐって問題提起する。

目次
  • 序 章 細谷雄一 衰退する民主主義──歴史から考える民主主義とポピュリズム  
  • 第一部 戦間期ヨーロッパの教訓
    第1章 板橋拓己 戦間期ヨーロッパにおける民主政の崩壊とファシズム・権威主義の浸透  
    第2章 水島治郎 オランダの経験──戦間期民主主義における「三つの挑戦」  
    第3章 山本みずき イギリスの経験──「議会主義への懐疑」と「自由放任の終焉」  
    第4章 高橋義彦 オーストリアの経験──「非」ポピュリズム的なファシズム?  
    第5章 長野 晃 ドイツの経験──エルンスト・ルドルフ・フーバーと「ナチズム」  
  • 第二部 戦間期日本の教訓
    第6章 五百旗頭薫 戦間期日本の政党内閣──緊張・生命・国体 
    第7章 村井良太 民主主義をめぐる帝国期日本の教訓──かつて日本でも民主的後退があった  
    第8章 竹中治堅 なぜ戦前日本の民主化途上体制は崩壊したのか  
  • 第三部 現代における危機
    第9章 藤山一樹 ブレグジットにひそむ記憶と忘却──〈一九四〇年〉の呪縛?  
    第10章 大串 敦 ロシアのポピュリズム的個人支配体制──その成立と問題点  
    第11章 ジョン・ニルソン= ライト 現代日本のポピュリズム──ノスタルジーとロマン主義  
  • 付 論 板橋拓己 ポピュリズムを考える

ジョアン・C・トロント『ケアリング・デモクラシー―市場、平等、正義』勁草書房

概要

“ケアに満ちた民主主義”を訴えてきたフェミニスト政治学者トロントの主著を邦訳。ケアの倫理を踏まえた社会への変革を提起する。

これまでの民主主義論が前提する自立/自律したリベラルな個人像を批判し、誰もが「他者に依存せざるをえない存在」という人間観の下での社会構想を訴えるとともに、「ケア」を周縁に封じ込めてきたその政治性や権力性を問う。民主主義の定義を「ケア責任の配分に関わるもの」とし、ケアの倫理を踏まえた社会への変革を提起する。
【原著】Joan C. Tronto, Caring Democracy : Markets, Equality, and Justice(New York University Press, 2013)

目次
  • 日本語版読者の方々へ
  • はじめに
  • 謝 辞
  • 序 章 ケアがもはや「くつろぎの場」にはないとき
  • 第1章 民主主義の再定義――ケア責任論争の解決へ向けて
  • 第2章 なぜ自己責任は民主主義にとって不十分なのか 
  • 第3章 タフな男はケアしない、のか?――ジェンダー、自由、ケア
  • 第4章 私事化されたケアの悪循環――ケア、平等、民主主義
  • 第5章 市場はケアすることができるのか?――市場、ケア、正義
  • 第6章 民主的にケアすること 
  • 第7章 ケアリング・デモクラシー
  • 原注
  • 監訳者解説
  • 参考文献/人名索引/事項索引

小川公代『ゴシックと身体―想像力と解放の英文学』松柏社

概要

家父長制に抗う女たちがもちいたものこそ、“ゴシック”の戦術だったのではないか。
メアリ・シェリー、アン・ラドクリフ、メアリ・ウルストンクラフト、ウィリアム・ゴドウィン、ロバート・マチューリン、
エミリー・ブロンテ、シェリダン・レ・ファニュらイギリスのゴシック作家たちの作品を読み解く先に見えるものとは──

目次
  • “ゴシック”という戦術──序論にかえて
  • 第1章 ラドクリフ『ユードルフォの謎』──生気論と空想のエンパワメント
  • 第2章 ラドクリフ『イタリアの惨劇』──人権侵害に抗する
  • 第3章 ゴシックにおけるヒロイン像──ウルストンクラフトのフェミニズム
  • 第4章 ゴドウィンのゴシック小説──理性主義と感受性のあわい
  • 第5章 シェリー『フランケンシュタイン』──バラッドに吹き込む精気
  • 第6章 マチューリン『放浪者メルモス』──家父長的な結婚を問う
  • 第7章 ブロンテ『嵐が丘』──魂の生理学、感情の神学
  • 第8章 ヴァンパイア文学から#MeTooまで──〈バックラッシュ〉に抵抗する
  • 註/引用・参考文献 /人名・書名索引

李太喜『自由と自己の哲学―運と非合理性の観点から』岩波書店

概要

長く、哲学者・神学者を悩ませてきた決定論から自由を擁護し、さらに進んで非決定論に向き合い、運と非合理性にさらされる人間の実存を考察する。とるべきではない選択肢を前に、ときにそう振る舞ってしまう人間の自由がもつ価値とは何か。その自由は私たちの生にとってどんな重要性をもっているのか。國分功一郎氏、野矢茂樹氏推薦。

目次
  • はじめに
  • 第1章 選択可能性と自由の関係がなぜ問題になるのか
  • 第2章 選択可能性と自由は整合的に理解できるのか
  • 第3章 選択可能性はなぜ必要とされるのか
  • おわりに
  • 索引
  • 参考文献

本多康作, 八重樫徹, 谷岡知美編著『ヘイトスピーチの何が問題なのか―言語哲学と法哲学の観点から』法政大学出版局

著:本多 康作, 著:八重樫 徹, 著:谷岡 知美, 編集:本多 康作, 編集:八重樫 徹, 編集:谷岡 知美
概要

「言論の自由」や「表現の自由」との関係など、法規制の是非も含め、ヘイトスピーチをめぐる議論は錯綜している。ヘイトスピーチそれ自体の悪さは、話し手の意図にあるのか、言葉それ自体にあるのか、言葉において実行される行為にあるのか、あるいはその行為が惹き起こす結果にあるのか。言語哲学、法哲学、情報学、文学の学際的観点から、ヘイトスピーチと差別に関する問題の本質を究明する。

目次
  • 序論──ヘイトスピーチの何が問題なのか 本多康作
  • 第1部 言語哲学から
    第1章 発話行為を越えて──ヘイトスピーチと規範制定の遍在について メアリー・ケイト・マクゴーワン/谷岡知美゠訳
    第2章 ヘイトスピーチとマイクロアグレッション──相違点と共通点 池田喬
    第3章 ヘイトスピーチ・推論主義・社会集団 堀田義太郎
    第4章 発話の害の構成的説明は因果を気にしなくてもよいのか  八重樫徹
    第5章 ヘイトスピーチに対する語用論的アプローチ 萬屋博喜
  • 第2部 法哲学から
    第6章 二一世紀における思想の市場 ロバート・マーク・シンプソン/八重樫徹・谷岡知美゠訳
    第7章 ヘイトスピーチは罰しうるのか、そもそも罰すべきなのか ロバート・マーク・シンプソン/永石尚也・本多康作゠訳
    第8章 相対主義者は、ヘイトスピーチにどこまで対抗できるのか 川瀬貴之
    第9章 オンライン上のヘイトスピーチと法的介入のグラデーション──ソーシャル・メディア・プラットフォームとの協働から 永石尚也
    第10章 表現の自由の(法)哲学的基礎──Frederick SchauerのFree Speechをてがかりに 三浦基生
  • 第3部 情報学と文学から
    第11章 人間社会における差別に関するエージェントベースシミュレーション 加藤浩介・本多康作・末原隆希・松原成那
    第12章アメリカにおける猥褻表現──『吠える』裁判(一九五七)を中心に 谷岡知美
  • 執筆者・訳者紹介

金子智太郎編『音の本を読もう―音と芸術をめぐるブックガイド』ナカニシヤ出版

概要

音と芸術をめぐる新鮮な考えかた、語りかた、聞きかたを見つけるために――
音と芸術をめぐる本、40冊についての書評、気鋭の論者たちが80冊以上を紹介しながら、サウンド・スタディーズの現在を検討する座談会を収録。サウンド・スタディーズとサウンド・アート研究の動向、広がり、そして、その来し方、行く末を一望できる、音について考えたい人のための画期的なブックガイド

目次
  • はじめに――この本の成り立ち
  • 座談会 音の本とサウンド・スタディーズ――音による思考と音をめぐる思考【前編】
  • 第1章  アーティキュレイション なぜこの音があるのか、聴く私はいかに成立するのか
    01 近藤譲『線の音楽』
    02 サロメ・フォーゲリン『ノイズと沈黙を聴く――サウンド・アートの哲学に向けて』
    03 フランソワ・ボネ『言葉と音――音響の群島』
    04 ゲイリー・トムリンソン『音楽の百万年――人類の現代性の創発』
    05 バーニー・クラウス『野生のオーケストラが聴こえる――サウンドスケープ生態学と音楽の起源』
  • 第2章 口と手と諸感覚 身体の豊かな技法
    06 細馬宏通『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか――アニメーションの表現史』
    07 ブランドン・ラベル『口の用語辞典――声と口唇幻想の詩学と政治学』
    08 ロバート・スコット『ムーンドッグ――6番街のバイキング』
    09 キャロル・パッデン、トム・ハンフリーズ『新版「ろう文化」案内』
  • 第3章 フォノグラフィ 音をいかに表現するか
    10 アナ・マリア・オチョア・ゴティエ『聴覚性――19世紀コロンビアにおける聴取と知識』
    11 キャシー・レーン、アンガス・カーライル『イン・ザ・フィールド――フィールド・レコーディングの芸術』
    12 ジョナサン・スターン編『サウンド・スタディーズ・リーダー』
    13 浜田淳編『音盤時代の音楽の本の本』
  • 第4章 音響修辞学 音によって物語る
    14 渡辺裕『感性文化論――〈終わり〉と〈はじまり〉の戦後昭和史』
    15 アンドリュー・シャルトマン『「スーパーマリオブラザーズ」の音楽革命――近藤浩治の音楽的冒険の技法と背景』
    16 『ピピロッティ・リスト――Your Eye Is My Island―あなたの眼はわたしの島―』
    17 マシュー・ハーバート『音楽――音による小説』
    18 ジェームズ・ブラクストン・ピーターソン『ヒップホップ・アンダーグラウンドとアフリカ系アメリカ文化――表層の下へ』
  • 第5章 電気になった声の世界 ボーカロイドのオラリティとは
    19 柴那典『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』
    20 増野亜子『声の世界を旅する』
    21 ケリム・ヤサール『電気になった声――電話、蓄音機、ラジオがいかに近代日本をかたちづくったのか 1868–1945』
    22 ジェイス・クレイトン『アップルート――21世紀の音楽とデジタル文化をめぐる旅』
  • 第6章 螺旋状の視聴覚論 「視聴覚連禱」以後
    23 平倉圭『かたちは思考する――芸術制作の分析』
    24 長門洋平『映画音響論――溝口健二映画を聴く』
    25 ホリー・ロジャース『ギャラリーを鳴り響かせる――ヴィデオとアート–ミュージックの誕生』
    26 ジャネット・クレイナック『反復されたナウマン』
    27 大友良英『音楽と美術のあいだ』
    28 川崎弘二、岡本隆子、小杉武久編『小杉武久 音楽のピクニック』
  • 第7章 音の生政治学 音による管理と解放
    29 ティモシー・D・テイラー『資本主義の音――広告、音楽、文化の征服』
    30 マイケル・カーワン『ヴァルター・ルットマンと多様性の映画――前衛–広告–近代性』
    31 スティーヴ・グッドマン『音の戦争――サウンド、情動、そして恐怖のエコロジー』
    32 若尾裕『サステナブル・ミュージック――これからの持続可能な音楽のあり方』
  • 第8章 蒐集と驚異 多種多様な思考の目録
    33 ラニ・シン編『ハリー・スミスは語る――音楽/映画/人類学/魔術』
    34 スティーヴ・ロデン『…私の痕跡をかき消す風を聴く――ヴァナキュラー・フォノグラフの音楽 1880–1955』
    35 裵淵亨『韓国蓄音機レコード文化史』
    36 デヴィッド・バーン『音楽のはたらき』
  • 第9章 自由の雑音 実験の政治経済学
    37 何東洪、鄭恵華、羅悅全編『造音翻土――戦後台湾のサウンドカルチャーの探究』
    38 アンドレイ・スミルノフ『サウンド・イン・Z――20世紀初頭のロシアにおける音の実験と電子音楽』
    39 アースラ・ブロック、ミハエル・グラスマイアー編『ブロークン・ミュージック(ファクシミリ版)』
    40 ポール・デマリニス『ノイズに埋もれて』
  • 座談会 音の本とサウンド・スタディーズ――音による思考と音をめぐる思考【後編】
  • 結びに代えて――音によって歴史を書き直す
  • 文献一覧
  • 初出一覧
  • 事項索引
  • 人名索引