新刊紹介

新刊紹介_20240713

 
新刊紹介

ハンナ・アーレント『真理と政治/政治における嘘』みすず書房

概要

国際政治であれ日本政治であれ、またそれに対応・反復・拡大・拡散するメディアやSNSの力も大きく影響して、(少なくとも)政治にかかわる出来事や事象をめぐって嘘が事実となり、事実や真実は嘘あるいは無となり…という状況の中でわれわれは今を生きている。
そこで、『エルサレムのアイヒマン』をめぐるバッシングと論争を機縁として書かれた、政治哲学者アーレントの精髄をしめす代表的試論「真理と政治」(1967)および、その4年後に書かれた「政治における嘘――国防総省秘密報告書(ペンタゴン・ペーパーズ)についての省察」(1971)の二篇をあらためて読んでみたい(それぞれ『過去と未来の間』『暴力について』より収録)。
「ポスト・トゥルース」や「フェイク・ニュース」といった新語が話題になり、「ポピュリズム」と呼ばれる政治現象が世界中で台頭し、デモクラシーあるいはリベラリズムが機能不全におちいっているかに見える現在、事態のあり方と意味を考えるためにも。

目次
  • 政治における嘘――国防総省秘密報告書(ペンタゴン・ペーパーズ)についての省察
  • 真理と政治
  • 訳者あとがき
  • 解説(國分功一郎)
  • 事項索引
  • 人名索引

小塩真司『「性格が悪い」とはどういうことか―ダークサイドの心理学』筑摩書房

概要

「人をコントロールしたい」「退屈さを感じることが多い」
「私はほめられて当然だ」「人が苦しむ様子を見てしまう」
あなたの中にもある「ダークな面」を、心理学が分析する
 
 ダークな性格として、典型的なものは「マキャベリアニズム」「サイコパシー」「ナルシシズム」「サディズム」の四つである。それぞれの特性、測定方法を紹介、また仕事の相性、職場での行動、人間関係、異性との付き合い方等を分析し、どんな問題に結びつきやすいか、さらにその気質は遺伝なのか、環境なのかにも迫る。「望ましくない」性格が社会で残っているにも理由があり、どんな人にもダークな面はあることも明らかにする。

目次
  • 序章
  • 第1章 ダークな性格とはどういうものか
  • 第2章 ダークな性格とリーダーシップ・仕事・社会的成功
  • 第3章 身近な人間関係の中のダークな性格
  • 第4章 ダークな人物の内面はどうなっているのか
  • 第5章 ダークな性格は遺伝するのか
  • 第6章 ダークさとは何か
  • あとがき

一ノ瀬正樹『ためらいと決断の哲学―ゆらぎゆく因果と倫理』青土社

概要

〈ためらう〉のは悪いことではない
不確定な現実を前にして私たちはためらうべきである。しかしためらいながらなお、決断することはできる――間違う可能性と責任を負う覚悟をもって。伝統的な意思決定論の緻密な検討をもとに新しいリーダーシップ論への展望を記す、日本を代表する哲学者の到達点。

目次
  • まえがき 浮動的安定からウェルビーイングへ
  • 第一部 因果関係に潜む謎
    第1章 因果と応報
    第2章 「思考実験」から「知識の新因果説」へ
    第3章 不在因果と反事実的条件分析
    第4章 不在因果と責任帰属の構図
  • 第二部 倫理の深層へ
    第5章 トリアージと人権
    第6章 動物倫理と鳥獣害の問題
    第7章 死刑不可能論の展開
  • あとがき 「消えてなくなること」の彼方へ
  • 註/参考文献/索引

仕事文脈編集部『家父長制はいらない 「仕事文脈」セレクション』タバブックス

概要

格差、差別、バッシング、家族、戸籍……色んなひとが困っているけど、これって全部同じ問題=家父長制なんじゃないか?

さまざまな角度から「仕事」を考えるリトルマガジン『仕事文脈』。近年掲載した記事の中からフェミニズム、ジェンダー、セクシュアリティにまつわる文章を再編集。性差別的な問題の根幹にある、男性支配的な社会システムである家父長制を解体するための言葉を収録。

目次
  • 1.ことば・表現
    小さな言葉 小沼理
    Shitが溢れるインターネット空間 濵田真里
    空白のビルボードを見つめて  小林美香
  • 2.カルチャー
    「伝え方が悪かったかな、勘違いさせてごめん!」  ニイマリコ
    「伝統」を解体する際に  小田原のどか
    美術の場でセーファースペースをつくる  ケルベロス・セオリー
  • 3.家族
    文学の中の「オンナ・コドモ」ーあるいは家庭ーの領域の仕事  小川公代
    シルバニアファミリーから考える  浪花朱音
    結婚願望がゼロになるまで  笛美
  • 4.社会・政治
    政治家だけじゃない 私たちだって主役であるべき  和田靜香
    その家父長制は誰のため?──マジョリティ男性に必要な学びとレジスタンス  清田隆之
    安倍晋三という政治家が力を持った時代、女性や家族、性的マイノリティをめぐる政策はどう展開されたのか  山口智美
  • 5.セックス
    びわこんどーむくんがゆく。  清水美春
    セックスワーク・イズ・ワークを拒むもの  戸田真琴
  • 6.クィア
    点が線になるまで、線が面になるまで  和田拓海
    ひとりで生きたい  とりうみ
    台湾のナイトクラブで婚姻平等を体験する  燈里
    働きながら性別移行した私の経験  おいも

藤高和輝『バトラー入門』筑摩書房

概要

クィア理論って何? ドラァグ論ってどこから来たの? パフォーマティブってつまりどういうこと? 『ジェンダー・トラブル』がはじめてわかる!

『ジェンダー・トラブル』がはじめてわかる!

現代のジェンダーとセクシュアリティ研究の方向性を決定づけたとされるジュディス・バトラーの主著『ジェンダー・トラブル』は、その難解さでも名高い。
実は、バトラーの理論を理解する鍵は、当時のフェミニストやセクシュアル・マイノリティが置かれていた現場――社会と歴史と思想の文脈にある。
クィア理論って何?
ブッチ/フェムやドラァグ論はどこから来たの?
パフォーマティブってつまりどういうこと?
バトラーの主著『ジェンダー・トラブル』を時代ごと理解する。

目次
  • プロローグ――『ジェンダー・トラブル』非公式ファンブック
  • 第一章 ブレイブ・ニュートン!
  • 第二章 ジェンダーに「本物」も「偽物」もない!
  • 第三章 “You make me feel like a natural woman”
  • 第四章 「ジェンダーをなくすんじゃなくて増やそう」って話
  • 第五章 「私たち」って誰!?
  • 第六章 「クィア理論って何?」
  • エピローグ――〈トラブル〉の共鳴
  • あとがき

ジェフリー・ウィークスほか『セクシュアリティの歴史』筑摩書房

概要

古代と現代のゲイに連続性はあるか?
多様な性を記録するにはどうしたらよいか?
歴史は問い直される

性の歴史とは何か。それはいかに書かれ、何を語ってきたか。誕生と変遷を簡潔に記す。概念と歴史実践の双方に焦点をあてた、第一人者の集大成。

性の歴史とは何か。それはいかにして書かれ、何について語ってきたか。19世紀から現在までの展開を簡潔に記した、第一人者による画期的概説書。時代や地域、身体や感情、言説といった諸要素により形作られる性の、単一かつ普遍的な歴史は存在しない。本書では同性愛/異性愛、クィア、ジェンダー、国家、グローバル化等のテーマを取り上げ、性の歴史がフェミニズム、レズビアン・ゲイ運動や、社会学、文学、哲学等の諸理論により問い直される道程を示した。アーカイヴといったコミュニティの歴史実践にも焦点をあて、複雑で多様な仕方で性が形成される様を示す「批判的な性の歴史」をここに開く。

目次
  • 序文・謝辞
  • イントロダクション
  • 第1章 性の歴史を組み立てる
  • 第2章 性の歴史の発明
  • 第3章 同性関係の歴史を問い直し、クィア化する
  • 第4章 ジェンダー、セクシュアリティ、権力
  • 第5章 性の歴史の主流化
  • 第6章 性の歴史のグローバル化
  • 第7章 記憶、コミュニティ、声
  • 監訳者解説  
  • さらなる読書案内  
  • 原注  
  • 人名/事項索引