新刊紹介

新刊紹介_20231220

 
新刊紹介

大村敬一編『「人新世」時代の文化人類学の挑戦―よみがえる対話の力』以文社

概要

近代化の網の目からこぼれ落ちる、過剰なる他者たちの営みから、いかに人類の想像力の可能性を見出すか――。

総勢12名の人類学者が対話・インタビュー形式で「人新世」時代を語る、最新の研究動向に迫る論集。

近代のプロジェクトが推し進めてきたグローバル・ネットワークは、地球全体を覆い尽くすまでに拡大した今日。それは、もはや地球の存在そのものが危ぶまれる、「人新世」時代へと突入したと呼ばれるようになった。
このような21世紀初頭の時代において、人類のさまざまな文化のあり方をつぶさに研究してきた文化人類学もまた、大きな岐路に立たされている。文化人類学という学問が、80億人に達した人類について、その過去と現在を問い、その未来の限界と可能性を探究するという壮大な規模の問題を扱う実践である以上、その担い手である人類学者の立場も関心も見解も多様にならざるをえないだろう。
本書は、こうした豊かな多様性を孕みつつ共通の感性でゆるやかにつながれた文化人類学という学問の実情をできる限りそのままに提示する試みた、文化人類学者たち自身による文化人類学という学的実践の実験的な民族誌である。
対話の形式で紡がれる本書は、現在進行中の文化人類学の実践の目的、対象、方法、意義などの一端が、地域・フィールドを異にする文化人類学者たち自身によってさまざまに語られると同時に、問答を応酬しながら相互に触発し合うことで、新たなパースペクティヴの予感を宿しながら未来の可能性を孕む種子や胚を懐胎してゆく姿を提示していく。

目次
  • はじめに
  • 序 章 「人新世」時代の文化人類学の挑戦(大村敬一)
  • 第Ⅰ部 グローバル・ネットワークの外部からの挑戦
  • 第1章 多重に生きる ―― カナダ・イヌイトの挑戦(大村敬一)
  • 第2章 先住民運動の挑戦 ―― 新たな政治制度を目指して(深山直子)
  • 第3章 アナーキズム社会の挑戦 ―― マダガスカルのヴェズの戦術の可能性(飯田卓)
  • 第Ⅱ部 変質しゆくグローバル・ネットワーク
  • 第4章 科学技術と気候変動の人類学――近代の「自然/人間」の二元論の再考(森田敦郎)
  • 第5章 グローバル・エコノミーの隙間からの挑戦(中川 理)
  • 第6章 プラネタリーヘルスの挑戦 ――「人新世」時代の医療と公衆衛生(モハーチ ゲルゲイ)
  • 第Ⅲ部 変質しゆく人類 ―― 非人間との出会い
  • 第7章 災害の人類学 ―― 近代を凌駕する他者の力に向き合う(木村周平)
  • 第8章 人類の可変性 ―― 非人間とのもつれ合いのなかで(モハーチ ゲルゲイ/久保明教)
  • 第Ⅳ部 人類の創造力の可能性
  • 第9章 芸術 ―― 「仮構作用」の創造力(中谷和人)
  • 第10章 日常に潜む「生きる力」 ―― 人類社会の根っこにある宗教(土井清美)
  • 第11章 進化史のなかの人類 ―― 人類の創造性と可変性の進化史的基盤(入來篤史/河合香吏)
  • 終 章 人類と地球の未来―― 多様性の苗床になる(大村敬一)

ジュディス・バトラー『この世界はどんな世界か?―パンデミックの現象学』青土社

著:ジュディス バトラー, 翻訳:中山 徹
概要

コモンとしての世界の共有へ。
「経済の健康」のために「人々の健康」を犠牲にする暗黙の政治、生命を犠牲にしてまで市場の価値を重視する死の欲動に、われわれはいかにして対抗可能となるのか。先例のないウィルスの蔓延を奇貨として、呼吸、接触、多孔性といった身体に不変の性質を新たな世界感覚へと練り上げていく、パンデミックを通過した時代の哲学。

目次
  • 謝辞
  • 序論
  • 第一章 世界感覚――シェーラーとメルロ=ポンティ
  • 第二章 パンデミックにおける権力――制限された生活をめぐる省察
  • 第三章 絡み合い――倫理および政治としての
  • 第四章 生者にとっての悲嘆可能性
  • あとがき――変容
  • 原注
  • 訳者あとがき

荻上チキ『社会問題のつくり方―困った世界を直すには?』翔泳社

概要

世の中の空気を変えて、社会を動かすんだ!

世の中に存在する、さまざまな不公正で理不尽なシステムやルールたち。
「おかしいな」「いやだな」と思って口に出しても、「それはお前のわがままだ」と怒られる。
でも、それって本当に「わがまま」なんだろうか……?

さまざまな社会理論紹介から、組織づくりや広報活動、ロビイングのHOW TOまで。
個人の「困りごと」を「社会問題」として捉えなおし、世の中を動かすための方法を物語形式で紹介。

中学生から大人まで読める、荻上チキによる初のソーシャルアクション入門。

目次
  • Chapter1 気づく
    絶望の「仕組み」に気づく/「絶望モード」から「解決モード」へ/「何も変わらない」のって、なんでだ?/「わがまま」を「社会問題」化する/無力から微力へ
  • Chapter2 つながる
    チームを作って、存在を知らせる/ゴールを決めて、旗を掲げる/理念と意思決定方法を決める/誰にでも役割がある/活動資金を調達する/「反対意見」と「妨害」を想定する/メンタルケアを意識する
  • Chapter3 調べる
    「調査」も社会運動だ/数字に広報してもらう/声を集める/資料を集める/比べる/「白書」を作る/話し合う、話し合う、話し合う
  • Chapter4 伝える
    概念をつくる/メディアを理解する/議題設定をする/スポークスパーソンをつくる/記者会見を開く/メディアを活用する/デモって意味あるの?/解決モデルを提案する/いろんな角度から訴え続ける
  • Chapter5 動かす
    ロビイングする/政治家とつながる/託す/つなげ続ける/法案を作る/法案を作る/傍聴する/結果を受け、発信する/休みながら、次、を考える/ 社会は、変えられる

中村達『私が諸島である―カリブ海思想入門』書肆侃侃房

概要

この海の下で我々は手を取り合う━━。

カリブ海思想について新たな見取り図をえがく初の本格的な入門書。

西洋列強による植民地支配の結果、カリブ海の島々は英語圏、フランス語圏、スペイン語圏、オランダ語圏と複数の言語圏に分かれてしまった。それらの国々をそれぞれ孤立したものとしてではなく、諸島として見るということ。カリブ海をひとつの世界として認識し、その独自の思想を体系化する画期的著作。これからのカリブ海思想研究のためのリーディングリストを付す。

「web侃づめ」の大好評連載が大幅増補され、ついに書籍化! カリブ海思想研究の俊英による待望のデビュー作。

「私が目指すのは、「カリブ海思想には独自の歴史がある」ということをお見せすることだ」(中村達)

目次
  • 序章 冒険の季節
  • 第1章 ひとつの世界としてのカリブ海
  • 第2章 1492を越えて、人間であること 解呪の詩学
  • 第3章 カリブ海を定義する者へ 存在論的不純性
  • 第4章 神話とカリブ海 悲しくも希望に満ちた叙事詩
  • 第5章 出会いを押し進めるために 相互歓待
  • 第6章 カリブ海の社会モデル論 プランテーション、多元、クレオール
  • 第7章 環カリブ海的経験のクレオライゼーション この海の下で我々は手を取り合う
  • 第8章 カリブ海によるクレオール的時政学 海が歴史である
  • 第9章 ミサイルとカプセル 円環性の実践としての弁潮法
  • 第10章 ニヒリズムに抗うクロス・カルチュラルな想像力 カリブ海的身体と幻肢
  • 第11章 カリブ海のポストモダンの地平 カリビアン・カオス(前編)
  • 第12章 カリブ海のポストモダンの地平 カリビアン・カオス(後編)
  • 第13章 押し付けられた言語は誰の存在の家か 私ー像を描く言語
  • 第14章 クレオール礼賛の裏で カリビアン・フェミニズム
  • 第15章 クレオールの精神 カリビアン・クィア・スタディーズ
  • 終わりに
  • 参考文献
  • カリブ海思想研究リーディングリスト

北村匡平, 児玉美月『彼女たちのまなざし―日本映画の女性作家』フィルムアート社

概要

女性映画作家たちのまなざしからよみとく
日本映画の最前線。

“「映画監督」と呼ばれる人々が一人残らず女性であったなら、当然そこに「女性監督」という呼称は生まれえない。かつて映画監督には、男性しかいないとされていた時代があった。”(「序論」より)
そのような時代は果たして本当の意味で「過去」となりえているのだろうか?
本書は、この問題提起を出発点として、日本映画における女性作家の功績を正当に取り上げ、歴史的な視座を交えながらその系譜をたどり、彼女たちのまなざしから日本映画の過去・現在・未来を読み替えていくことを試みる、これまでにない映画批評である。

対象をあえて女性のみに限定し、大勢の男性作家たちのなかにいる数少ない女性作家という図式をまずはいったん解体することから始めるというアプローチから、これまでの日本映画の歴史にひそむ性の不平等や権力の不均衡の問題にせまり、日本映画史の捉え直しを通して、新しい地図を描き出す。
伝統的な家父長制から脱却し、多様な属性とオルタナティヴな関係性を個々人が模索する2020年代以降の時代精神から読みとく、日本映画の最前線。

取り上げる主な作家
西川美和、荻上直子、タナダユキ、河瀨直美、三島有紀子、山田尚子、瀬田なつき、蜷川実花、山戸結希、中川奈月、大九明子、小森はるか、清原惟、風間志織、浜野佐知、田中絹代……ほか多数

論考から作品ガイドまで、全原稿書き下ろし
作家ごとの評論だけでなく、日本映画史における女性監督の系譜、次世代の新進作家紹介、今見るべき日本の女性監督作品の100本ガイドまで。作家論、歴史、状況論、作品ガイドまでを網羅した、著者渾身の書き下ろし。

目次
  • 序論 児玉美月
  • 第1章 日本映画における女性監督の歴史 北村匡平
  • 第2章  16人の作家が照らす映画の現在地 北村匡平+児玉美月
  • 第3章 次世代の作家たち 児玉美月
  • 〈付録〉女性映画作家作品ガイド100 児玉美月+北村匡平
  • あとがき 北村匡平

シャーロット・パーキンズ・ギルマン『女性のための衣装哲学』小鳥遊書房

著:シャーロット・パーキンズ・ギルマン, 翻訳:大井 浩二, 翻訳:相本資子, 翻訳:藤田眞弓, 翻訳:平松さやか, 翻訳:井上稔浩, 翻訳:勝井伸子
概要

未来永劫にわたって虚飾を排し、
全世界の女性たちよ、立ち上げれ!
「黄色い壁紙」で知られるギルマンは、
女性を取り囲む堅固な男性中心主義(アンドロセントリズム)を意識していた。
横暴な男性の支配から解放されるために
「女性の衣服」はどうすべきと考えたのか?
ミソジニーが支配する現在だからこそ、
ギルマンのフェミニズム思想を再読する!

目次
  • はじめに
  • 第一章 衣服における基本的動機
  • 第二章 衣服を修正する力
  • 第三章 関連する原理
  • 第四章 身体の健康と美
  • 第五章 美vs.性差
  • 第六章 帽子
  • 第七章 装飾芸術、装飾、装身具
  • 第八章 人道的考察と経済的考察
  • 第九章 さらに深い経済的考察
  • 第一〇章 ファッションという名の権力
  • 第一一章 ファッションと心理学
  • 第一二章 望みと慰め
  • 訳註
  • 訳者解説

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