新刊紹介

新刊紹介_20241210

 
新刊紹介

相田豊『愛と孤独のフォルクローレ―ボリビア音楽家と生の人類学』世界思想社

概要

アンデス―アマゾンを往復し、出会った、孤独の思考

南米ボリビアで「新しい音楽」として興隆したフォルクローレ。個人の物語を愛し、他者の音を聴かず、堂々と嘘を楽しむ…。共に演奏し、木を伐り、考える中で導かれた、ポスト関係論の人類学。

――「はじめに」より

彼らの人生のテーマを一言だけ取りあげることが許されるならば、それは「孤独」ということになるだろう。音楽家たちは、若い頃、家族にも背を向け、同じフォルクローレ音楽家たち同士の中ですら馴れ合わず、「自分」の探究を続けた。……

本書は、私が三年半にわたり、ボリビアで聞き、時には自分自身もその中に入って経験した、フォルクローレ音楽家たちの物語を記述していくものである。彼らは、ボリビア全体にとっても激動だった時代を、とにかく軽やかに──あるいは軽薄とすらいえるかもしれないほどの軽さで──駆け抜けた。その軽快で、明るい「愛」と「孤独」を書くのが本書の目的である。……

引き込まれる語り口。忘れられない名ゼリフ。驚きの展開。彼らのあまりに巧みな語りっぷりを通じて、普通の人の普通の人生がどれだけ面白いのか、私は見せつけられた思いだった。こうした経験があったので、私は、少しでも彼らの語りに近いものを自分で書いてみたいと思ったのだ。だから、この本は、通読できる民族誌を目指している。……

これまでの人類学にとって、「関係」という概念は揺るぎない重要性を持ってきた。それゆえ、関係以降にあるものを考えるというのは、極めて挑戦的な問いである。本書もまた──それがあまりに大きく、無謀な問いであることは承知の上で──「孤独」の側から人類学理論を刷新していくことを目指している。

音楽家たちが、とんでもなく新しい何かを愛し、目指したのと同じように。

目次
  • はじめに
  • 序章 孤独とつながりの人類学
  • 1章 旅の前にあるもの
  • 2章 不器用な音楽家たち
  • 3章 物語を愛する人々
  • 4章 孤独の内に立ち上がる者たち
  • 5章 他者に抗する戦士/旅人
  • 6章 「不真面目」なひとりの楽器職人
  • 7章 アマゾンの開拓者
  • 終章 すでにそこにあるもの
  • 注/あとがき/初出一覧/参照文献/索引

田崎英明『間隙を思考する―グリッチ・コミュニズムの方へ』以文社

概要

ヒップホップ、パレスチナ、クィアな身体、映画のスクリーン、物語るオブジェ、叛乱する群衆たち……同じものの狭間で立ち上がり、異なるものの共通性を鳴り響かせる、グリッチ=ノイズの政治哲学。充実の文献案内付き。

目次
  • はじめに グリッチ・ノイズ――間隙にあるものは何か
  • Part 1 間隙のリアリズム
  • Part 2 間隙のコミュニズム
  • Part 3 間隙のアフェクト
  • 附論
  • 書誌的補足
  • おわりに

橋本麻里, 山本貴光『図書館を建てる、図書館で暮らす―本のための家づくり』新潮社

概要

図書館に住みたい! 2019年末に建ちあがった、膨大な蔵書を収める家〈森の図書館〉。2人の施主が、普請のプロセスや、そこで過ごすなかで考えたことをつづり、デジタルだけでは実現できない、「本のある空間」の効用をさぐる。書架の写真はもちろん、建築家の寄稿や図面類も多数収録。蔵書と家と人との関係をめぐる実践的ドキュメント。

目次

coming soon…

アーロン・アフーヴィア『人はなぜ物を愛するのか―「お気に入り」を生み出す心の仕組み』白揚社

概要

グッズのコレクションにお気に入りのブランド、音楽、アート、スマホ、車、ジュエリー、先祖伝来のアンティーク家具、家族写真や大切な人からもらった贈り物……人が愛着を抱くものは実にさまざまだ。だがそこには、人の複雑な心理が絡んでいる。
消費者行動や物への愛着研究の第一人者アフーヴィア教授が、人が物を愛するようになる仕組みを明快に分析し、アイデンティティや人類進化とも強く結びついた原理を明らかにする。
愛されるモノを開発したいビジネスパーソンにも、モノを愛する自分の心理を知りたい人にも、楽しめて役立つ一冊。

目次
  • はじめに
  • 第1章 輝きに満ちたモノ
  • 第2章 人として扱われるモノ
  • 第3章 モノとつながるとはどういうことか
  • 第4章 ピープル・コネクター
  • 第5章 人は愛するモノでできている
  • 第6章 愛するモノの中に自分を見出す
  • 第7章 楽しみとフロー
  • 第8章 愛するモノがそれを愛する人について語ること
  • 第9章 モノへの愛と進化
  • 第10章 愛するモノの未来

三原容子『農とアナキズム―三原容子論集』アナキズム文献センター

概要

著者が公害や差別問題と向き合う中で出会った「アナキズム」と「農本主義」。その二つのキーワードを手掛かりに、人と人の関係(アナキズム)、人と自然との関係(農本主義)にこだわり続けてきた三原容子。「アナキズム」が大学の研究テーマとして歓迎されなかった80-90年代、女性の立場から差別と支配のない社会を目指して奮闘する過程で生まれた先駆的な論文は今こそ読み返されるべき内容といえる。

これまで単行本化されることのなかった多くの著作から選り抜き、解説として「21世紀に「農とアナキズム」を読み直す」(蔭木達也/近代日本研究)を付して書籍化した。
カバー絵は辻まこと。
発行はアナキズム文献センター、発売は虹霓社。

目次
  • 第一部 私の考える〈アナキズム〉
  • 第二部 農本的アナキズムの思想と運動
    Ⅰ 石川三四郎
    Ⅱ 加藤一夫
    Ⅲ 江渡狄嶺
    Ⅳ クロポトキンの影響
    Ⅴ 農村青年社
  • 第三部 書評
  • 解説・解題

堀川祐里『労働環境の不協和音を生きる』晃洋書房

概要

生きるために働いているはずが、

労働によって日々の生活やいのちが脅かされる実情がある。

耳を澄ませて不協和音を聴けば、不協和音が我々に問いかけてくる。

社会学、文学、社会福祉学、歴史学、経済学といった多角的なアプローチから社会政策に迫る試み。コロナ禍が顕在化させた「労働環境の不協和音」を、社会政策の両輪である「労働」および「生活」という切り口から描き出す。

コロナ禍という未曾有の事態は「労働環境の不協和音」を響かせた。社会政策の初学者とともに〈生きるために働く〉ことをジェンダー視点から理解し再構築したい。歴史縦断的、領域横断的なアプローチが労働と生活を切り結ぶ、社会政策とは何かを考えるきっかけとなる一冊。

目次
  • はしがき  (堀川祐里)
  • 序 章 「社会政策とはなにか」という問いの難しさ――〈生きるために働く〉労働者の生活を科学する(堀川祐里)
  • 第一章 バリキャリ女子の欠点?――『家政夫のナギサさん』にみる労働力の再生産とフェミニズムの脱政治化(五十嵐舞)
  • 第二章 ジェンダー平等は健康の権利を放棄しなければ得られないか――労働力の再生産から考える生理休暇の意義(堀川祐里)
  • 第三章 労働災害から身体を守る――女性港湾労働者による労災防止の営み(鈴木 力)
  • 第四章 「産業癈兵」の誕生――戦間期日本の工場内労働災害及び救貧政策におけるジェンダー構造(新川綾子)
  • 第五章 移住によって観光業へ参入する女性の労働と世代間の再生産――妊娠・子育て期にカフェ・ゲストハウスを家族経営した女性のライフヒストリー(清水友理子・跡部千慧)
  • 第六章 なぜ日本の「ケア労働」は低賃金なのか――ジェンダー視点からの再生産労働の考察(跡部千慧)
  • 第七章 社会福祉の現場において〝ふたつの生活〞を守る――社会的養護における施設職員の生活と施設で暮らす子どもたちの生活(岡 桃子・跡部千慧)
  • 第八章 グローバル東京をクィアする――音楽実践をつうじた多文化共生と共創(大島 岳・久保優翔)
  • 終 章 「労働環境の不協和音」を生きるには――「生活」が極限まで切り詰められた「労働」から〈生きるために働く〉ことの復権へ(跡部千慧・鈴木 力)
  • あとがき  (堀川祐里)

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