新刊紹介

新刊紹介_20240409

 
新刊紹介

松村圭一郎『人類学者のレンズ―「危機」の時代を読み解く』西日本新聞社

概要

当たり前の日常が、視点を変えると全く別の世界になる―。
気鋭の人類学者による、世界の見方を変える「手引き」書。

西日本新聞で2020~2022年に連載した「人類学者のレンズ」、朝日新聞で2018年に連載した「松村圭一郎のフィールド手帳」を加筆・修正、再編集して書籍化。

「うしろめたさの人類学」などで知られる筆者は、コロナ禍やオリンピック、地震、水害、戦争などの社会、時事問題が噴出する「現在」に立脚しつつ、人類学の先行研究、原点であるエチオピアの人類学調査、古里の熊本での思い出をたどっていく。
人類学者のさまざまな眼を通じて、「危機」の時代を読み解き、揺れる「今」を生きるヒントを考える。

レヴィ=ストロース、ルース・ベネディクト、デヴィッド・グレーバー、ティム・インゴルド、岩田慶治、猪瀬浩平、磯野真穂など、国内外の人類学者の論考が登場。人類学という学問と現実をつないでいく試み。

西日本新聞連載時と同様に福岡出身の写真家、喜多村みかとコラボ。ポートレートでありながら、抽象性を合わせ持つ喜多村の写真は、文章の余白や解釈の幅を広げる。

目次

coming soon…

中沢新一『構造の奥―レヴィ=ストロース論』講談社

概要

「構造主義」は終わらない。「構造」が秘めた本当の「力」を解き明かし、その潜勢力を新展開させる決定版!
仏教と構造主義そして真のマルクス主義に通底する「二元論の超克」は、革命的な人文「科学」を生み出す思考となりうるはずだ。新しい「構造主義」の可能性を著者は丁寧に取り出す。
もう一つの人類学の可能性は、夭折した弟子のリュシアン・セバークの中にもあった。師レヴィ=ストロースと若き研究者は、南米インディオの神話の構造分析に取り組んだ。マルクス主義をベースにした「構造主義」が創始された時に起こった師弟関係の美しくも悲しい物語。記号学的な枠組みを超えて、人間科学の「プロレタリア」としての人類学の使命を読み解いていく。
さて、「構造」をレヴィ=ストロースはこのように認識している。
「双分制の明白な諸形態を、その真の本性は、別のはるかに複雑な構造が表面的にゆがんであらわれたものとして扱ったほうがよいのではないかということであった」
人類の思考は実は複雑なものなのだ。二元論と三元論が、動的に組み合わされて、さまざまな神話や事象が生み出される過程を解読することで見えてくる人類学とは、いかなるものなのか?
「構造」の「奥(heart)」へと至る道を示す「人類学」の道標である。

目次
  • プロローグ 革命的科学
  • 第一章 構造主義の仏教的起源
  • 第二章 リュシアン・セバーク小伝
  • 第三章 構造の奥
  • 第四章 仮面の道の彼方へ
  • エピローグ
  • 注および引用・参考文献

今井むつみ『ことばの学習のパラドックス』筑摩書房

概要

赤ちゃんはなぜ、ことばがわかるようになるのか? 認知科学の第一人者である著者がこの謎に取り組んだデビュー作。待望の文庫化。解説 佐治伸郎

認知科学の第一人者である著者が言語習得の謎に取り組んだデビュー作。待望の文庫化!  解説 佐治伸郎

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赤ちゃんはなぜことばを正しく理解できるようになるのか? この謎を解く鍵として1980年代に登場したのが「制約」理論だ。人間にはことばに関して正しいかどうかを判断する基準が生得的に備わっている、というのだ。しかし研究が進むにつれ、言語間でのカテゴリー化の違いなど、この理論だけでは説明のつかないことが出てきた。そこで著者が導いたのが「制約」は人間の発達の過程で外的状況や言語にあわせて柔軟にコントロールされる、という仮説だ。本書ではそのメカニズムが巧みな実験により明らかにされていく。認知科学の分野をリードしてきた著者の原点となるデビュー作。
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赤ちゃんはなぜことばがわかるのか
著者独自の画期的な研究はここから始まった

目次
  • はじめに
  • 第1 章 ことばと意味の即時マッピングと制約理論
  • 第2 章 ことばの学習における概念的制約の役割
  • 第3 章 言語領域特有の制約
  • 第4 章 形状類似バイアスと事物カテゴリーバイアス
  • 第5 章  形状類似バイアスから事物カテゴリーバイアスへの変化のメカニズム
  • 第6 章 ラベルの学習とカテゴリーの属性の理解
  • 第7 章  形状類似バイアスと事物全体・カテゴリーバイアスの生得性と文化普遍性
  • 第8 章  形状類似バイアス/事物全体・カテゴリーバイアスの起源
  • 第9 章  内的制約と外的制約の均衡関係とことばの発達
  • 第10 章 ことばと概念発達
  • 解説  ことばの習得研究はどこからきてどこへいくのか(佐治伸郎)  
  • 参考文献/索引

片瀬葉香編著『人新世とツーリズム―地球とツーリズムの未来を考える』九州大学出版会

著:片瀬 葉香, 著:横山 秀司, 編集:片瀬 葉香
概要

人新世とは何か。

今や、自然科学だけではなく社会・人文科学の分野から人新世に関する議論が活発になっている。本書は、「人新世という時代に私たちはいかに生活し、地球システムをいかに維持していくべきか。また、地球を改変する力、営力となったツーリズムは人新世時代にどう向き合うべきか」を問うたものである。

目次
  • まえがき
  • 第1部 人新世という時代
    第1章 人新世  人類の地質時代
    第2章 人新世の3つのステージ
    第3章 クルッツェンの人新世の本質  クルッツェンの言葉
  • 第2部 人新世時代のツーリズム
    第4章 ツーリズムによる環境への影響
    第5章 人新世時代におけるツーリズムと気候変動
    第6章 人新世の視点からのツーリズム
  • 第3部 人新世と持続可能なツーリズム
    第7章 人新世時代のヨーロッパアルプスのツーリズム
    第8章 もう一つのツーリズム  ソフトツーリズム
    第9章 持続可能なツーリズムの検討
  • あとがき
  • コラム
    コラム5-1 アルプスにおける氷河の動態
    コラム7-1 人工降雪機のエネルギー消費
    コラム7-2 登山家村(Bergsteigerdorf)
    コラム8-1 ソフトツーリズムの源

岡田朋之編著『ツーリズムの脱構築―地域の語りと観光・博物館・博覧会』関西大学出版部

概要

観光立国や観光による地域再生が叫ばれる昨今だが、そこでの観光資源、地域資源とはそもそも何なのか。ダークツーリズムは地域の発展に貢献しないのか。生の声を語り継ぐことは可能なのか。デジタル時代の現代で、万博は時代遅れのイベントなのか。語ること、見せること、参加することを軸に観光のあり方をとらえなおす。

目次
  • 序章 エキシビションとツーリズムの転回―ツーリズムの脱構築に向けて【岡田 朋之】
  • 第1部 地域を語る力学
    第1章 ツーリズム時代の地域の博物館―遺産化といかに向き合うか【村田 麻里子】
    第2章 メディウムとしての語り部―「当事者性」の継承という視点から【小川 明子】
  • 第2部 事例編:地域の観光とナラティヴ
    第3章 釜ヶ崎の歩き方 ―光と影が織りなす立体的で多声的な観光経験を目指して【古賀 広志】
    第4章 水俣映像譚【松山 秀明】
    第5章 嵯峨嵐山における観光の変遷と地域の取り組み【劉 雪雁】
  • 第3部 博覧会と地域の持続的発展
    第6章 共創としてのエキシビションと地域文化の醸成―博物館都市松本を例に【中江 桂子】
    第7章 万博における共創と語りによる都市の持続的発展―テジタル環境における市民参加と語りのレガシーからの考察【岡田 朋之】

上野俊哉『[決定版]四つのエコロジー―フェリックス・ガタリの思考』コトニ社

概要

現代のエコシステム(環境系)は、もはや自然と文化を切り離したままでは考えることができない!

思考の前線とストリートを軽やかに行き来してきた「思想の不良」による22世紀へのマスターピース。

著者は、自身の経験や見聞をふまえたたとえや分かりやすい言葉で、ガタリの思考にわけ入り、自然、社会、精神、情報の四つの「環境(エコロジー)」から22世紀へ向けた生態の哲学を読みとく。
また、本書は「正しい」左翼や、まともな学究のどちらとも違う視角からガタリを読みといた、ガタリ最良の入門書でもある。

目次
  • [増補決定版]まえがき
  • はじめに 『みどりの仮面』とエコロジー
  • 序章 なぜエコロジーか? ガタリとは誰だったか?
  • 第一章 自然を再考する
  • 第二章 エコソフィーとカオソフィー
  • 第三章 分裂生成の宇宙
  • 終章 ブラジルと日本を横切って……〈全=世界〉リゾームへ
  • あとがき

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