新刊紹介

新刊紹介_20240622

 
新刊紹介

福尾匠『非美学―ジル・ドゥルーズの言葉と物』河出書房新社

概要

◎千葉雅也氏絶賛!
博士論文をもとにした著作に、人々の価値観を根底から揺さぶろうとする気合いを込める――今や往年のあり方となりつつあるその禍々(まがまが)しいまでの熱意を、久しぶりに読んだ。芸術と哲学の距離。そして、ものごとの自律性を改めて肯定すること。何もかもをクリエイティブだと言って微笑むようなこの時代に、創造性とは何かをゼロから問い直す。

◎内容
非美学は、批評の条件についての哲学的思考である。
非美学は他者から〈眼を逸らす〉ことの意味を思考する試みである。

哲学を「概念の創造」として定義したドゥルーズにとって、芸術を通して概念を創造する批評とは何だったのか――
ドゥルーズに伏在する「言葉と物」の二元論から、今世紀の日本の批評を導いてきた「否定神学批判」の限界に迫る、
俊英による真の現代思想がここに!

他者から〈眼を逸らす〉ことの意味は、いかにして思考可能なのか?
われわれの現代思想はここから始まる!

目次
  • 序論
  • 第1章 能力 美学批判とその挫折
  • 第2章 イメージ 『シネマ』の批評的受容論
  • 第3章 体系 地層概念の地質学
  • 第4章 言語 概念のプラグマティック
  • 第5章 人称性 パフォーマティブ理性批判
  • 第6章 非美学

土屋和代, 井坂理穂『インターセクショナリティ―現代世界を織りなす力学』東京大学出版会

概要

多様性に満ちた現代社会を理解するうえでいま最も重要概念のひとつと呼ばれる「インターセクショナリティ(交差性)」。この分析概念を用いて、様々な地域の歴史、社会、文化のいかなる諸相が浮き彫りになるのかを、様々な角度からアプローチし、新しい世界への認識を導き出す。

目次
  • 序 「インターセクショナリティ」に何ができるのか(土屋和代)
  • Ⅰ インターセクショナリティをめぐる「過去」と「現在」
    1.権力性の交差の場としての物語(速水淑子)
    2.二〇〇年前の「交差点」と「地下室」(アルヴィ宮本なほ子)
    3.リプロダクティヴ・ジャスティスとインターセクショナリティ(土屋和代)
    4.社会運動、司法言説、歴史叙述(岡田泰平)
    5.現代インドから「インターセクショナリティ」を考える(井坂理穂)
  • Ⅱ インターセクショナリティから読み解く現代世界
    6.インターセクショナリティ(交差性)に関する四つの疑問(和田毅)
    7.イスラエルにおける性的少数者/動物の権利運動とパレスチナ問題(保井啓志)
    8.エイズから新型コロナ、白紙運動からフェミニズム運動へ(阿古智子)
    9.インターセクショナリティに抗するフランス?(伊達聖伸)
    10.安心をもたらさないインターセクショナリティへ(清水晶子)

末近浩太, 松尾昌樹『中東を学ぶ人のために』世界思想社

概要

【全体像を一気につかむ、知の見取り図】
歴史、宗教、ジェンダー、石油経済、ビジネス、紛争、難民――中東のダイナミズムを、16の論点から解き明かす。最新の研究に基づく必読の入門書。

【序章より抜粋】
 中東の情報は世に溢れている――でも、それでは物足りない。そんなふうに感じる人は、中東を「学ぶ」時期に来ている。

 ニュースで一言二言の「解説」として扱われる情報については、手元にたくさんある。しかし、人々がどのように社会生活を送っているのか、どのように経済活動を営んでいるのか、あまり関心を持とうとしない。つまり、人々が私たちと同じように考え、感じ、集まり、交換するという当たり前の中東の姿を抜きにして、一足飛びに中東の政治現象を論評しようとする。せっかく「学ぶ」機会を得ようとしているのだから、ここは腰を据えてじっくりと中東と向き合ってみてはどうだろうか。
 
 私たちの判断の拠りどころとなるのは、立場ではなく、「学び」そのものである。中東研究の歴史が紡いできた学知を自身のなかに蓄えながら、その知識に基づいて対象を解釈し、自身の見解を述べることが、私たちの主張を確かにする。この主張に基づいて批判し、批判され、議論を続けることで新たな理解を作り上げる。「学び」とは、そうした不断のプロセスである。

目次
  • 序章 中東を「学ぶ」 (末近浩太・松尾昌樹) 
  • 第1部 繁栄する文化
    1 言語と宗教 (竹田敏之)
    2 歴史叙述 (小笠原弘幸)
    3 アラブ小説 (柳谷あゆみ)
    4 中東の近現代思想 (岡崎弘樹) 
  • 第2部 変容する社会
    1 ジェンダー (嶺崎寛子)
    2 移民・難民 (錦田愛子)
    3 都市と農村 (柏木健一)
    4 メディア (千葉悠志)
  • 第3部 躍動する経済
    1 経済開発 (土屋一樹)
    2 石油/脱石油 (堀拔功二)
    3 イスラーム金融 (長岡慎介)
    4 中東でのビジネス (齋藤純)
  • 第4部 混迷する政治
    1 世界のなかの中東 (今井宏平)
    2 紛争 (江﨑智絵)
    3 パレスチナ問題 (山本健介)
    4 宗教と政治 (高尾賢一郎)
  • 終章 さらなる学びへ (末近浩太・松尾昌樹)
  • コラム
    中東の音楽映画 (中町信孝)
    言葉に映し出される家族 (村上薫)
    ほんとうのバーザール (岩﨑葉子)
    権威主義と民主主義 (渡邊駿)
  • ※巻末に「必読文献リスト」「国別データシート」つき

酒井順子『消費される階級』集英社

著:酒井 順子
概要

あの人より、上か、下か―
「差別や格差を無くして、様々な違いを持つ人々が全て横並びで生きていきましょう」となった昨今、表面上は序列、区別、差別は消えたものの、姿を変えた「凸凹」は、いまだ世の中のあちこちに。
『負け犬の遠吠え』『下に見る人』『男尊女子』『家族終了』など、時代を切り取る名著の書き手が、日本人の根深い階級意識をあぶり出す。

以下、「上に見たり、下に見たり」を考察する21章タイトル。
・男高女低神話のゆらぎ
・五十代からの「楢山」探し
・まぶた差別と日韓問題
・“親ガチャ”と“子ガチャ”
・東大礼賛と低学歴信仰
・『ドラえもん』が表す子供社会格差
・「有名になる」価値の今昔事情
・「ひとり」でいることの権利とリスク
・おたくが先達、“好く力”格差
・バカ差別が許される理由
・ミヤコとアズマ、永遠のすれ違い
・「かっこいい」、「ダサい」、「センスいい」
・超高齢化社会のおばあさん格差
・姫になりたい女の子と、姫として生まれた女の子
・デジタル下層民として生きる
・男性アイドルは無常の風の中に
・世代で異なる、斜陽日本の眺め方
・反ルッキズム時代の容姿磨き
・モテなくていいけど、出会いたい
・稼ぐ女と、使う女・遅ればせながらの金融教育

「人が二人いればすぐに上下をつけたくなる人間という生き物は今、もしかしたら本能なのかもしれないその「上下差をつけたい」という欲望を内に秘めつつ、「違いを認め合い、すべての人が横並びで生きる」という難題に挑もうとしています。
実は革命以上の困難を伴うものなのかもしれないその挑戦は、これからどうなっていくのか。
我々の生活の中に潜む階級の数々を見つめつつ、考えていきたいと思います」

赤川学, 新島典子, 柄本三代子『猫社会学、はじめます―どうして猫は私たちにとって特別な存在となったのか?』筑摩書房

概要

猫と人との関係が最も深まったのが現代。なぜ猫は可愛いのか、「猫島」とは何かなど、五つの視点から分析。「猫と人間の未来」のための全く新しい学問の誕生!

目次

coming soon…

村田麻里子『思想としてのミュージアム 増補新装版―ものと空間のメディア論』人文書院

概要

博物館や美術館は、〈もの〉が展示されているだけの透明な空間ではない。
社会に対してメッセージを発信し、同時に社会から読み解かれる、動的なメディアである。
日本における新しいミュゼオロジーの展開を告げた画期作。

旧版から十年、植民地主義の批判にさらされる現代のミュージアムについて、
欧州と日本の事例を繙きながら論じる新章を追加。

「新しい時代の新しいミュージアムのあるべき姿と進む方向が本書によってようやく明示された。」(青柳正規)

「ミュージアムはなぜメディアなのか。歴史と理論、実践を架橋する再定義で、運営論中心の陥穽から救う。これは、博物館・美術館の解体新書だ。」(吉見俊哉)

目次
  • プロローグ――ミュージアムを異化するメディア実践
  • 第1章 ミュージアムのメディア論――研究の枠組と方法
    1 メディア論の視座
    2 ミュージアム研究の射程
    3 メディア実践、メディア文化研究、メディア史
  • 第2章 ミュージアム空間の思想
    1 蒐集するまなざし
    2 パノラマ的視覚――鉄道旅行、博覧会、観光
    3 近代型ミュージアムの誕生
    4 ミュージアム空間の完成
  • 第3章 「ミュージアム」から「博物館」へ
    1 日本人がみたミュージアム
    2 博物館の「つくり方」
    3 博物館空間の生産――二つの博覧会の中で
    4 制度としてのまなざし
  • 第4章 メディア・象徴(シンボル)・メッセージ
    1 「帝国」の象徴(シンボル)
    2 戦争とプロパガンダ
    3 戦後民主主義とメッセージの喪失
    4 娯楽としての博物館文化――ポピュラー文化ミュージアムの系譜
    5 博物館とはいかなるメディアか
  • 第5章 二一世紀におけるミュージアム空間の変容
    1 ミュージアム・スペクタクル――欧米、アジア、そして日本
    2 欧米におけるミュージアムの拡張
    3 グローバリゼーション、アート、国際主義
    4 日本におけるミュージアムの拡張と縮小
    5 行政から消費社会へ、市民から消費者へ
  • エピローグ――日本のミュージアムの今後と、周縁的(マージナル)であることの可能性
  • あとがき
  • 増補新装版のための補論
  • ミュージアムの苦悩と再生――なぜ脱植民地化するのか
    1 化石燃料と植民地
    2 ヨーロッパにおける脱植民地化…

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