中沢新一『精神の考古学』新潮社
人類の心の「普遍的構造」を求めて。中沢人類学の集大成となる、決定版!遠い過去の時代に、人間はどのような心を持ち、なにを考えていたのか。それを知るには、まだそれが残っている現場に身を置くことだ。若き人類学者・中沢新一は秘教の地へと向かう。恩師ケツン先生から得た知恵は、やがて独自の思想の構築へとつながり、「精神そのもの」へと導いていく――人生を賭けた冒険の書。
- まえがき
- 第一部 ゾクチェンを探して
- 第二部 ゾクチェンとの出会い
- 第三部 精神のアフリカ的段階を開く
- 第四部 ゾクチェンの扉が開く
- 第五部 跳躍
- 第六部 チベットの眼と精神
- 第七部 ロンチェンパの遺産
- 第八部 暗黒の部屋
- 第九部 チベットへ
- 第十部 いかにして人は精神の考古学者になるか
- エピローグ
あとがき
註
中村隆文『なぜあの人と分かり合えないのか―分断を乗り越える公共哲学』講談社
「世の中がギスギスしている」「心に余裕のない人が多い」。学校や職場など社会の至る所から、そんな声が聞こえてくる。意見の異なる人と物別れになる。そもそも話し合いが成り立たない。ときにはお互いに譲らず、口汚い罵倒が飛び交うことさえある。それでも、人は生きるうえで他人と関わらざるをえない。どうすれば、こうした軋轢を解きほぐせるだろうか――。
身近な経験から社会に関わる話題まで、捉えどころのない問題を整理し、解決に向かうための道筋を提示する。学歴主義、商業主義、成果主義、ルッキズム、差別といった様々な問題を抱える現代人のための実践的哲学!
他人と一緒にやっていくにはどうすればいいか、多様化する社会で、相互理解を進めるための第一歩。不機嫌な時代の処方箋!
- はじめに
- 序章 「いやならお金を払えばいいのに」の論理――断片化する公共圏
- 第1部 子どもの難問――子育て、教育、学歴社会を考える
第1章 お金のために勉強させてもよいか――教育の脱公共化
第2章 偏差値は高ければ高いほどよいのか――大学への無理解
第3章 大学は無料にすべきか――学歴偏重社会と反知性主義 - 第2部 大人の難問――商業主義、イムズ、偏見を考える
第4章 成果主義は善か――人を操ろうとする思考
第5章 強く、正しく、美しく?――人を追い込む社会的偏見について
第6章 犯罪者は犯罪者らしく? - 第3部 根本的な問題――思想的背景から解決へ
第7章 そもそもリベラルとは何か
第8章 思想的な対立を乗り越える――公共の再生
第9章 公共圏の可能性――市民的連帯のもとでの取り組み - 注
- 参考文献一覧
- あとがき
マハザド・ホジャット, アン・モイヤー『友人関係の心理学―生涯にわたる多様な友情の考察』金子書房

サポート源にもストレス源にもなる友人関係。
本書が提供する多岐にわたる最新の知見は、友人関係に関心のあるすべての分野の研究者や友人関係に悩んでいる人にも役に立つ。
- 解題:友人関係の心理に関心をもつ方に
- まえがき
- 執筆者
- イントロダクション――生涯にわたる友人関係の心理的側面,設定,関係性
- 第1部 生涯にわたる友人関係
第1章 児童期および青年期の友人関係
第2章 若年成人期および中年期の友人関係――標準的なパターンとパーソナリティの差異
第3章 老年期の友人関係における相互作用モチーフとプロセス - 第2部 誰が友人なのか?
第4章 成人の「同性間」「異性間」の友人関係という陳腐な概念
第5章 人種,民族,性的指向を越えた友人関係
第6章 友人関係とソーシャルメディア
第7章 友人関係と恋愛――ニーズの充足の観点から
第8章 職場の仲間との友人関係
第9章 友人としてのメンター
第10章 友だちとしての動物――人とペットとの関係の社会心理学的意義 - 第3部 友人関係と葛藤
第11章 余波――恋愛関係が終わった後の友情
第12章 友人関係における侵害,赦し,報復
第13章 友人関係における競争 - 第4部 友人関係の恩恵と維持
第14章 友人関係と健康
第15章 友人関係と精神的健康の機能
第16章 友人関係を長く維持すること
第17章 結び――友人関係:共鳴(echo),声援(hurrah),その他の考察 - あとがき
- 索引
永澤桂『働く女たちの肖像』現代書館
絵画に潜む男性の視点を読みとき、
現代につながる社会構造を考察する。
2018年に都内の医科大学で起きた不正入試問題。医科大は「女性は医師になっても、出産などでやめてしまい、戦力にならない」と理由を述べたが、それは女性個人の問題ではなく、女性が仕事をやめなければ子どもを育てられないという社会構造的な問題である。では、「女性は戦力にならない」という基準はどのようにつくられていったのか? 男女二元制が強化された19世紀に焦点をあて、女子教育と当時の「メディア」であった絵画を振り返りながら、表象の社会的影響力を考察する。ドガのバレエ・ダンサーに対する蔑視、ロートレックの娼婦に対する温かなまなざし、ヴュイヤールのお針子に対するリスペクトなど、絵画に潜む男性の視点を焙り出す。
図版・約70点、オールカラー。
- はじめに――女子教育と女性の労働を考える
- 本書に登場する主な画家
- 第1章 「良き妻」になるための針仕事
- 第2章 「近代」の家族イメージ
- 第3章 「いかがわしい」バレエ・ダンサー
- 第4章 縫製工房を切り盛りするお針子たち
- 第5章 消費文化で多様化する女の営み
- 第6章 印象派時代のセックスワーカー
- 結び
- あとがき
松本悠子『戦場に忘れられた人々―人種とジェンダーの大戦史』京都大学学術出版会
第一次世界大戦、言葉も肌の色も異なる人々が世界中からヨーロッパに集まった。るつぼの中、語られることなく歴史から抜け落ちていった女性たち、黒人兵たち、「原住民」労働者たち、そして戦場に遺体がさらされたままの無名の人々。人種、ジェンダー認識の起源としての第一次世界大戦を描き、砲撃がかき消した人々の声に耳を澄ます、戦場の社会史。
- はじめに
- 第1章 軍隊と人種
- 第2章 戦争と労働
- 第3章 人種とジェンダーの交差
- 第4章 越境する人種主義――セクシュアリティをめぐって
- 第5章 象徴としての平等性――戦死者を悼む
- むすびにかえて
- あとがき
- 索引
高良和秀『映画技術入門』明幸堂
リュミエールからクリストファー・ノーランまで
技術で読み解く120年の映画史
映画の歴史を支えてきた様々な技術を、関連する700作品とともに[漫画] + [図解]で紹介していく、まったく新しい映画ガイド。
IMAX、テクニカラー、シネマスコープ、70mm、ドルビーデジタル、パナビジョン、5.1ch、DCP、銀残し、スーパー35、4Kデジタルリマスターなど、各時代の技術によって変わっていった映画の姿を、名画座で働く主人公が映写室や現像所を舞台に学んでいく。
- 前書き
- 第1回 映写機と35㎜フィルム
3つのスクリーンサイズ
映写技師の仕事
今なお魅力的なスタンダード
帰ってきたヨーロピアンビスタ
スピルバーグ作品のスクリーンサイズ
スクリーンサイズが変わる作品❶『グランド・ブダペスト・ホテル』
スクリーンサイズが変わる作品❷ 『ダークナイト』
スーパー35/レンズで圧縮しないシネスコ
スーパー35を採用した作品 『トップガン』
「ジュラシック」シリーズの選択/恐竜にふさわしいのはシネスコ? ビスタ?
スクリーンサイズ一覧 - 第2回 サイレントからトーキー、そしてカラーへ
リュミエールとメリエスが開けた扉
ハリウッドに現れたグリフィス
サイレント映画の傑作群
ドイツ表現主義
トーキーとジャンル映画の誕生
スクリューボールコメディ
日本映画の黄金時代
戦時下の光と影
テクニカラーで時代を描き分けた作品 『アビエイター』
戦後の風景(白黒)とテクニカラー
イタリア・ネオレアリズモ
フィルム・ノワール
白黒スタンダードの終わり/時代はカラーのワイドへ
あえて白黒で撮られた作品❶35㎜
あえて白黒で撮られた作品❷デジタル
デジタル時代の35㎜白黒作品 - 第3回 フィルム上映とデジタル上映
デジタルになった映画/2Kか4Kか? キセノンかレーザーか?
デジタルとアナログの劇場体験
タランティーノのフィルム愛 - 第4回 70㎜フィルム
シネラマ
シネマスコープ
ビスタビジョンと70㎜
ブローアップ70㎜
特殊効果/70㎜とビスタビジョンのその後
70㎜を蘇らせた二人 - 第5回 ナイトレートフィルム
消えるかもしれない過去の映像
3つのフィルム/ナイトレート、アセテート、PET
デジタルの問題 - 第6回 現像とプリント
16㎜で撮られた主な作品
カラー現像とプリント
さまざまな銀残しの手法
デヴィッド・フィンチャーと銀残し
スティーヴン・スピルバーグとヤヌス・カミンスキーの銀残し
白黒フィルム×カラーフィルムの作品 - 第7回 4Kデジタルリマスター
デジタルリマスター/ピクセルの量(4K)と質(HDR)
デジタルを使わなかった作品 /『2001年宇宙の旅』70㎜上映
フィルムが生み出す映画の色/鈴木美康氏インタビュー - 第8回 テクニカラープリントの時代/1954〜1974年の作品
テクニカラーのダイ・トランスファー・プリントとは?
シネマスコープ ビスタビジョン フラットレンズのビスタ
ワイドの白黒
ニコラス・レイ
ダグラス・サーク
エリア・カザン
ビリー・ワイルダーとワイドの白黒
イングマール・ベルイマン
ルイス・ブニュエル
アルフレッド・ヒッチコックとビスタビジョン
パナビジョンと007のスクリーンサイズ
テクニラマ
70㎜
ウィリアム・ワイラー
最後の白黒/60年代前半
シドニー・ルメットとワイドの白黒
デヴィッド・リーン
ハワード・ホークス
スタンリー・キューブリック
ジョン・フォード
最後の白黒/60年代後半
フェデリコ・フェリーニ
ルキノ・ヴィスコンティ
ヌーヴェル・ヴァーグ
フランソワ・トリュフォー
ジャン=リュック・ゴダールとラウール・クタール
ミケランジェロ・アントニオーニ
ピエル・パオロ・パゾリーニ
ロベール・ブレッソン
ルイ・マル
テクニスコープ
セルジオ・レオーネとテクニスコープ
ベルナルド・ベルトルッチ
ニュー・ハリウッドと若い才能
フランシス・フォード・コッポラ
スティーヴン・スピルバーグ
ジョージ・ルーカス
ダイ・トランスファー・プリントの終焉とブロックバスターの始まり - 第9回 音響の歴史
ワイドになった音/疑似ステレオ(1ch)と70㎜磁気トラック(6ch)
ドルビーが実現したクリアな音/ドルビーステレオ(4ch)と70㎜スプリット・サラウンド(6ch)
作り手を悩ませた劇場の品質/ノイズまみれの映像と音
フィルム上映のデジタルサウンド/ドルビーデジタル(5.1 ch)、DTS(5.1 ch)、CDS(5.1 ch)、SDDS(7.1 ch)
デジタル上映のデジタルサウンド/圧縮から解放された音
現代のモノラル - 第10回 デジタル撮影とフィルム撮影
スーパー8とビデオカメラ
デジタルビデオカメラ(DV)
映画のデジタル化❶CG、編集
映画のデジタル化❷タイミング、絵コンテ、上映、撮影
デジタルシネマカメラの誕生
デジタルシネマカメラの進化と主な作品
場面によってカメラを使い分けている作品
「スター・ウォーズ」のフィルムとデジタル
フィルム撮影を続ける監督
クリストファー・ノーランとIMAXフィルム撮影
IMAX上映のフィルムとデジタル
IMAXデジタル撮影❶1:1.90の作品
IMAXデジタル撮影❷1:1.43の作品 - 第11回 映画館
アカデミー科学技術賞(功労賞)の歴史 - 後書き
- 索引・出典
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