青山拓央『哲学の問い』筑摩書房
「世界は物質だけでできているという考えは、科学的だと言えるのか」
「犯罪者は、非難の対象ではなく治療の対象として扱われるべきか」
「何かが本当に存在しているとは、いったいどういう意味なのか」……。
哲学をすることの中心には、世界の隙間に目を向けて、自分自身の頭と言葉で問いを育てていくことがある。
バラエティ豊かな24の問いを通じて、〈哲学をするとはどのようなことか〉を読者が一気につかみ取るための、生きた哲学の入門書。
- はじめに
- 〈対話〉編
1 それ自体として価値あるもの
2 同じ色を見ている?
3 自由のために戦わない自由
4 科学は〈べき〉を語れるか
5 犯罪者をどう取り扱うべきか
6 情報のない会話?
コラム1 哲学をする、問いを育てる
7 経験機械とマルチプレイ
8 実在するってどういうこと?
9 宇宙人の見つけ方
10 自然が数学で書ける理由
11 〈生活神経〉と心配性
12 世界は急に消えるかもしれない
コラム2 哲学の文章を精確に読むために - 〈論述〉編
13 コロナの時代の恋
14 同性婚・リベラル・保守
15 妨げられることなしに
16 自由意志を実験する
17 押せないボタン
18 時間の窓と色ガラス
コラム3 哲学書を拾う
19 唯物論とは何か
20 隠された意識
21 チャットGPTは接地する
22 記憶としっぺ返し
23 生まれと育ちにおける運
24 幸福を語る、闘いの場 - おわりに
菊谷和宏『「社会」の底には何があるか―底の抜けた国で〈私〉を生きるために』講談社
『「社会」の誕生』(2011年)、『「社会」のない国、日本』(2015年)に続く講談社選書メチエ「社会三部作」、完結。
前著以降の約10年、日本は幾度も自然災害をこうむり、実質賃金が上がらぬまま円高から円安に移行し、物価高に苦しめられている。それに呼応して、さまざまなレベルで分断や分離が進行しているように見える。そして、著者もこの期間に人生の苦難を経験し、三部作の構想をいかに完結させるか、完結させられるかを考え続けた。
「日本ではフィクションつまり作り話が増殖し、蔓延し、しまいには事実や現実に取って代わってしまった。庶民の実態とはかけ離れた「好況」、「経済成長」、科学的事実を無視あるいは隠蔽した「安全・安心」、違法な証拠隠滅さえ厭わず明らかな嘘を押し通す国政の運営等々。あげくの果てには荒唐無稽な陰謀論の不気味な浸透……」――そんな現状認識から始める著者は、こう断じる。「今日ついに我々は、ばらばらになり、互いに共に生きられなくなっている。強者・弱者、マジョリティ・マイノリティの話だけではない。人が人として、個人が個人として生きられなくなっている。人々は分断され、「互いに同じ人間同士」であると思えなくなっている」。
それが証拠に、コロナ禍で叫ばれた「ソーシャル・ディスタンス」に、この国の人々はいとも容易に適応したではないか。では、「社会」が存在しないとは、「社会」が存在しないところで生きるとは何を意味しているのか。――この根本的な問いに答えるために、著者は「社会」を成り立たせる最も根底にあるものを問うことを決意した。前2著での議論を簡潔に振り返り、その末に到達する結論とは? 誰もが考えるべき問いを静かな感動とともに伝える完結篇にふさわしい名著。
- 序 章 分解する日本社会
- 第1章 社会の誕生、人間の誕生、社会学の誕生
一 トクヴィル──民主主義と人民
二 デュルケーム──社会学の創造
三 ベルクソン──社会的事実の基底
四 永井荷風──日本「社会」の不在 - 第2章 社会的生の規範性と社会学の基底
- 第3章 社会を成す=為す個人──デュルケーム道徳教育論
一 道徳性の第一、第二要素──規律の精神と集団への愛着
二 道徳性の第三要素──意志の自律性
三 意 志──生たる社会 - 第4章 合意に依らない民主主義
一 トクヴィル民主主義論の基底
二 ベルクソンの民主主義論
三 民主主義の根底 - 第5章 社会の根底
一 生という事実
二 賭けの網
三 生という絶対所与
四 社会と社会学の現実性=実在性
五 民主社会を生きるということ──平等と自由、意志の自律と多様性 - 終 章 現代日本を生きるということ
植村邦彦『敗北後の思想―ブロッホ、グラムシ、ライヒ』人文書院
よりよい社会を目指しながら敗北した人びとは希望をみたのだろうか
社会の問題と格闘した、マルクス主義の思想家、ブロッホ、グラムシ、ライヒを振り返りつつ、エリボンやグレーバーを手がかりとして新しい時代を考える。
書下ろし。
20世紀のマルクス主義者たちの「敗北後の思想」がどのようなものものだったのかを見直すことは、マルクス主義という思想の問題点を考えることだけでなく、私たち自身が現代の私たちの状況を考える上で、そしてこの「暗い時代」から「より明るい未来」への出口を考える上で、新たな手掛かりを探ることにつながるはずだ。(「はじめに」より)
- はじめに――暗い時代の希望
- 第一章 ナチズムと千年王国――エルンスト・ブロッホ
1 ドイツ革命の敗北とドイツ農民戦争
2 「千年王国」の夢とマルクス主義
3 『ユートピアの精神』
4 『この時代の遺産』
5 ナチズム支配の分析
6 『希望の原理』とその後 - 第二章 ファシズムとヘゲモニー――アントニオ・グラムシ
1 『資本論』に反する革命
2 工場評議会と「赤い二年」
3 ファシズム分析と「南部問題」
4 獄中の思想――ヘゲモニー
5 受動的革命と「現代の君主」
6 最後の思考――イデオロギー - 第三章 ファシズムの大衆心理――ヴィルヘルム・ライヒ
1 マルクスとフロイトの総合
2 『ファシズムの大衆心理』
3 『階級意識とは何か』
4 アメリカのライヒ - 第四章 労働者階級とは何だったのか
1 労働者階級とプロレタリアート
2 労働者階級の形成――エドワード・P・トムスン
3 労働者階級の変質――ディディエ・エリボン
4 新しい労働者階級――デヴィッド・グレーバー - 終章 敗北後としての現在
1 政治的主体の形成
2 「新しい君主」
3 民衆の声を聞く/民衆が声を上げる - あとがき
- 参照文献
WORKSIGHT編集部『WORKSIGHT 24号―鳥類学 Ornithology』学芸出版社
主に市井の人びとのアマチュアリズムのもと、世界に偏在する鳥を見つめ、実践的な知を紡いできた鳥類学。そのセンスは来たるべき時代の手がかりとなると同時に、現代の課題をも示す。飛翔し、群れ、停まってはまた飛ぶ鳥の世界のダイナミズムを、民俗学、環境史、医療、不動産、香水の調合、ゲームなどで紐解く
- ◉ The Pillar
スティーブン・ギル 鳥の恩寵 - ◉巻頭言
さえずり機械 文=山下正太郎(本誌編集長) - ◉野鳥雑記のこと
柳田國男と鳥の民俗学 語り手=島村恭則 - ◉五感の鳥類学
見る:ステファニー・ベイルキー(全米オーデュボン協会)
聴く:コスモ・シェルドレイク(ミュージシャン)
触る:海老沢和荘(横浜小鳥の病院)
嗅ぐ:浅田美希(「インコ香水」調香師)
味わう:服部文祥(サバイバル登山家) - ◉都会と巣箱
鳥専門の不動産屋「BIRD ESTATE」の歩み - ◉この営巣配信がすごい!
世界のYouTubeチャンネルが伝えるドラマ - ◉始原の鳥
世界の始まりと鳥の象徴学 監修・解説=西野嘉章 - ◉はばたく本棚
鳥から世界を知る60冊 - ◉旅行鳩よ、ふたたび
環境史家ドリー・ヨルゲンセンの問い - ◉水・鳥・人
中村勇吾の群体論
今村仁司『仕事』講談社
南太平洋のマエンゲ族の一日当たりの平均労働時間は四時間だという。古代ギリシアにおいて多忙は倫理的悪であり、中世の修道士にとって労働とは神から課された罰であった。
しかし近代になると、労働の価値に大逆転が生じる。「労働の尊厳」が高らかに謳われ、経済のみならず政治・文化を含むありとあらゆる活動が労働化する、完全な意味での労働社会が人類史上初めて誕生する。
この逆転はいかにして、なぜ起こったのか。古代から中世を経て近代にいたる労働観の変遷をコンパクトに描き出し、現在の労働中心主義は決して当たり前のものでもなければ、長い歴史に裏打ちされたものでもないことをあざやかに浮かび上がらせる。
人は生産労働なしに生きることはできない。しかし労働に従事するかぎり人間は自由になることはない。この相克を超えて、本当の意味で「労働から解放」されることは可能なのか――。
労働の価値が再び大転換しつつある今こそ必読の労働論!
かつて多忙は悪であり、余暇こそが自由人の本性にふさわしいとされた。しかし、近代においては資本主義も社会主義も等しく「労働はすばらしい」、「労働は人間を成長させる」と労働の尊厳を謳う。
労働が近代を創造したのであり、労働なしに近代は理解できない。そして、あらゆる人間が精神的にも物質的にも「労働する」社会、当事者が精神的・物質的活動を「労働」として表象する社会は、すなわちあらゆる人間が「奴隷となる」社会である。もし古代人が近代社会を見たら、最悪の社会の到来と仰天するだろう。
非西欧社会、古代、中世の労働観の変遷を踏まえたうえで、ベンジャミン・フランクリンやウェーバー、サン=シモン、コント、マルクス、アレント、ヴェイユなど主要な労働思想を参照しながら、近代的労働観の成立過程を明瞭簡潔に描き出し、我々が当然のものと刷り込まれてきた労働中心主義を見事に解体していく。
人間は労働に従事する限り自由にはなれず、しかし労働なしでは生きていくことができない。そうだとすれば、本当の意味での「労働からの解放」はいかにして可能になるのか。人類と働くことの関係を根底から問い直す、骨太の労働論にして近代論。(原本:『仕事』弘文堂、1988年)
- はしがき
- 第一章 未開社会の労働観
- 第二章 古代ギリシアの労働観
- 第三章 西欧中世の労働観
- 第四章 近代の労働観
- 第五章 労働の批判的省察
- 注
- 解説(鷲田清一)
石田昌隆『STRUGGLE―Reggae meets Punk in the UK』Type Slowly
抗うことが、生きること。
1982〜2023年。ジャマイカ、UK、日本。
レゲエとパンクの交差点。
時が経つと新しい意味を帯びてくる写真がある。
世界のレベル・ミュージックを追い続ける写真家・石田昌隆のライフワーク。
本当の自由を求める41年間の旅の記録。
Type Slowly、第1弾プロダクト。
表紙写真:アリ・アップ(ザ・スリッツ)
本書の登場人物:ザ・クラッシュ、アスワド、リントン・クウェシ・ジョンソン、キャロン・ウィーラー、リー・ペリー、エイドリアン・シャーウッド、マッシヴ・アタック、ゴールディー、M.I.A.、シャバカ・ハッチングス and more
ブックデザイン:下田法晴(SILENT POETS)
- Chapter 1
ウィンドラッシュ世代の移民
UKにおけるレゲエとパンクの出会い - Chapter 2
UK 1984 - Chapter 3
レゲエ
ダブ
グラウンド・ビート
アシッド・ジャズ
ブリストル・サウンド
ドラムンベース - Chapter 4
グライム
南ロンドンのジャズ
Windrush 75
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