参考文献紹介

『中動態の世界―意志と責任の考古学』の参考文献

 
参考文献紹介
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著者國分功一郎
発行医学書院
発売日2017/03/27

自傷患者は言った。「切ったのか、切らされたのかわからない。気づいたら切れていた」依存症当事者はため息をついた。「世間の人とはしゃべっている言葉が違うのよね」――当事者の切実な思いはなぜうまく語れないのか?語る言葉がないのか?それ以前に、私たちの思考を条件づけている「文法」の問題なのか?若き哲学者による《する》と《される》の外側の世界への旅はこうして始まった。ケア論に新たな地平を切り開く画期的論考。

  • プロローグ-ある対話
  • 第1章 能動と受動をめぐる諸問題
    1 「私が何ごとかをなす」とはどういうことか
    2 「私が歩く」と「私のもとで歩行が実現されている」は何が違うのか
    3 意志と責任は突然現れる
    4 太陽がどうしても近くにあるように感じられる-スピノザ
    5 文法の世界へ
  • 第2章 中動態という古名
    1 「中動」という名称の問題
    2 アリストテレス『カテゴリー論』における中動態
    3 ストア派文法理論における中動態
    4 文法の起源としてのトラクス『文法の技法』
    5 エネルゲイアとパトスをめぐる翻訳の問題
    6 パトスは「私は打たれる」だけではない
    7 メソテースをめぐる翻訳の問題-四つの例
    8 奇妙な起源
  • 第3章 中動態の意味論
    1 中動態に注目する諸研究-第三項という神秘化
    2 中動態の一般的定義-なぜ奇妙な説明になるのか?
    3 中動態を定義するために超越論的であること
    4 バンヴェニストによる中動態の定義
    5 中動態の一般的な定義との関係
    6 受動態、能動態との関係
    7 「中動態」という古名を使い続けること
  • 第4章 言語と思考
    1 ギリシア世界に意志の概念はなかった
    2 ある論争から
    3 『カテゴリー論』読解への貢献-デリダの批判(a)に対して
    4 思考の可能性の条件としての言語-デリダの批判(b)に対して
    5 哲学と言語-デリダの批判(c)に対して
  • 第5章 意志と選択
    1 アレントの意志論
    2 アリストテレスの「プロアイレシス」
    3 プロアイレシスは意志ではない
    4 意志と選択の違いとは何か?
    5 意志をめぐるアレントの不可解な選択
    6 カツアゲの問題
    7 「する」と「させる」の境界
    8 権力関係における「能動性」
    9 アレントと一致の問題
    10 非自発的同意の概念
    11 アレントにおける政治、意志、自発性
  • 第6章 言語の歴史
    1 動詞は遅れて生じた
    2 動詞の起源としての非人称構文
    3 中動態の抵抗と新表現の開発
    4 出来事の描写から行為の帰属へ
    5 日本語と中動態
    6 自動詞と受動態
    7 「自然の勢い」としての中動態
    8 中動態をめぐる憶測
    9 抑圧されたものの回帰
  • 第7章 中動態、放下、出来事-ハイデッガー、ドゥルーズ
    1 ハイデッガーと意志
    2 ハイデッガーの意志批判
    3 「放下 Gelassenheit」
    4 ドゥルーズ『意味の論理学』-その古典的問題設定
    5 出来事の言語、動詞的哲学
    6 動詞は名詞に先行するか?
  • 第8章 中動態と自由の哲学-スピノザ
    1 スピノザの書いた文法書『ヘブライ語文法綱要』
    2 動詞の七つめの形態-文法論
    3 内在原因、表現、中動態-存在論(1)
    4 変状の二つの地位-存在論(2)
    5 変状の中動態的プロセス-倫理学(1)
    6 スピノザにおける能動と受動-倫理学(2)
    7 能動と受動の度合い-倫理学(3)
    8 自由について
  • 第9章 ビリーたちの物語
    1 メルヴィルの遺作
    2 キリスト、アダム
    3 ねたみの謎
    4 歴史
    5 彼らはいったい誰なのか?
    6 中動態の世界に生きる
  • あとがき

この記事では『中動態の世界―意志と責任の考古学』の参考文献・関連書籍についてご紹介します。

第1章 能動と受動をめぐる諸問題

ニコライ・アレクサンドロヴィッチ・ベルンシュタイン(2003)『デクステリティ 巧みさとその発達』金子書房
著:ニコライ・アレクサンドロヴィッチ ベルンシュタイン, 原名:Bernstein,Nicholai A., 翻訳:和俊, 工藤, 翻訳:正人, 佐々木
牧原憲夫(2008)『全集 日本の歴史 第13巻 文明国をめざして』小学館
熊谷晋一郎(2009)『リハビリの夜』医学書院
上岡陽江, 大嶋栄子(2010)『その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち』医学書院
ベンジャミン・リベット(2021)『マインド・タイム: 脳と意識の時間』岩波書店
著:ベンジャミン・リベット, 翻訳:下條 信輔, 翻訳:安納 令奈
小坂井敏晶(2020)『増補 責任という虚構』筑摩書房
古田徹也(2018)『それは私がしたことなのか』新曜社
スピノザ(1951)『エチカ 上』岩波書店
ハンナ・アーレント(2015)『精神の生活 下 第二部 意志』岩波書店
著:ハンナ・アーレント, 翻訳:佐藤 和夫
エミール・バンヴェニスト(2022)『一般言語学の諸問題【新装版】』みすず書房
著:エミール・バンヴェニスト, 監修:岸本通夫, 翻訳:河村正夫, 翻訳:木下光一, 翻訳:高塚洋太郎, 翻訳:花輪光, 翻訳:矢島猷三

第2章 中動態という古名

R・H・ロウビンズ(1962)『ヨーロッパ古代中世文法論 』南雲堂
プラトン(2013)『プラトーン著作集〈第5巻 第1分冊〉言葉とイデア〈第1分冊〉クラテュロス』櫂歌書房
プラトン(1976)『プラトン全集〈3〉 ソピステス/ポリティコス(政治家) 』岩波書店
R・H・ロウビンズ(1992)『言語学史』研究社出版
著:R.H. ロウビンズ, 原名:Robins,R.H., 翻訳:完, 中村, 翻訳:斉, 後藤
アリストテレス(2013)『カテゴリー論 命題論 (新版 アリストテレス全集 第1巻)』岩波書店
シャルル・ギロー(2003)『ギリシア文法』白水社
著:シャルル ギロー, 翻訳:潤, 有田
ホメロス(1992)『イリアス 上』岩波書店

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