新刊紹介

新刊紹介_20240105

 
新刊紹介

瀬戸口明久『災害の環境史―科学技術社会とコロナ禍』ナカニシヤ出版

概要

感染症、震災・原発、害虫、交通事故……
「災害」とは私たちにとって何なのか?

現代の科学技術社会が次々ともたらす危機を人間と環境を包み込む視点からとらえなおした新たな「災害論」!

「本書で考えたいのは、そもそも「災害」とは私たちにとって何なのかということです。「災害」というと、荒ぶる自然が人間に与える甚大な被害というイメージがあると思います。たしかにかつての自然災害は、そのようなものでした。しかし科学技術が高度に発達した現代社会においては、災害は人間の世界の内部に組み込まれています。そのような現代の災害から、人間と自然の関係について考え、さらには人間のあり方について考えることが、本講義の目的です。」

「本書の視点は、コロナ禍が落ち着いてきた現在でも通用するものであると考えています。本書のおもな論点は、「科学技術社会」は次々と新たな災害をもたらす一方で、災害を日常のなかに埋め込んでいく機構を持っているということです。(中略)近い将来にCOVID-19は、完全に私たちの日常のなかに組み込まれるでしょう。それでもCOVID-19について振り返ることには意味があるはずです。科学技術社会は次々と新しい災害をもたらします。未来に必ず来るであろう新しい災害を考える上でも、本書の視点は有効であると私は考えています。」(「はじめに」より)

コロナ禍以後の新たな時代を生きるためのヒントを学ぶ教科書、
京都大学の教員たちによる人気オンライン講義シリーズ「立ち止まって、考える」書籍化第2弾。

目次
  • はじめに
  • 第一講 「コロナ禍」とは何か――病気の環境史
  • 第二講 想定されていた想定外――3・11の環境史
  • 第三講 「沈黙の春」から「春の沈黙」へ――害虫の環境史
  • 第四講 日常に埋め込まれた「災害」――交通事故の環境史
  • 第五講 科学技術社会における「災害」
  • 文献案内
  • あとがき
  • 事項索引
  • 人名索引

ウィリアム・マッカスキル『見えない未来を変える「いま」―〈長期主義〉倫理学のフレームワーク』みすず書房

概要

「タイムトラベルの物語では、過去の小さな行動が現在の極端な変化につながることが多い。しかし、今日の小さな行動が、未来に劇的な影響を及ぼす可能性について考えることはめったにない」(本文より)

本書の主眼は、こんな可能性を真剣に捉えるべき理由を提示することだ。そしてさらに、いまを生きる一人ひとりが「いますぐ」行動するよう説得することにある。
気候変動、高度なAIや全面核戦争がもたらす脅威・リスクについて、できるだけ正確なデータ、〈長期主義〉的フレームワーク、そして数学的ツールで詳細に検討し、数世紀から100万年先までの不確実な未来の形をできるだけ正確に描き出していく。そのうえで、「そもそも人類の絶滅は悪いことなのか?」「幸福とは何なのか?」といった根源的な問いにまで踏み込むことで、議論は深みを増している。

科学をはじめ、歴史、哲学と使える知見は何でも使い、熱意にあふれた筆致で読者を巻き込んでいく若き哲学者、マッカスキルの説く、未来のための思想。

目次
  • まえがき――ペーパーバック版に寄せて
  • パートI 長期的な視点に立つ
    第1章 長期主義とは何か
    第2章 歴史の道筋は変えられる
  • パートII 軌道の変化を促す
    第3章 道徳の変化
    第4章 価値観の固定化
  • パートIII 文明を保護する
    第5章 人類絶滅
    第6章 文明崩壊
    第7章 技術の停滞
  • パートIV 世界滅亡を評価する
    第8章 幸せな人間を世に生み出すのはよいことか?
    第9章 未来はよいのか、悪いのか?
  • パートV 行動する
    第10章 私たちがすべきこと
  • 終わりに――できることはたくさんある
  • 謝辞
  • 附録
    1. 追加資料/2. 用語/3. SPCフレームワーク/4. 長期主義に対する反論
  • 索引/原注/図のクレジットとデータの出典

山口一郎『現象学ことはじめ 新装改訂版―日常に目覚めること』白桃書房

概要

山口一郎氏は現象学の泰斗で、世界的経営学者の野中郁次郎氏(一橋大学名誉教授)との共著『直観の経営』がベストセラーとなった。また弊社からは露木恵美子氏(中央大学大学院教授)との共著・監修で『職場の現象学』及び『共に働くことの意味を問い直す』を刊行しており、そのどちらもロングセラーとなっている。

本書は現象学の入門書で、小社刊の上記2冊の元となった現象学をより深く理解できる。そもそも現象学は、私たちの日常生活を改めて問い直す哲学で、「自らのすべての心の働きのありのままに(中略)はっきりとその働き方を知り尽くす」ことを目指している。

本書は、日常生活で起こる「ことがら」から出発するということから「ことはじめ」と副題がつけられ、日常語を使ってわかりやすく議論が進められている。

現象学による考え方や生き方を身に着け、日々新たな日常を明晰に自覚するための書。

目次
  • はじめに
  • 改訂版の刊行にあたって
  • 新装改訂版の刊行にあたって
  • 序章
  • 第一章 数えること
  • 第二章 見えることと感じること
  • 第三章 時がたつこと
  • 第四章 変わることと変わらないこと
  • 第五章 想い出さずに、想い出されるということ
  • 第六章 気づくことと気づかないこと
  • 第七章 心と身体が育つこと
  • 第八章 他の人の痛みを”痛む”こと
  • 第九章 生きることと知ること
  • 第十章 文化の違いを生きること

長谷川雄一, 水野和夫, 島薗進『自壊する「日本」の構造』みすず書房

概要

現在の日本社会全体は、時代の要請によって次々に出てくる課題に対応できないどころか、政治・経済・メディア・道徳などあらゆる局面で「劣化」や「自壊」に向かっているようにみえる。日本国憲法と二重基準になっている日米安保条約はじめ、対米従属のあり方、メディアと権力の癒着の実態やジャーナリズムの課題、教育現場での右傾化、自民党一強政治の経緯、核政策と原発問題の矛盾と失敗の構造、統一教会問題からみえてくるもの、新自由主義イデオロギーが蝕んでいるものなど、多方向から、日本の過去・現在・未来を考える。

目次
  • 自壊する日本の「原像」――序にかえて  長谷川雄一
  • 新自由主義の隆盛と日本――資本に『隷属への道』を敷設する新自由主義  水野和夫
  • 「異形」の安全保障と沖縄――日米関係史の中で  豊田祐基子
  • 自壊するマスメディアからジャーナリズムを救出できるか  畑仲哲雄
  • なぜいま映画『教育と愛国』を通して政治を考えるのか  斉加尚代
  • 日本の政党政治は自壊するのか――政治の対立軸と選挙制度  松岡信之
  • 日本的ナルシシズムという構造と自壊  堀有伸
  • 「極東事項」の崩壊――米軍第一軍団司令部のキャンプ座間移転をめぐって  栗田尚弥
  • 核・原子力政策における日本の失敗と「ジレンマ」――学べぬ国日本の構造的課題  鈴木達治郎
  • 統一教会と現代日本の政教関係――公共空間を脅かす政教のもたれ合いと宗教右派  島薗進
  • あとがき

西川賢『社会科学研究者のためのデジタル研究ツール活用術―アプリ・デバイスから生成AIまで、生産性をあげるアカデミック・ライフハック』弘文堂

概要

研究生活のさらなる充実をめざして、国際水準の第一線政治学研究者がおくるアカデミック・ライフハック術!

研究者の多忙化が課題となっている今日、限られた時間の中で研究活動を円滑かつ効率的に行っていくためのツールとその使い方ーーいわば「研究者のライフハック術」ーーは、すべての研究者にとって必須の知識かもしれません。とはいえ、文書管理アプリひとつとっても、アプリストアには多くの便利ツールがしのぎを削っており、一歩踏み出すのにも勇気が要るかもしれません。あるいはそもそも、そのような見知らぬツールを試行錯誤する時間がもったいない、ということもあるでしょう。
そこで本書は、社会科学(政治学)研究に長らく従事するなかで先端的ツール活用の追究に余念のない著者が、そうしたデジタル・ツールを研究生活に取り入れていくためのヒントを提供します。論文の探し方、論文の読み方、論文管理の方法を効率化するツールの紹介から、学術論文執筆やその基礎をなす調査活動を効率化するノウハウ、学会活動や運営に役立つデジタルツールの活用、スケジュール管理や授業の効率化までを網羅。課題が指摘されるChatGPTなど生成AIの活用方法も。現役研究者はもちろんポスドクや研究者志望の院生・学部生も必読の、アカデミック・ライフハック決定版!

目次
  • 第1章  論文を探す、論文を読む
  • 第2章  調査を行う、論文を書く
  • 第3章 学会活動で使えるツール活用法
  • 第4章  研究生活をマネジメントする
  • おわりに

駒川智子, 金井郁『キャリアに活かす雇用関係論』世界思想社

概要

働きがいのある人間らしい仕事の実現へ

経済社会の変化と人々の価値観の多様化が、性別に基づく雇用管理に変化を迫る。就職から始まるキャリアの形成過程をジェンダーの視点から分析し、現状・課題・解決への道筋を示す。働くすべての人の必携書!

雇用関係論、人事労務管理論、人的資源管理論、キャリア形成論、労働問題、労働経済論、社会政策、キャリア教育、ワークルール教育などの授業テキストとして最適。

【序章より】
自分の望む働き方を手にするには、どうすればよいだろう。たとえ安定的な企業・組織に勤めていても、上司や組織に任せているだけではうまくいかない。なぜなら、自分が望むことは、自分にしかわからないからだ。色々な業務にチャレンジしたい、管理職になりたい、育児や介護と無理なく両立させたいなど、仕事に求めることは人それぞれである。だからこそ希望する働き方に向けて、自分の労働条件や職場環境を理解し、どうすればよいかを考えて行動することが重要となる。そのためには、働くことを自分でコントロールする知識と力が必要である。幸せな職業生活を自分の手でつかむためには、働くことの仕組みを学ぶことが大切なのである。このことは、自分だけのためではなく、社会で働く人皆のための行動にもなる。

目次
  • 序 章 なぜ雇用管理を学ぶのか〔駒川智子・金井郁〕
  • 第1章 大卒就職・大卒採用――制度・構造を読みとく〔筒井美紀〕
  • 第2章 配属・異動・転勤――キャリア形成の核となる職務〔駒川智子〕
  • 第3章 賃 金――持続可能な賃金のあり方とは〔禿あや美〕
  • 第4章 昇 進――自分のやりたいことを実現する立場〔大槻奈巳〕
  • 第5章 労働時間――長時間労働の是正に向けて〔山縣宏寿〕
  • 第6章 就労と妊娠・出産・育児――なぜ「両立」が問題となるのか〔杉浦浩美〕
  • 第7章 ハラスメント――働く者の尊厳が保たれる仕事場を〔申琪榮〕
  • 第8章 管理職――誰もが働きやすい職場づくりのキーパーソン〔金井郁〕
  • 第9章 離職・転職――長期的キャリア形成の実現に向けて〔林亜美〕
  • 第10章 非正規雇用――まっとうな雇用の実現のために〔川村雅則〕
  • 第11章 労働組合――労働条件の向上を私たちの手で〔金井郁〕
  • 第12章 新しい働き方――テレワーク、副業・兼業、フリーランス〔高見具広〕
  • 第13章 いろいろな人と働く――SDGsによる企業の人権尊重とDE&Iの推進〔田瀬和夫・真崎宏美〕
  • 終 章 労働の未来を考える〔金井郁・駒川智子〕
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