畑中章宏ほか『会社と社会の読書会』黒鳥社
わたしたちはいつから「社会に出る」ことを「会社に入る」ことだと思うようになったのだろう?現代日本人の生活にあまりにも行き渡り、出世や勤勉さ、あるいは欲望といった日々の考え方にも大きな影響を与えている「会社」とはいったい何なのだろう。
自律協働社会のゆくえを考えるメディア「WORKSIGHT」が、民俗学者の畑中章宏を招いて会社と社会を考える読書会を開催。『学問のすゝめ』から『ブルシット・ジョブ』、自己啓発から不倫まで、246冊の本とともに「日本の会社」という謎に迫る対話集!
- はじめに 会社を問う・社会をひらく 山下正太郎
- 第1回 会社がわからない
- 第2回 ふたつの「勤勉」
- 第3回 家と会社と女と男
- 第4回 立身出世したいか
- 第5回 何のための修養
- 第6回 サラリーマンの欲望
- 第7回 会社は誰がために
- 【コラム】
会社の補助線
◉遅刻してはいけない
◉虹・市・起業
◉速水融の「勤勉革命」
◉「失敗」や「挫折」を語れ
◉女性とアトツギ
◉経団連と自己啓発
◉トーテムとしての「暖簾」
◉社宅住まいの切なさ
◉三菱一号館から始まる
◉「事務」はどこへ行くのか - ブックリスト 本書で取り上げた本 246冊
勅使川原真衣『格差の“格”ってなんですか?―無自覚な能力主義と特権性』朝日新聞出版
「『わかる』とは?に挑んだ意欲作。「要するに」病の人にこそ、ぜひ読んでほしい」――山口周氏推薦! 「タイパ」重視、「自己肯定感」育て、「ウェルビーイング指標」の活用、「自立」の推進、「リスキリング」のススメ、「機嫌」を良くする方法、「成長」の希求、「つぶしが効く」能力……。社会でもてはやされる「よりよい生き方」「しあわせになる方法」を疑い、軽やかに解きほぐす20の問い。
- 第1章 分ける、分かる、分け合う——違和感との出会い
- 第2章 格——の差?
- 第3章 能力——二の句が継げない「カルチャーフィット」
- 第4章 自己肯定感——自信を持てるように頑張ろう?
- 第5章 矛盾——ヒューマニティを取っ払う先
- 第6章 ガチャ——確約は正義なのか?
- 第7章 つぶしが利く——汎用化が孕む凡庸化リスク
- 第8章 自立——した人間とは?
- 第9章 覚悟——結果論かつ強者の論理
- 第10章 成長——後退、停止、逡巡の価値
- 第11章 自己責任——応答からはじめる関係性
- 第12章 リスキリング——「生き残り」をかけるのは誰?
- 第13章 タイパ——納得した感
- 第14章 本当に困っている人——絶望選手権と化す裏の顔
- 第15章 対話——見え透ける特権性
- 第16章 人となり——組織の問題を個人化する装置
- 第17章 ウェルビーイング——連帯のかけ声になりにくい理由
- 第18章 赦す——広い心と笑顔があればいいのに?
- 第19章 メリット——という気まぐれ
- 第20章 躊躇——躊躇うことを躊躇わない実践者であるために
- 付録 岐路に立つあなたへ贈る読書案内
アルテイシア『だったら、あなたもフェミニストじゃない?』講談社
フェミニスト=性差別に反対する人。
その反対語はセクシスト(性差別主義者)。
あなたはどっち!?
武田砂鉄、楠本まき、津田大介、瀧波ユカリ、竹田ダニエル、藤井サチ、渡辺満里奈 …
7人と語り合うフェミニズムとの出会いとこれからをまとめた対談集!
対談7本収録
武田砂鉄 「男同士でケアし合うこと、自分で自分をケアできること」
楠本まき 「物心がついた時にはフェミニストだった」
津田大介 「それって女性はいつもだよ、と言われてハッとしました」
瀧波ユカリ 「物言う女がブス呼ばわりされるだけのことじゃん」
竹田ダニエル 「人と違う意見があること自体に価値がある」
藤井サチ 「私が感じてきた生きづらさは、自分のせいじゃない」
渡辺満里奈 「自分を大切にするってどういうこと?」
そのほか、書き下ろしコラム7本収録
「パンツを買うのは誰?」
「私の中にいる少女」
「フェミ男子の作り方」
「黒歴史は恥だが役に立つ」
「この子たちは貝なのかしら?」
「フェミニズム効果」
「女に生まれてよかった」
雁屋優『マイノリティの「つながらない権利」―ひとりでも生存できる社会のために』明石書店
マイノリティにも、「つながらない権利」はあるはずだ。何らかのマイノリティ属性をもつ人は、必要な情報を得るために当事者コミュニティに行くなどして誰かと「つながらなければならない」のかを、根本から問い直す。
- はじめに ここでもまた、コミュ力ですか
- 第1部 問題提起編
1 当事者コミュニティに参加できない/したくない理由
2 当事者コミュニティの功罪
3 マイノリティの「つながりたくない」も尊重してほしい
4 マイノリティの運動を振り返る
◆番外編 私が「つながらない権利」を求めるまで――読書の旅を辿る - 第2部 対話編
1 「障害の社会モデル」の観点から考える、マイノリティの「つながらない権利」――飯野由里子さんインタビュー
2 発達障害の診察、研究の現場から考える、マイノリティの「つながらない権利」――本田秀夫さんインタビュー
◆コラム 生活保護についての解説、受給に関する各種相談機関紹介
◆コラム 「能力主義」とは何なのか
3 障害開示や特別支援教育の視点から、マイノリティの「つながらない権利」を捉え直す――相羽大輔さんインタビュー - 第3部 解決編
マイノリティの「つながらない権利」を再定義する
◆コラム 「知能」の持つ危うさ
1 当事者運動は社会に開かれなくてはならない
◆コラム 優生思想の正体を捉える
2 オンライン空間が鍵を握っている
3 マイノリティのための運営や資金のあり方
4 マイノリティとテクノロジーの距離は揺らぐ
◆コラム 「正しい」情報とは何か
◆コラム 多様性という戦略、人権という約束 - おわりに 私のままで生存できる社会を作る
- あとがき
H・ガーフィンケルほか『日常性の解剖学―知と会話』筑摩書房
会話するとき、家族と過ごすとき等あらゆる場面で、私たちは日常生活の秩序を無自覚に作り出し維持している。エスノメソドロジーは、私たちがこうした日常の諸活動をどのように行なっているか、その方法を分析し明らかにする試みである。本書ではなかでも会話分析と関わりの深い論考を集成。創始者H・ガーフィンケルによるエスノメソドロジー研究の基礎を知る重要論文「日常活動の基盤」や、自殺志願者と相談センターの職員との会話を分析した、H・サックスによる記念碑的論考「会話データの利用法」等を収録した。本書に収録された各論考はいまなお、この分野の基本文献であり続けている。
- 序論 エスノメソドロジー―社会科学における新たな展開 (ジョージ・サーサス)
- 日常活動の基盤―当り前を見る (ハロルド・ガーフィンケル)
- 会話データの利用法―会話分析事始め (ハーヴィー・サックス)
- 会話はどのように終了されるのか (エマニュエル・シェグロフ、ハーヴィー・サックス)
- 訳者解説
- あとがき
- ちくま学芸文庫版訳者あとがき
- 事項索引
池田喬『「嘘をつく」とはどういうことか―哲学から考える』筑摩書房
悪いとわかっているのに、それでもなぜ人は嘘をつくのだろう?
自分らしさと誠実さの倫理をめぐり、「人間の複雑さ」と出合う思考の旅
「嘘をついてはいけない」と言われるけれど、嘘をつくとは何をすることで、どう悪いのか。
それでもなぜ嘘をついてしまうのだろうか。
「自分自身であること」を選び取るために、ごまかすことなく嘘を真面目に考えてみよう。
「これから、嘘の哲学を始めます。嘘について丁寧に考えることを通じて、人間とは何だろうかという根源的な問いが問われることになるでしょう。考察は、笑い、苦しみ、善意、友人、家族、社会、尊重、成長、自分らしさにまで及ぶことになります。」(本文より)
- 第一章 嘘をつくとは何をすることか
1 嘘をつくことと騙すこと――行為と意図
2 言語行為論の枠組みで嘘を考える
3 嘘をつくことと間違ったことを言うこと――「真」と「信」
4 嘘の標準的定義を考える――演技性の導入
5 嘘と皮肉の違いとは
6 嘘と冗談の違いとは
7 サプライズのための嘘――嘘でないかもしれない
8 自分に嘘をつく――つきたくない嘘をつく局面
9 嘘に騙す意図は必要ないという説――批判的検討 - 第二章 嘘をつくことはどう悪いのか
1 相手に害を与えるとは――害説の見方
2 心の傷を害として理解できるだろうか――尊重説への道標
3 嘘をつくことは自分も苦しめる――害説の別の局面を探る
4 善意の嘘――必要ないかもしれない
5 相手に対する尊重を欠くとは――尊重説の見方
6 現実に閉じこもらない――理想を語る哲学 - 第三章 それでもなぜ嘘をつくのか
1 言葉を学ぶためには嘘を学ばねばならない
2 嘘をつきながら世界で生きる地歩を築く
3 嘘の演技性と身体性
4 内面(心)をもつことの実践としての嘘
5 正直さとは――心の葛藤と自分を大切にすること
6 自分らしさを求めて――誠実さの倫理
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