海大汎『労働者―主体と記号のあいだ』以文社
労働者になるとはどういうことか?
労働力は本当に「商品」なのか?
マルクスの「労働力=商品」論は何を間違えたのか?
“ボタンの掛け違い”から生じた錯誤をつぶさに解きほぐし、労働者の“実相”に迫る。
俊英による、資本主義の“核心”についての徹底考察。
- はしがき
- 序 論
- 第1章 新しい労働者像を求めて
はじめに
第1節 労働力の生産という無理
第2節 労働力の二面性
第3節 労働者像の再構築
おわりに - 第2章 労働力商品という虚像
はじめに
第1節 労働力商品化の論理
第2節 労働力概念の特殊性
第3節 労働者包摂の原理
おわりに - 第3章 労働者表象という擬制
はじめに
第1節 労働力商品論に内在するマルクスの商品観
第2節 労働者表象とその評価メカニズム
第3節 労働記号の枠にはめ込まれた存在
おわりに - 第4章 労働と契約
はじめに
第1節 交換契約と条件契約
第2節 労働記号──その原型と変容
第3節 労働契約と労働記号
おわりに - 第5章 労働と記号
はじめに
第1節 労働の記号化
第2節 賃金の構造──機能と欲求
第3節 労働力概念の応用
おわりに - 第6章 労働と時間
はじめに
第1節 社会的労働時間と個別的労働時間
第2節 資本の指揮・監督機能──内容的二重性と形態的専制性
第3節 労働時間の記号化
おわりに - 第7章 労働と暴力
はじめに
第1節 モノ化──包摂の条件
第2節 空間のヒエラルキー
第3節 暴力の進歩
おわりに - あとがき
- 参考文献、初出一覧
藤井亮佑『死が消滅する社会―遺品整理業をめぐる死とモノの社会学』関西学院大学出版会
近代化で死別や看取りはいかに変容したのか。遺品整理業へのフィールドワークからエスノグラフィーを描き出し、そこに死の個別化を見出す。補論で死のゲゼルシャフト化に抵抗する試みの紹介も。
- 第一章 死への社会学的アプローチ
- 第二章 死の社会的処理の論理
- 第三章 現代社会の死・家族・所有物
- 第四章 遺品整理業のエスノグラフィー
- 第五章 死の個別化 ── 結語
- 補 論 ゲゼルシャフトで死が見出されるとき ── ボルタンスキーの試み
- 参考文献/あとがき/索引
藤原辰史, 香西豊子編『疫病と人文学― あらがい,書きとめ,待ちうける』岩波書店
私たちを不意打ちしたパンデミックに対して、人文学は無力だったのだろうか。そうではない。私たちは過去の歴史に、あるいは人類の英知に学ぶことができる。同じ過ちと苦しみを繰り返さないために──一三人の執筆者が、コロナ禍によってもたらされた傷を書きとめ、未来へ紡ぐ。暗中模索する人文学の、いまひとたびの挑戦。
- 序章 暗中模索の人文学――つぎの疫病に向けて……………藤原辰史
- Ⅰ 疫病の現場から
罰を受ける母親たち――コロナ禍が映し出すジェンダー不平等とケアの危機……………直野章子
水際のインターセクショナリティ――わたしの身体のコロナ、汚れ敗北した、アーカイヴとしての……………新井卓
「健康」を賭した選択――予防接種の歴史からの問い……………香西豊子
パンデミック下における仏教諸派の変貌――教義・法要・葬儀の観点から……………リュウシュ マルクス - Ⅱ 過去から現在を投影する
受肉化された「公衆」――近代日本の衛生における「公」と「私」……………香西豊子
日本資本主義のなかの流行性感冒……………小堀 聡
手洗いと石鹸の一〇〇年――統治されない身体の可能性へ……………岩島 史
感染症予防啓発のメディア史――戦前日本の衛生映画に注目して……………藤本大士
近世後期天草の疱瘡体験――流行病が村や個人にもたらしたもの……………東 昇 - Ⅲ 他者との遭遇と変貌
ウイルスの変容、ヒトの変容――いたちごっこと因果関係の循環……………粂田昌宏
「軍事空間」としてのパンデミック――COVID-19とマラリア……………瀬戸口明久
手の不穏な物神性――あいまいで多義的な手洗いについて……………酒井朋子
驚きを待ち受ける――人間‐野生の関係と人獣共通感染症……………石井美保 - 終章 「死者」からみる疫病……………香西豊子
鵜飼健史『民主主義はいつ成立するのか― 時間と民意の政治学』岩波書店
変えられない過去に縛られ、予測できない未来に脅かされ、そして時間の中で常に変化していく私たちにとって、民主主義とはいったいを意味するのか? 憲法前文や緊急事態といった具体例とともに、古典から現代に至る政治思想史を読み変えることで、政治における時間の意味を根底から問い直す。俊英が切り開く政治論の新たな地平!
- 序 論 時間の問題――『慎慮の寓意』とその先
- 第一章 過去――死者による支配からの解放
- 第二章 未来――将来の民主主義と民主主義の将来
- 第三章 テンポ――民主主義の遅さと遅れ
- 第四章 代表――デモスの持続的な現在
- 第五章 民意――代表制民主主義における不純さ
- 第六章 はじまり――主権者の意味と無意味
- 第七章 終焉――民主主義がなくなるとき
- 注/あとがき/参考文献/索引
梅田直美『「孤独・孤立」の歴史社会学』晃洋書房
人々の言説活動は、いかにして社会を変えてきたか
――孤独・孤立をめぐる歴史を紐解き、言説活動を社会変革につなげるためのヒントを探る
かつて、孤独・孤立は個の解放/確立と結びつけられ、必ずしも問題とはみなされていなかった。しかし今、社会システムが綻びていくなかで、孤独・孤立は多数の人々にとって生存を脅かすリスクとなっている。就職氷河期世代の中高年化で急増する貧困で孤立する人々、孤立したケアで追い詰められる人々……。もはや、「個人の選択の帰結」という段階ではない。問題の根と向き合うには、言説活動の力を社会システムの変革に向けなければならない。本書は、そのためのヒントを言説活動の歴史から探る試みである。
- 序章
- 第Ⅰ部 近代化に伴う個の解放と孤独
第1章 近代化と近隣組織──隣組・町内会の廃止と復活をめぐって
第2章 「団地族」の人間関係──個人主義・家族中心主義と「近隣関係の希薄化」
第3章 「都会の孤独」とコミュニティ政策の誕生──「マイホーム主義」から「コミュニティ主義」へ - 第Ⅱ部 戦後社会システムの歪みと孤独・孤立問題の形成──逸脱する人々をめぐって
第4章 ひとり暮らし高齢者の自殺・孤独死と社会的孤立
第5章 子殺しと「母親の孤立」
第6章 子どもの逸脱行動と孤独・孤立 - 第Ⅲ部 孤独・孤立問題の普及・多様化と「一億総孤独社会」
第7章 高齢者の孤独・孤立問題の多様化
第8章 児童虐待と「育児の孤立」問題の普及
第9章 若者の自立・就労問題と孤独・孤立
第10章 中高年者の孤独・孤立と「単身急増社会」 - 終章/初出一覧/あとがき/参考文献/索引
中山元『戦争の思想史―哲学者は戦うことをどう考えてきたのか』平凡社
人間の歴史は戦争の歴史でもある。戦争はいかに発展したのか、人はなぜ戦争を選ぶのか、戦争なしに社会の進化は可能か──哲学者の思想から、戦争の原理を考察する。
coming soon……
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