ティム・インゴルド『応答、しつづけよ。』亜紀書房
〈世界と向き合い、「つくる」ために〉
人類学とアートの刺激的な出会い。
現代の人類学を牽引する思想家が随筆、批評、寓話、詩などさまざまな形式を駆使して、アート、建築、デザインを論じる。
火、樹木、山、飛行、地面、時間、石、絶滅、線、糸、言葉、手書き、頭字語、色……創造と想像を刺激する思考の集成。
訳者・奥野克巳による詳細な解説を付す。
- 序と謝辞
- 招待
- 森の話
はじめに
北カレリアのあるところで……
真っ暗闇と炎の光
樹木存在の影の中で
Ta, Da, Ça, ! - 吐き、登り、舞い上がって、落ちる
はじめに
泡立った馬の唾液
登山家の嘆き
飛行について
雪の音 - 地面に逃げ込む
はじめに
じゃんけん
空へ(アド・コエルム)
私たちは浮いているのか?
シェルター
時間をつぶす - 地球の年齢
はじめに
幸運の諸元素
ある石の一生
桟橋
絶滅について
自己強化ための三つの短い寓話 - 線、折り目、糸
はじめに
風景の中の線
チョークラインと影
折り目
糸を散歩させる
文字線と打ち消し線 - 言葉への愛のために
はじめに
世界と出会うための言葉
手書きを守るために
投げ合いと言葉嫌い
冷たい青い鋼鉄 - またね
- 原注
- 訳者解説
難波功士ほか編『吉見俊哉論―社会学とメディア論の可能性』人文書院
動き続ける知性、吉見社会学の核心と可能性
都市論に始まり、メディア論、カルチュラル・スタディーズ、アメリカ論、大学論など数々の分野で新たなテーマと方法論を切り開き、いまなお前進を続ける吉見俊哉。1980年代から今日におよぶ、その膨大で多種多様な研究の核心と革新性はどこにあるのか、そして何を引き継ぎ発展させることができるのか。吉見に学び研究の前線に立つ精鋭たちが挑む初の試み。
「私たちは、吉見俊哉の伝説を作ろうとは思わないし、師の教えの伝道者になろうというのでもない。選んだのは、「吉見俊哉論」という学説史の形式、一つの知的な個性として彼を論じるというかたちを借りながらも、安全地帯から一方的に彼を論じるのではなく、それぞれが進めつつある学問を背負い、全身全霊で彼とぶつかりつつ論じる、という試みだった(第一部)。そして、吉見俊哉から受け取ったものをそれぞれがどう展開・転回させているかを論じることを通じて「吉見俊哉とは一体何者か」という問いに差し戻す、という試みでもある(第二部)。」(本書より)
- はじめに
- 第一部 吉見俊哉論を切り拓く
- 亡命先としてのメディア論―社会意識論・歴史社会学のゆくえ………野上元
- ドラマトゥルギーのひと―カルチュラル・スタディーズ、文化研究、カルスタ………山口誠
- 吉見俊哉における「東京・盛り場・社会史」………難波功士
- まなざしと境界の社会学―吉見俊哉における消費社会の主題のゆくえ………新倉貴仁
- 吉見俊哉と東アジア―アクター・ネットワーク・レファレンス………金成玟
- 吉見社会学の方法論―吉見俊哉は〈テクスト〉といかに向き合ったか………北村匡平
- コラム アメリカ地域研究と吉見俊哉―「アメリカ化」と「デジタル化」の視点より………市川紘子
- コラム 知識の脱中心化………アマンダ・ワイス
- 第二部 「吉見俊哉」からの展開・転回
- マンガ‐メディア‐文化への問い―〈吉見俊哉〉の遠心力………瓜生吉則
- 本とコンピュータ再考―書物とアーカイブのための覚書………柴野京子
- 「未熟さ」の帝国―吉見俊哉のアメリカ論とジャニーズ………周東美材
- 映像の地理学―一九八〇年代のレンタルビデオ店………近藤和都
- パブリック・リレーションズと戦後日本―「アメリカ」という他者の戦略的受容………河炅珍
- 防災と復興の歴史社会学―関東大震災から百年の変遷………三浦伸也
- コラム 吉見道場………里見脩
- 厳選一五冊 吉見俊哉ブックガイド
- あとがき
藤原さと『協働する探究のデザイン―社会をよくする学びをつくる』平凡社
教育現場で実践するための探究する学びのデザインとは?
国際バカロレア、イエナプラン、米国PBL、子ども哲学、生活・総合学習……
小学生、教育者向けの探究プログラムを手掛ける著者が、さまざまな探究する学びの構造と応用を探る“探究”理論の実践と教科書。
- 1 探究の歴史
西洋と日本における教育の歴史/伝達するか、構成するか - 2 世界のさまざまな探究
LCL本科の6つの探究学習[国際バカロレア/イエナプラン/プロジェクト型学習 PBL/生活・総合学習/子どものための哲学 P4C/創造性教育・生成する学び] - 3 協働する探究の構造
探究のスパイラル/協働する探究の基本構造/探究は柔軟に設計できる - 4 探究における問いのデザイン
本質的な問いとは?/協働する問い・本質的な問い/人生にとって大事な問いを見つけるために - 5 概念を使った探究のデザイン
概念を使うと授業は面白くなる/概念をベースとした探究カリキュラムの作り方 - 6 課題解決による探究のデザイン
デザイン思考でアイディアを発見する/文化人類学的なアプローチで問いやコンセプトを見つける - 7 探究の評価をデザインする
ルーブリックによる評価/進化し続ける評価手法/「自分の才能と情熱が出会う場所」を見つけるための評価 - 8 探究における協働のデザイン
教師の協働による単元設計/協働の場をつくる社会性と情動の学習/他者の感情を深く感じ取り、支え合う - 9 探究の究極の目的
何のための探究か/公正を目指す探究/教育が目指すべき究極の目標を見据える
山崎明子『「ものづくり」のジェンダー格差―フェミナイズされた手仕事の言説をめぐって』人文書院
手仕事をめぐる言説に隠されたジェンダー構造を明らかにする画期的研究
人々の関心を集めながらも、社会の傍流へ追いやられる手仕事がある。そんな「やりがいのあるものづくり」が奨励されるとき、その言説にはジェンダーの問題が潜んでいるのではないか。学校での家庭科、戦時下における針仕事の動員、戦後の手芸ブーム、伝統工芸における女性職人、刑務所での工芸品作りなど、趣味以上・労働未満の創作活動を支えている、フェミナイズ(女性化)する言説を探る。
「多くの女性化された創造活動は、それが「仕事」であっても、「家庭」と結びつけられやすく、またその語りは「楽しさ」や「やりがい」など、自己啓発的な言葉に満ちている。そして女性化された仕事は、今日、グローバルに組織されたものづくりの現場に広がっている。そこには、「女性」だけでなく、移民、女性化された男性、そしてその子どもたちも含まれ、家父長的な家族観がまだ強く、労働のための法やその準備のための教育が十分に確立していない社会では、こうした家父長的な構造を容易に利用できてしまうのだ。近代家族の中で女性たちが行ってきた仕事は、より女性化された人々に移譲され、消費者となった女性たちには移譲の現実が不可視化されている。この問題は、今を生きる私たちにとって、決して他人事ではないはずだ。」(本書より)
- 序 言説の旅の始まり
言説が生み出すものづくりの世界
梅棹忠夫かく語りき
ジェンダー化のポリティクス - 本書の構成
- 第一章 万一のために手芸をせよ――近代手芸論
学校で手芸を学ぶべし
皇后だって養蚕をしているのだから……
先ず心の美より養ふべし
母たる方々に手芸は実に必要
手工は家庭をして平和幸福の天地とならしむ
申さば一の慰み稽古の如くなり - 第二章 国益に供せよ――内職論
産なきの輩への内職のススメ
国益に供せよ
誰にでもできて上品
決戦下の主婦の務でありませう
お金もうけだけが目的でできるものではありません - 第三章 貴女は慰めになる――戦時下の手芸論
戦争中なのに手芸なんて
軍艦だつてもとは手芸から出発してゐる
花をつくっている奴は非国民だ
真心の弾丸
メディアの中の慰問人形
背囊に小さな人形をぶら下げて
戦時だからこそ手芸が必要なのです - 第四章 祈りを届けよ――千人針の表象
女性の〝呪力〟によって敵から身を守る
「千人針」という戦時パフォーマンス
表象の「千人針」
縫う女を見ていたい - 第五章 家庭は貴女の展覧会場――戦後手芸論
このおそるべき手芸ブーム
戦後手芸界の再編――手芸ブームの土台
「暮らしの中の手芸」
白い壁を手芸作品で飾りましょう
女って、針さえ持っていれば心が休まりますものね
あんなに丹精をこめるワイフなら - 第六章 救世主は貴女だ――女職人論
職人の世界は「おとこ社会」である
職人になりたい
伝統工芸界は危機の時代にある
まさに女性にふさわしい仕事である
伝統工芸は生き残れるのか
救世主は貴女だ - 第七章 社会の役に立たねば――刑務所の伝統工芸論
人件費タダですから
働く者としての忍耐強さを醸成する
低賃金でも継続的に就労する
技能を習得しても就職に結び付かない
刑務作業で地域に貢献
社会の役に立て - 終章 言説のゆくえ
抵抗の言説・抵抗の手芸――フェミニズムと手芸
男が手芸をして何が悪い――Queering the Subversive Stitch
「好き」を「仕事」にする!――ハンドメイドブーム - あとがき
- 初出一覧
- 人名索引
大貫恵佳ほか編『ガールズ・アーバン・スタディーズ―「女子」たちの遊ぶ・つながる・生き抜く』法律文化社
現代の都市は、女性を通せばどのように見えるのか。都市において「女性を“する”楽しさ」や「女性を“させられる”苦しさ」に焦点をあわせれば、どのような視点が得られるか。女性から見えるさまざまな都市のトピックを論じ、従来とは異なる都市のリアリティを読み解く。
- 女性の都市論に向けてー「ガールズ×都市」でなにがみえてくるか
- 第1部 都市で「遊ぶ」
かわいい化する都市ーガールズ的都市風景の広がり/画素化する街ー「イルミ」化と脱「イルミ」化の間/わたしに“ちょうどいい”エキチカ消費ールミネ的消費空間は、なぜ支持されるのか ほか - 第2部 都市で「つながる」(メディア化された都市の経験と女性文化ー雑誌メディアからInstagramへ/「女子」たちの食ー都市の食文化としての外食とジェンダー/親密性の舞台としての東京ー漫画にみるガールズとアーバン ほか
- 第3部 都市で「生き抜く」(都市に生きる「女子」と労働ー非正規、貧困、そして「夜職」/変容する女性のライフコースと就職活動ー女性ファッション誌『JJ』を手がかりに/まちを縫う「ママチャリ」-ジェンダー化された都市のスピード ほか
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