ティム・インゴルド『世代とは何か』亜紀書房
【推薦】中島岳志さん(政治学者)
「生者は死者と未来の他者を、同じテーブルに呼び集めて、対話しなければならない。」
──地球規模の危機を乗り越え、未来を確かなものにするために、わたしたちは何をすべきか。
巨大な危機に直面したいま、私たちは「古いやり方」に立ち戻る必要がある、とインゴルドは唱える。
古来、脈々と紡がれてきた「知恵」とは、いったいどのようなものだろうか?
ティム・インゴルド思想のエッセンスを総動員して語られる、希望の書。
- ●日本の読者のみなさまへ
- ●まえがき
- 第1章 世代と生の再生
- 第2章 人の生涯[ライフコース]をモデル化する
- 第3章 道を覚えていること
- 第4章 不確実性と可能性
- 第5章 喪失と絶滅
- 第6章 人類を再中心化する
- 第7章 教育のやり方
- 第8章 科学技術の後に
- ●解説に代えて
- ●原注
ジョルジョ・アガンベン『目的のない手段―政治についての覚え書き』以文社
【『人権の彼方に 政治哲学ノート』新訳改訂版】
「剝き出しの生」「例外状態」「難民」「収容所」「身振り」「開かれ」「言語運用」……。
20世紀後半、冷戦体制の崩壊と資本主義のグローバル規模の拡大のなかで紡がれたアガンベンの現代批評は、21世紀の現代においても、今なお、有効な分析に満ち溢れている。
本書で言及された多くの概念は、主著『ホモ・サケル』やそのほかの「ホモ・サケル」シリーズにおいて展開された。
その意味では、本書は「ホモ・サケル」シリーズの最良の副読本と言えるだろう。
- 序
- 一
〈生の形式〉
人権の彼方に
人民とは何か?
収容所とは何か? - 二
身振りについての覚え書き
言語と人民
『スペクタクルの社会についての註解』の余白に寄せる註釈
顔 - 三
主権的治安
政治についての覚え書き
この流謫にあって―― イタリア日誌 一九九二― 九四 - 翻訳者あとがき
浅沼光樹『人間ならざるものと反政治の哲学』青土社
哲学はいかにして現実に至るのか
人間ならざるものとは、「いまだ」人間でないもの=自然であり、「もはや」人間でないもの=神々である。それらに浸透され、みずからが人間ならざるものとなった人間は、ただちに政治的動物としてではなく、非政治的なものへと開かれた存在として捉えることができる。新しい政治的関与の在り方は人間ならざる者の実存主義によって、本書においてはじめて哲学的に根拠づけられ、その真意が明らかにされるだろう。
- イティネラリウム——人間ならざるものから反政治へ
- 第一部 戦後の京都学派の遺産
第一章 ポスト・ヒューマンへの東洋的な見方
第二章 日本哲学という意味の場 - 第二部 人間ならざるものと思弁的実在論
第一章 グラントのシェリング主義について
第二章 ドイツ観念論と思弁的実在論――メイヤスーとグラント
第三章 充足理由律の問題とメイヤスーの不在——二つのワークショップ
第四章 下方解体か掘削か——ハーマンのグラント批判
第五章 思弁的実在論から加速主義へ——ブラシエとグラント - 第三部 新しい実在論と二つの実存主義
第一章 新しい実在論——フェラーリス・ボゴシアン・ガブリエル
第二章 ガブリエルとポストモダン——ボゴシアン『知への恐れ』評によせて
第三章 いかにして哲学は現実に至るのか
第四章 〈構成的退隠〉から〈無世界観〉へ——ガブリエルと形而上学
第五章 形而上学の根本的問いに答える——シェリングとガブリエル
第六章 意味論的観念論の批判——意味の場の存在論への通路として - 第四部 反政治の政治学
第一章 反政治と再自然化
第二章 〈もの〉の政治的エコロジー——ベネットの生気的唯物論
第三章 ポスト・トゥルースを突き抜ける新しい哲学の挑戦
第四章 脱グローバリゼーションの存在論的基礎 - あとがき
アマンダ・モンテル『カルトのことば―なぜ人は魅了され、狂信してしまうのか』白揚社
カルトは「ことば」で呪縛する。
なぜカルトは人を惹きつけ、人生に影響を及ぼすのか?
カルトが人々を虜にする究極のツールは「言語」なのだ――そう語る著者は、新興宗教、マルチ商法、フィットネスジム、ソーシャルメディアのカリスマなど、多様なカルト的コミュニティを調査し、彼らの操る言葉と機能を暴いていく。カルト的言語が人々を支配するからくりを明らかにした話題作。
- 第1部 私の言うとおりに、繰り返して……
- 第2部 おめでとう―あなたは人間より上の進化レベルに進めるよう、選ばれました
- 第3部 あなたも異言を話せるようになります
- 第4部 #ボスベイブになりたい?
- 第5部 この時間はあなたの人生を変える……あなたはとってもステキになれる
- 第6部 フォローのためのフォロー
アーサー・C・ダント『物語としての歴史―歴史の分析哲学』筑摩書房
生起し続ける出来事をいかに記述するか。それを歴史としていかに認識し、語り継ぐのか。出来事や事実は、歴史において時間関係として組織化されるが、そこに密接に関与するのが「物語」である。物語は、出来事の原因、結果の継起的必然性、偶然的生起、連続的持続、未来の予期を含む方向性などの論理関係を示し、出来事を時間関係として捉える。本書は、こうした「歴史的知覚」を促す物語文という概念を基軸に、歴史的な思考と言語のあり方を解き明かす。ヘイドン・ホワイトの『メタヒストリー』とともに、ヘーゲル以降の歴史哲学にパラダイム・シフトをもたらした記念碑的名著。
- 序 文
- 第1章 実在論的歴史哲学と分析的歴史哲学
- 第2章 歴史の最小特性
- 第3章 歴史的知識の可能性に対する三つの反論
- 第4章 検証と時制
- 第5章 時間的懐疑主義
- 第6章 歴史的相対主義
- 第7章 歴史と時代編年史
- 第8章 物語文
- 第9章 未来と過去
- 第10章 歴史的説明と一般法則
- 第11章 物語の役割
- 第12章 歴史的理解と他の時代
- 第13章 方法論的個体主義
- 原 注
- 訳者あとがき
- 文庫版への訳者あとがき
- 解説 二つの「言語論的転回」の狭間で(野家啓一)
- 人名・事項索引
千早耿一郎『悪文の構造―機能的な文章とは』筑摩書房
文章を書くコツは芸術的な名文を書くことではない。読みにくい「悪文」を書かないことである。では悪文はどのようにすれば防げるのか。本書は日本語文の構造的特徴を分析したうえで、書物・新聞・公的文書などから100を超える実例を取り上げ、「機能的な文章」へと洗練させる技法を紹介する。長文を避ける、結論を先に述べる、必要な主語を省略しない、接続詞を濫用しない、やさしい言葉を使う……。読み手に寄り添った明快な指針とわかりやすい図解で悪文克服への道を示す本書は、時代を超えて通用する文章技術書である。
- 1、機能的な文章とは
- 2、日本語文の構造
- 3、長文は悪文
- 4、短いことはいいことだ
- 5、なにが主格か
- 6、述語は基幹である
- 7、なにを修飾するか
- 8、「は」のイキは長い
- 9、合流点はどこか――並列語の盲点(1)――
- 10、左右均衡の論理――並列語の盲点(2)――
- 11、無責任な仲人――接続の論理――
- 12、この漠然たるもの――「が」を濫用するな――
- 13、切れ目を示せ――読者のための句読点――
- 14、正しく伝える努力
- 15、曖昧な表現
- 16、表現の過不足
- 17、文と人間
- 18、文章のリズム
- 19、機能的なものこそ美しい
- あとがき
- 解説 「悪文」に名著が多い理由(石黒圭)
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