藤原聖子『日本人無宗教説―その歴史から見えるもの』筑摩書房
「日本人は無宗教だ」とする言説の明治以来の系譜をたどり、各時代の日本人のアイデンティティ意識の変遷を解明する。宗教意識を裏側から見る日本近現代宗教史。
- はじめに
- 第一章 無宗教だと文明化に影響?―幕末〜明治期
- 第二章 無宗教だと国力低下?―対象〜昭和初期
- 第三章 無宗教だと残虐に?―終戦直後〜一九五〇年代
- 第四章 実は無宗教ではない?―一九六〇〜七〇年代
- 第五章 「無宗教じゃないなら何?」―一九八〇〜九〇年代
- 第六章 「無宗教の方が平和」から「無宗教川柳」まで二〇〇〇〜二〇二〇年
- おわりに
- 文献一覧
- 編・執筆者紹介
- 人名索引
林凌『〈消費者〉の誕生―近代日本における消費者主権の系譜と新自由主義』以文社
〈消費者〉は社会を変えられるのか?
戦後消費社会の出現とともに語られる〈消費者〉は、戦前期からすでに知識人の構想のなかに蠢いていた。
戦後の生活協同組合を支える論理を生み出した賀川豊彦・奥むめお・本位田祥男、流通行政の礎を築いた向井鹿松・谷口吉彦・福田敬太郎らの戦前・戦中期の思想=活動に肉薄し、近代日本に通底する社会改良主体/庇護対象としての〈消費者〉像を掘り起こす。
これまで黙殺されてきた/にも関わらず私たちの生を根底から規定する、消費者主権の思想史。
- はじめに
- 序論
- 第一章 〈消費者〉言説の分析の方法
- 第二章 近代日本における消費者概念の受容過程
- 第三章 社会改良主体としての〈消費者〉
- 第四章 庇護対象としての〈消費者〉
- 第五章 〈消費者〉としての国民の「自覚」
- 結論
- あとがき
- 注
- 参考文献
- 主要用語・人名索引
宇南山卓『現代日本の消費分析』慶應義塾大学出版会
家計行動を体系的に理解する
日本の家計はどのように消費を決定しているのか。
本書では、消費税率引上げ、特別定額給付金の消費刺激効果、児童手当給付問題、老後の生活資金の不足問題など、わが国の消費にまつわる多様な現象を「ライフサイクル理論」を用いて一貫した視点から分析している。経済環境の変化がどのように家計行動を変えるのか、そのメカニズムの解明を試みる意欲作。
①「消費のライフサイクル理論」の今日的な意義と目的を、総合的に理解すること。
②ミクロデータを用いて、ライフサイクル理論の家計消費行動における実証分析をまとめること。
③日本の家計消費に関する課題や政策的介入の可能性、将来像についての知見をまとめること。
この3つが本書の大きな目的であり、著者は過去10 年以上に亘って、日本のデータを用いたライフサイクル理論の実証研究を重ねてきた。ライフサイクル理論の実証は、今日の応用計量経済学の中心テーマの一つであり、ミクロ計量分析の理解を深めるうえでも大いに役立つであろう注目の一書。
- 第Ⅰ部 消費の決定理論
第1章 消費のライフサイクル理論
第2章 所得の不確実性と消費
第3章 異時点間の消費の代替
第4章 利子率と日本の消費 - 第Ⅱ部 ライフサイクル理論の検証と拡張
第5章 ライフサイクル理論の検証
第6章 退職消費パズル
第7章 過剰反応と流動性制約
第8章 ライフサイクル理論のフロンティア - 第Ⅲ部 現金給付の経済学
第9章 消費刺激の経済学
第10章 児童手当の効果 - 第Ⅳ部 家計収支の把握
第11章 公的統計における家計収支
第12章 新しい家計収支データ - 第Ⅴ部 貯蓄の決定要因
第13章 ミクロとマクロの貯蓄率
第14章 人口動態と貯蓄
岩野卓司『贈与をめぐる冒険―新しい社会をつくるには』ヘウレーカ
貧困や格差の拡大、つながりの喪失による孤立や無縁化、生態系の破壊……、わたしたちの社会は大きな困難に直面している。
このままでは世界はいったいどうなるのか、そんな不安を感じながら生きている人は少なくないだろう。
こうした課題の根本的な原因といえるのが、資本主義の行き過ぎである。
しかし、わたしたちは資本主義の恩恵も受けており、資本主義を何かほかのものに変えれば問題が解決するということではない。そもそも貨幣とモノとの交換である経済の前には、何かを与えてお返しを受け取ることで交換が成立する経済があった。
これが本書のテーマである「贈与」である。
資本主義社会では何よりも経済的な利益が優先されるのに対して、贈与の大きな特徴は、モノの移動にともなって人と人、人とモノのあいだに精神的な交流が生まれることである。
では、このような贈与の考え方を現代社会に活かし、行き過ぎた資本主義を「変質」させることはできるのだろうか。
古典的な贈与の理論をふまえながら、同時に現代社会でおこなわれている贈与の考えを取り入れたさまざまな取り組みを読み解き、わたしたちがこれからの人間どうしの関係、自然と人間との関係を問い直し、新しい社会をつくるための手がかりを探る。
- プロローグ
- 第1章 贈与をめぐる日常――プレゼントはなぜうれしいのか
- 第2章 与えられているもの――贈与と他者
- 第3章 贈与の慣習――贈与と資本主義Ⅰ
- 第4章 新しい贈与のかたち――贈与と資本主義Ⅱ
- 第5章 自然の贈与――感謝するということ
- エピローグ
- ブックガイド
- あとがき
石原昌家, 岸政彦, 沖縄タイムス社『沖縄の生活史』みすず書房
2022年5月に、日本復帰50年を迎えた沖縄。これを節目として、沖縄の歴史とともに生きてきた人々の来し方を聞き取って文章に残そう、という沖縄タイムス社の企画が結実したのが本書である。
沖縄タイムス紙上での募集に応えた「聞き手」たちが、それぞれ思い思いの「語り手」を選び、その人生を聞き取って生活史として仕上げた。紙上に、およそ半年以上にわたって連載された85篇に加え、新聞には掲載しなかった15篇を合わせた、計100篇の生活史がここにまとめられている。巻頭と巻末にはそれぞれ、監修者のまえがき、あとがきを収録する。
「私は本書のどの語りの、どの部分を読んでも、深い感慨と感動をおぼえます。ここには語り手たちが経験した「沖縄の戦後」が、確かに存在するのです」
(岸政彦、まえがきより)
「数多くの沖縄の人たちから聞き取りしてきたにもかかわらず、庶民の生活の奥深くに分け入り、心の襞に触れるところまでは、聞き取りはしていなかったか、と思わざるを得ない語りにも出会えました」
(石原昌家、あとがきより)
- まえがき 岸政彦
- あの時の東京はね、お店の正面に「沖縄者お断り」って書いてあったんだよ。野蛮人と言ってから
聞き手=安里優子(五七) 語り手=母・池原春子(八四) - 「おい、比嘉君ね、これからが僕らの時代だよ」って言うんだよ
聞き手=安里百合香(六一) 語り手=安里繁雄(九一) - おじー必ず、運転したいって言ってさ、どうしても運転したいって
聞き手=東春奈(三六) 語り手=父(七二) - 爆弾の破片とか、買いに来る業者がいたわけ。家にね。そこの業者さんに売ったりしてた。小遣い稼ぎ。一キロ売ったらいくらだよということで
聞き手=安谷屋佑磨(二九) 語り手=父(六二) - 耕運機買うのも、吉本家が初めて。開墾するのも、吉本が初め。みんなやらないわけよ、こんなの
聞き手=荒井聡(三九) 語り手=吉本良子(九七) - なんでないのって聞いたら一番上の兄が(給料を)そっくり持っていってあるわけよ
聞き手=新川真奈美(三二) 語り手=祖母(七四) - 努力しなくて、なんとかなるさじゃないわけよ。努力しての結果が「なんくるないさ」、それ全然違うね
聞き手=泡☆盛子(五〇) 語り手=幼馴染の母・添盛文子(七一) - 裏返して、僕の住所を書いたわけ。その時にまぁ、ポロポロポロポロ泣いたよ
聞き手=伊是名夏子(四〇) 語り手=父・伊是名進(七八) - ブランクなくドラムたたいてきたから、俺みたいにいろんなジャンルのドラムを経験してきたのは珍しいんじゃないかね
聞き手=井筒形(五九) 語り手=津嘉山善栄(七四) - ある奥さんはさ、必ず「あんた連れて行って、子どもが大きくなるまで一緒に育ててくれないか」と言いよったけど
聞き手=上江洲清哉(二四) 語り手=上江洲ツネ(九〇) - でも、見てくれてたんだぁー、分かってくれてたんだぁーってのがあって。すごいあの言葉は忘れられなかった
聞き手=上原健太郎(三七) 語り手=糸満市出身の女性(六〇代) - 沖縄の歴史から呼ばれて、自ら沖縄の歴史を呼び込んでいく、その在り方みたいなもの
聞き手=上原沙也加 語り手=仲里効 - だからほんとにしたいと思ったこともそのときなかったし。諦めてたから
聞き手=上間陽子 - 俺の妹と父ちゃんは、ちゃんと国から感謝状もらってるけど警察署から。俺はちゃんと逮捕状もらってるよ(笑)
聞き手=打越正行(四三) 語り手=剛(五〇代) - 夜寝られない。起こされて、もう亡くなる人が、亡くなった人が来てよ、もう死んだまま。もう大変だった。墓が開く時は、誰がって分かりよったわけよ
聞き手=大城沙織(二五) 語り手=男性(八一) - 仕事も全部、覚えてきている時だから、二六ぐらいだと思うけど。その頃に偽札が横行したのよ。二〇ドル札の偽札が
聞き手=大城譲司(五四) 語り手=母(八七) - 「いーいーなぁ、うやんくゎんやん、この戦争ややん、ぬーがないら分からんくとぅやん、やらはんどー」んち。おばあがウリさるばー
聞き手=大城ひかり(二八) 語り手=祖母・大城千代(九八) - だから当時のコザはやっぱり怖かったですよ。行くと。白人はクルカジャーシーって黒人の匂いが嫌いだし。黒人はまた白人の匂いが嫌い、キモチワリーみたいな
聞き手=大田泰正(三一) 語り手=父・大田至(六一) - わじわじーですよ。怒り狂って、あぎじゃびよー、たっけーらせーと
聞き手=大塚和徳(四五) 語り手=高江洲義八(七三) - 生物の時間だったのかな?「えっ、メダカ? メダカ見たことない」って言ったら、みんなが笑うわけ
聞き手=岡本彰子(五四) 語り手=従姉・金城千代己(七五) - それから数日後に母が「やはり、ハワイ行った方がいいよ」と言って。妹はまだ小さかったからね、私一人で沖縄を出たんです
聞き手=荻堂志野(二九) 語り手=東恩納良吉(八六) - 門中の子どもたちを守って子孫を繁盛させてくださいと、それだけをお願いするだけだよ
聞き手=語り手の甥(六二) 語り手=門中の神人(八九) - ずーっと耳で、なんか日本語分かると思ってたんだけど、あれ日本語じゃなかったね。ほぼ半分以上はもう、うちなーぐち
聞き手=加藤勲(四〇) 語り手=安富祖美智江 - 「おい福峯、お前、沖縄復帰させてもらって良かったなぁー」って言った一言で、俺、胸ぐら捕まえて大げんかしたよ
聞き手=加藤里織(四七) 語り手=福峯衆宝(六九) - マジに信じてたのは復帰するってのは、本土に沖縄の島がくっつくことだと思ってたわけね。そのまんま九州の鹿児島にくっつく、これが復帰だと思ってたわけ
聞き手=兼島拓也(三三) 語り手=父(六〇代) - 復帰したら、アメリカーが店に来なくなるから。うちも夫も、心の中では復帰には反対だったから。もうけなくなるさあね
聞き手=嘉納英明(五九) 語り手=石川静子(八七) - 別に復帰がどうこうして、覚えてることはないよ。何にも私には、関係のないことだから
聞き手=叶祐介(二四) 語り手=祖母・仲間久子(八七) - 飛行士が見えるのよ。見えるんだよ。パイロットが。ぷわーっとやってね、ぷわーっと逃げたのよ。全員無事だったけど、屋根が燃えてよ
聞き手=神村メイ(六九) 語り手=夫の叔父・新垣昌也(八四) - 本土に来てから、青森や鹿児島とか難しそうな方言を使ってるのに、何で沖縄だけ禁止になったわけってすごく腹が立ったね
聞き手=川野香織(五〇) 語り手=母・畑山シズ(七四) - 人間はね、どんな苦労でも、金で使われていると、金に使われていると思ったらどんな苦労でも耐えきれるという話、聞かされたから。ああ人間は、そうだねえと言って
聞き手=岸政彦 - 他の職業では復帰前の資格が復帰後も認められているケースもあるわけで、なぜ私たちだけ「沖縄弁護士」を名乗らなければいけないのか、差別ではないか、という意識はありますよ
聞き手=喜屋武馨(八二) 語り手=松田朝徳(八七) - 戦前は、はだしで歩いたので足裏が硬くなっていた。寒い時につまずいてつま先を打って血が出ても痛さを感じないぐらいだった
聞き手=喜屋武すま子(七三) 語り手=義母・喜屋武初子(九九) - 首ちりどぅし、これ一言で、僕の頭の中ではね。沖縄で首ちりどぅしという言葉は、なかなか言わないけど、そのぐらい親しいんだね
聞き手=喜屋武悠生(三五) 語り手=父親の親友(七四) - 私たち夫婦は(一九六四年の)東京オリンピックから、今度のオリンピックまで華やかな人生だった。ちょうど一緒、珍しいことに
聞き手=金城愛音(二七) 語り手=祖母・我那覇英子(八二) - うちなーぐちを使えるようになったのは沖縄に帰ってきてから。生活のために覚えたさ
聞き手=金城さつき(四〇) 語り手=玉城秀子(八四) - ニュースペーパーボーイ、ユーノウ?
聞き手=具志堅大樹(二九) 語り手=両親の友人(六〇代) - 九八ドルだったら生活やっていけたけど、三万六〇〇〇円では生活やっていけなかったね
聞き手=久保祥子(三〇) 語り手=伯父・知念正樹(七四) - うん、モテて大変だった。モテモテ(笑)。内地に連れて帰ろうかなぁ、って、まあ、おべっか言う人もいたよ
聞き手=久保山亜希子(三四) 語り手=母(七〇) - 結婚するよりか、技術を習わんとね。もう、親もいないからという感じですよ
聞き手=幸地一(五九) 語り手=幸地廣明(八四) - 人生ってやり返しきくって言うけど、はーとんでもない。一度ひっくり返ったらなかなか簡単じゃないよ
聞き手=古我知智子(六〇) 語り手=義母(九四) - いい絵を描けばアメリカーでも認めてくれるんじゃないのっていうのもあるわけ。それで、美術を一生懸命やり始めたわけ
聞き手=酒井織恵(五二) 語り手=父・稲嶺成祚(八九) - この大雨はうちなーんちゅの涙だ、このことは絶対に忘れない、と思ったのは、はっきり覚えています。その後は気が遠くなって、倒れていました
聞き手=佐藤学(六四) 語り手=宜野座映子(七五) - よく買ってくれる人はもうけあるけど、また買ってくれない人もいるわけよ。なんかヤミみたいだから。ゲートで調べる人が来たら没収もするから、戦々恐々よ、もう
聞き手=さゆき(三三) 語り手=祖母(九四) - 中の町来て、この辺でも燃えていて、胡屋十字路来たらまた空港通りも、ここも燃えていたんだ
聞き手=織(二四) 語り手=祖父(七七) - たまに、自分なんかのおうちにターユーっていう魚が入ってくるわけさ
聞き手=島袋秋人(二三) 語り手=祖母・比嘉あさみ(六七) - 燃やした記憶はないけどよ、どうせ俺はもう沖縄に帰らんってからさ。捨てたような気がする。もう要らないって、帰るつもりはないって
聞き手=島袋幸司(三八) 語り手=沖縄本島中部の男性(七〇代) - 自分が味わってきた沖縄だけの閉鎖的な空間よりは、どんどん出てってほしい。だから、あまり実家には近寄りたくなかった
聞き手=島袋弘暉(二二) 語り手=母(五〇代) - この差があるわけ、ここは下。外人は上。事故しても外人が事故しても、何にも関係ないのに
聞き手=島袋真由美(三七) 語り手=大叔父(八四) - 復帰記念メダルもらった。メダル、学校からみんなに。お祭り騒ぎだったかな。よく覚えていないな
聞き手=島袋みゆき(五二) 語り手=配偶者(六〇) - 自分は中学三年で受験勉強してたもんだから。もっと勉強したいから行きたくないっていうことで、毎日けんか
聞き手=下地隆弘(二二) 語り手=祖母(八〇代) - 五年生くらいの時に方言を使わなかった子で、表彰されたわけ。下地君は学校で方言を使いませんでした、とか言ってさ
聞き手=下地レオ(三二) 語り手=父(五八) - だから学校も行っていないから食べ歩いて聞いて。食堂に帰ってそのように作って、味して「あ、この味だ」って思ったら、これで店の味にする
聞き手=城間碩也(二四) 語り手=祖母(七七) - どんな人かねと。色が白くて髪が長くて、髪が長いというだけでジュリ(遊女)じゃないか、みたいな。みんな、見に来るわけ
聞き手=城間美咲(三八) 語り手=富田初江(八四) - 復帰しないで自分たちがそのまま、琉球政府としていきたいみたいな討論会があったよ、高校生が
聞き手=城間優子(四六) 語り手=父の従妹(六〇代) - 戦後はもうだんだんヤマトに世替わりだからね。向こうしか向いてないから。逆に僕は「こっち向けよ」と思って、方言ニュースを
聞き手=新垣啓子(六三) 語り手=母の従弟・又吉健次郎(九〇) - 先祖まつりの長男だから、帰らないかん宿命にあるんですけど、少し働いて、働いていう間に六〇年間、最初は二ヵ月のつもりで来たんですよ
聞き手=末松史(四三) 語り手=金城豊秀(八三) - 沖縄の歴史かな。四年生から学べるわけさ。これオレ楽しみにしてたわけよ。そしたら四年なったらなくなっていた
聞き手=末吉利旭(三六) 語り手=父(六〇) - 僕は手をやられていますから、抵抗できるのは口しかないんですよ。だから、僕も馬の顎にかみついた
聞き手=鈴木陽子(六一) 語り手=平得壯市(八五) - それがもう「ショウショウショウショウショーウ! ショーウ!」って言うから(笑)
聞き手=平良伊都実(二五) 語り手=母(五五) - 親戚のおじさん、おばさんが勝手に付けたの。呼びやすいように。よう子、よう子って。お母さんの姉さんも名前二つあるさね。栄子なのに、しげーって呼ばれてた
聞き手=高浪千裕(五〇) 語り手=入嵩西時子(七五) - そうサミットが始まる前だったからね。「G7って付けた方がいいんじゃないか」って言ったらさ、そのあとにG7が始まったさ
聞き手=知念渉 語り手=赤嶺千穂子、夫=芳弘 - なんか、あっちから通るバス見たら、ああ、あのバスどこ行くんだろうな、乗ってみたいなぁって思ってた
聞き手=知念真由美(五七) 語り手=母(八三) - 手続きしたら、これ何人て書くんですかーってなったわけさ、だから琉球人って書きなさいって言われたよって言ってるわけ
聞き手=知念ゆかり(二四) 語り手=父の姉(七八) - おやじと電話でよくけんかしたよ。おやじは復帰したら何もかもよくなるって言うわけさぁ。これでは駄目だようと思ったわけさぁ
聞き手=寺田光枝(七四) 語り手=玉城薫(七四) - 五〇〇円と言われて、五〇〇円くらいなら何とかならなかったかな、って今考えたら思うけど、あれも悔しかったよ、りま
聞き手=徳森りま(三四) 語り手=父・徳森栄春(六二) - 超ショック。何か分かんない。もうソーセージ食べられなくなった
聞き手=富山勝代(四九) 語り手=友人・えーみー(四八) - 同世代の子が「やー」とか「えー」とか言っていると、何のことか分からなくて、超戸惑った覚えがありますね。怒ってるー、なんだこりゃーって
聞き手=鳥井由美子(三八) 語り手=上地愛乃(三一) - いつもさ「もう少しだよ、もう少しだよ」って。いつもその言葉にさ、ばあちゃんはさ、その言葉につられてずっと一緒にじいちゃんと仕事していた
聞き手=仲地二葉(三〇) 語り手=祖母・照屋キヨ子(八一) - でも僕も若くて、「日本語上手ですね」って言われて「あなたより上手かもしれませんね」なんて言って(笑)
聞き手=仲程玲(四〇) 語り手=伯父・江川義久(七七) - 軍歌、嫌なぐらい分かるわけ。兄たちがいつも軍歌歌うから聞き覚えて。教育って大変よ。軍歌まだ覚えているもん、小学生の女の子だったのに
聞き手=仲間尚子(六一) 語り手=母・玉城千代(八七) - 「あい、おとう、これ三番いなぐんぐゎーがもうけている給料どー」と言って。おばあはかんなじおとうに手合わせよった。これいつなっても忘れない
聞き手=仲松沙也香(二二) 語り手=大叔母・トキ子(八三) - 何にもいいことはない。おばさんだちは何もない時期の子どもだからね。意味ないよ
聞き手=仲嶺真(三三) 語り手=伯母(八〇代) - 「育てもしないくせに」って。泣きよったよ。口から出しよったよ。「育てもしないくせに」って。その時は恨みよった
聞き手=鉢嶺京子(四一) 語り手=祖堅秀子(八三) - 着いて、第一声が教授に呼ばれて、「日本語話せるね?」って
聞き手=比嘉あんの(一六) 語り手=祖母・高良敏子(八四) - そう。アイドルですよ。ホントに(笑)。交通指導が終わるまで待っている人がいたの。それくらい、「見せる警察官」
聞き手=比嘉鈴代(四五) 語り手=母・比嘉洋子(六九) - 隣近所の子どもたち、集まって隠れとってから、映画始まったら、戸閉めるから、その時に入るさ
聞き手=比嘉チハル(四三) 語り手=比嘉幸保(六六) - あの時思ったんは、沖縄と貧乏は別もんやなってすごく感じて。私はそれをいっしょくたにして、沖縄を嫌ってたなあと思って
聞き手=比嘉直子(五五) 語り手=沖縄二世K・N(六〇代) - 友達とねー、れんげ畑ね、帰り。原田屋のおうちの下は、みーんな稲さ。稲取った後はれんげがもういっぱい咲くのね
聞き手=比嘉和香(四九) 語り手=母・賀数孝子(八一) - あっちの嫁になせって言われるからよ、ゲーしてさ、反抗になって、反抗してよ
聞き手=ヒヤジョウマキ(二七) 語り手=祖母・眞栄田トシ(八九) - だから、出たらひかれていたかもしれない。通るのにじゃまになっている私の車を側溝に落として通りたかったんだから
聞き手=藤宮子(三六) 語り手=義母(七二) - これはいかんと思って、「返してこうね」ってお母さんに言ったら、お母さんは「行かないで! 恭枝さん、それは私が買うから」って言いはんねん
聞き手=藤本朋子(五一) 語り手=石原恭枝(八三) - 「おばさん来たよ」って言ったら、来た途端に「元気だった?」と歓迎してくれたのは、このことだったんだなって後で分かったんだけど
聞き手=古里友香(四九) 語り手=大城(旧姓・知花)フヂ子(七七) - 普通でしたら、親が子どもの介護をするじゃないですか。私の場合は反対で、息子に介護されて、病院生活を過ごさせていただいたという感じですね
聞き手=平安名萌恵(二七) 語り手=レイコ(七〇代) - 願っていた内容の復帰ではない。そうだったら、まあ、あまりうれしくはない人もいただろうが、しかし、あの、僕自身はね、まずは復帰するんだという思いが強かった
聞き手=前泊美紀(四九) 語り手=前泊甫美(八二) - うん。法律が適用されるさ。アメリカの法律じゃなくて、日本の法律。それが、一番のうれしさだったな
聞き手=前原洸大(二四) 語り手=仲村渠實(八二) - 私たちもだまされてなかったら、今頃、大きなビル建てていたんじゃないかねーって思うよ(笑)
聞き手=真境名育恵(四七) 語り手=母・新開麗子(七四) - 新川のお墓へ行く時は、牛に車ひかせて、みんな乗せて行った。牛はゆっくりだからいいわけさ。あー、あの時、カメラがあったら写したのにねー
聞き手=松井裕子(七一) 語り手=中村トヨ(八六) - 沖縄で墓を初めて見てびっくりしたよ。防空壕だと思った
聞き手=松岡幸子(七五) 語り手=上運天賢盛(九〇) - 家に持ってきて食べるって言って。あんまりおいしいから。もうとにかくおいしい。カニ豆腐って言って、もうとってもおいしい料理があるんだけどね
聞き手=松田郁乃(三二) 語り手=祖母(八三) - 宿題とか勉強していたらお母が怒られよった。「なんでいなぐんぐゎーに勉強させる?」って
聞き手=松田哲郎(四一) 語り手=母(六九) - 屋敷の桑の木に小さなマイマイがいたからそれを集めてね、湯がいてから食べて、そうやって生きていたんだよ
聞き手=諸見里梨奈(二〇) 語り手=祖父(八六) - どんなしてお母さんと言うか。私のお母さん、育てのお母さん、このお母だのにって思ってよ……
聞き手=山内直子(五四) 語り手=母・ゑみ子(八九) - たばこをやめた日です。五月一五日に何をしていたかというと……たばこをやめる以外には何もなかったような気がするけれども
聞き手=山口祐里瑛(二四) 語り手=祖父・仲里政幸(九一) - たまに卵取って飲みよったよ、隠れて。たたいてからに、穴が空いたらチュッチュッチュして
聞き手=山田哲也(四八) 語り手=母(七四) - 逆に、学校の先生たちが本土と一緒にしようと思って躍起になっていたんだ。俺ら……、子どもはね、あんまり興味なかった
聞き手=山入端由香(三二) 語り手=男性(六〇代) - 役場から公報来て、大暴れして「今すぐ天皇陛下連れてきて、殺せー!」って言ったよ
聞き手=山本和(二六) 語り手=田中美江(九二) - だから全然記憶がないんじゃ。そういう子ども、記憶がない子ども
聞き手=雪田倫代(三七) 語り手=父(七八) - 罰金するって言って罰金払ったよ。嫌だのに、あんなの。ストライキしても意味ない。働いた方がいいさ。やっても、やらなくても勝ち目はないですよ
聞き手=吉門夏輝(三一) 語り手=八重瀬町の祖母(七五) - そんな時に、朝ごはんに納豆が出たの。いくらなんでも、私たちのことが嫌いだからって、こんな腐ったものを出すことないのにねって(笑)
聞き手=渡邉隆(三七) 語り手=母・渡邉敬子(六七) - 例えば僕はよ、箸のつかみ方。八重山でも普通にごはん食べてるさ。日本ではどんなして使うのかなぁとか思ったりよ。一緒なのかな、違うのかな、と思ったりしてよ
聞き手=綿貫円(三三) 語り手=石堂徳一(七三) - あとがき――記憶の玉手箱のような存在 石原昌家
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