荒木菜穂『分断されないフェミニズム―ほどほどに、誰かとつながり、生き延びる』青弓社
非婚/未婚/既婚、正規労働/非正規労働、性差別的な売春か/セックスワークか、女性の保護か/男女平等か――。フェミニズムは分断と連帯にどう向き合えばいいのか。
フェミニズムの議論を骨格に、現場の声にふれた経験に基づき、女性たちが簡単にはつながれない現実を見据えたうえで、シスターフッドとは何かを問いかける。
女性たちが差別に抗い、不満に共感しあいながらも、ともに声を上げられない現実を、ジェンダーに基づく権力構造による分断だけではなく、考え方や生き方、事情や立場が異なる個人の関係性などの視点から読み解く。
「分断」を乗り越えることを模索し、「ほどほどに、誰かとつながり、生き延びる」ための女性のこれからを提案して、長年のフェミニズムの場での活動と思索に基づいて女性のつながりのあり方の再考を求める評論。
- はじめに――オンナの呪いを解く
- 第1章 女は連帯できないのか――フェミニズムとシスターフッド
- 第2章 対話、問い直し、フェミニズム
- 第3章 フェミニズムの「呪い」と女の欲望
- おわりに――他者と適度につながり続けるために
稲垣健志『ゆさぶるカルチュラル・スタディーズ』北樹出版
コギャル、都会と地方、モバイルメディア、F1、音楽、フェミニズム、漫画、ボディ・プロジェクト、社会運動、アート等、多様な文化の側面から逆なでに読み解くカルチュラル・スタディーズ入門。またカルチュラル・スタディーズとはなにか? 今までのカルチュラル・スタディーズの軌跡を概観しつつ、これからの課題についても示唆した意欲作。
- 第1章 モバイルメディアの殻・繭・棘(ケイン樹里安)
- 第2章 「ここ」ではない「どこか」へ:都会と田舎をめぐる若者の物語を移動/越境から考える(清水友理子)
- 第3章 奪い・奪われ・奪い返すスタイル:サブカルチャーとしてコギャルを読み解く(関根麻里恵)
- 第4章 フレンチポップのなかのジェンダー構造:ラブソングにおける対抗的実践を読みとる(中條千晴)
- 第5章 レズビアンの剥片化に抗して:『作りたい女と食べたい女』を読む(竹田恵子)
- 第6章 スポーツのファンダム:クルマ文化とF1(加藤昌弘)
- 第7章 創られる理想、作られる身体:私たちはどのようにボディ・プロジェクトへと向かうのか(竹﨑一真)
- 第8章 「黒い暴動」:移民たちはなぜ踊り始めたのか(稲垣健志)
- 第9章 『三つ目がとおる』と失われた過去の〈場所〉マヤ文明(鋤柄史子)
- 第10章 オンライン空間の文化と社会参加:韓国におけるウトロ地区支援の一端(全ウンフィ)
- 第11章 人と歴史をつなげる現代アート:現代在日コリアン美術を例に(山本浩貴)
- 第12章 文化の「遺産化・財化」に抗う文化実践:「内灘闘争――風と砂の記憶――」展をめぐって(稲垣健志)
- 第13章 「カルスタ」を逆なでに読む:カルチュラル・スタディーズをゆさぶるために(稲垣健志)
ラシード・ハーリディー『パレスチナ戦争―入植者植民地主義と抵抗の百年史』法政大学出版局
アラファートらPLO幹部やサイードなど知識人たちと親交のあったパレスチナ研究大家の初邦訳。膨大なインタビューと、確かな知識に裏打ちされた歴史叙述をベースに、イギリス委任統治政府に追放された伯父や国連に勤務していた父親の話、イスラエルのレバノン侵攻で娘を抱えて逃げた自身の経験など家族史を織り交ぜ、強大な権力に翻弄されてきた民族の一世紀を描き出す。彼らの自決権が否定されてきた先に現在の混迷がある。
- 序章
- 第1章 最初の宣戦布告 1917~1939年
- 第2章 第二の宣戦布告 1947~1948年
- 第3章 第三の宣戦布告 1967年
- 第4章 第四の宣戦布告 1982年
- 第5章 第五の宣戦布告 1987~1995年
- 第6章 第六の宣戦布告 2000~2014年
- 終章 パレスチナ戦争の1世紀
- 訳者あとがき
- 索引
青柳雅文『疑う、知る、考える―哲学をはじめる』ミネルヴァ書房
知りたいと思い、どこまでも問い続けよう。
哲学は「どこまでも問い続けること」です。いますぐ哲学をはじめましょう。本当だろうか、なぜだろうかと問い続けましょう。
トビラを開けて。目の前にあるケーキは「本当にケーキ?」と。
- はじめに
- 序 章 哲学するために
- 第Ⅰ部 疑う、知る
第一章 私たちは本当に「知っている」のか
第二章 考え方は「ひとそれぞれ」なのか
第三章 なぜ「知っている」と言えるのか - 第Ⅱ部 もっと疑う、もっと知る
第四章 心に思ったことは「知っている」ことなのか
第五章 私たちはどこまでも知ることができるのか
第六章 知ろうとしている「何か」とは何か - 第Ⅲ部 存在する
第七章 存在しているのは夢か現実か
第八章 なぜ私たちは存在するのか - 第Ⅳ部 行為する
第九章 何に従って私たちは行為するのか
第一〇章 何が「善い」と言えるのか - 第Ⅴ部 社会に生きる
第一一章 なぜ誰かとともに生きるのか
第一二章 なぜ責任は問われるのか
第一三章 なぜ価値は生まれるのか - 第Ⅵ部 人間として生きる
第一四章 なぜ私たちは生きているのか
第一五章 私たちは「人間」でいられるのか - 終 章 ふたたび哲学するために
- おわりに
- 索 引
林大地『世界への信頼と希望、そして愛―アーレント『活動的生』から考える』みすず書房
〈この世界に信頼と希望、そして愛を抱いてもよいのだということ――アーレントが『活動的生』を通じて私たちに伝えようとしたのは、このあまりにも素朴な、しかしどこまでも力強い、たったひとつのメッセージである。…全体主義の時代を生きたアーレントこそ、まさにこうしたメッセージを切に求める者だったのではないか。否定されるべきものとして世界が眼前に現われる状況にあって、それでもなお、世界を否定し去ることができなかったアーレントこそ、まさにこうしたメッセージを誰よりも必要としていたのではないか〉
ここに鮮やかで瑞々しいハンナ・アーレント論が誕生した。26歳の著者は、アーレントの主著のひとつ『活動的生』(『人間の条件』ドイツ語版)を、「世界」概念を主軸として、「労働」「制作」「行為」「始まり」「出生」などのキーワードともども、「死」「可死性」「不死性」「記憶」「忘却」「過去」「痕跡」といった一連の視座から読み解き、アーレントの著作全体に連なる核心に近づいていく。膨大な注の書きぶりも併せ、ユニークで開かれた本書は、アーレントの思想をひとつのレンズとして、この世界を新たな目で眺めることをめざした試論=エッセイとなっている。
- 序章 世界と子どもへの讃歌としての『活動的生』――二つの詩歌をめぐって
- 第一部 世界にたいしてなぜ信頼と希望を抱くことができるのか――物の持続性と人間の出生性
第一章 活動的生とは何か――活動的生の世界維持形成機能
第二章 世界とは何か――「物」による世界の存続と「行為」による世界の新生 - 第二部 世界への信頼と希望はいかにして破壊されてきたのか――資本主義と全体主義
第一章 資本主義による物の持続性の破壊――「制作‐使用対象物」から「労働‐消費財」へ
第二章 全体主義による人間の出生性の破壊――複数性と自発性の根絶 - 第三部 世界への信頼と希望をふたたび取り戻すには何をなすべきか――世界への気遣いと子どもへの気遣い
第一章 世界への気遣いとしての活動的生――世界への信頼と希望のために(一) - 第三部 世界への信頼と希望をふたたび取り戻すには何をなすべきか――世界への気遣いと子どもへの気遣い
第一章 世界への気遣いとしての活動的生――世界への信頼と希望のために(一)
第二章 子どもへの気遣いとしての教育――世界への信頼と希望のために(二) - 終章 この世界を故郷とするために――『活動的生』が伝えるひとつのメッセージ
- 註
あとがき
参考文献
人名索引
事項索引
宇野常寛編『2020年代のまちづくり―震災復興から地方創生へ、オリンピックからアフターコロナへ』PLANETS/第二次惑星開発委員会

震災復興から地方創生へ、オリンピックからアフターコロナへ──本書『2020年代のまちづくり』は、2010年代以降のこの国のまちづくりや国土運営についての議論を総括して、次の10年、つまり2020年代のまちづくりをどうするかを考える論集です。まちづくりに関わるさまざまなプレイヤーや研究者が集結し、建築や都市開発から小商い、アートまで、多角的にこれからの都市や公共性について議論します。評論家・宇野常寛が編者をつとめ、三菱地所による有楽町エリア再構築に向けた先導プロジェクト「Micro STARs Dev.」の協力のもと制作されました。
- 【巻頭座談会】宇野常寛×齋藤精一×重松眞理子×馬場正尊×古田秘馬|震災復興から地方創生へ、オリンピックからコロナへ──「まちづくり」のこれまでとこれから
- 【インタビュー】西田司 |街にはもっと「小さな公共空間」が必要だ──「ひらく建築」や「小商い建築」から考える「クリエイティブなパブリック」の可能性
- 【論考】門脇耕三|「大都市・都心の再開発/地方都市・郊外のリノベーション」を超えるには?「渋谷のハロウィン」から考える、2020年代のまちづくり
- 【論考】白井宏昌|「環状」から「セル(細胞)状」へ。都市構造の変遷史から考える、「TOKYO2020」以降の東京改造の可能性
- 【インタビュー】藤村龍至|都市と国土はいかにして開発されてきたか?ニューヨークとイタリア、そして80年代から考える、2010年代以降の都市開発
- 【インタビュー】田中浩也|ポスト・スマートシティのビジョンを考える──街には「広義のデジタルファブリケーション」が必要だ
- 【座談会】井上岳一×宮﨑雅人×柳瀬博一|「地方創生」のその次へ──2010年代以降の「地方のまちづくり」を総括し、2020年代への展望を描く
- 【対談】川田十夢×山縣良和|「そこにある植木鉢」のように、風景から東京を変革するための方法
- 【対談】岸本千佳×本瀬あゆみ|建築と不動産をかけ合わせたアプローチが「地方のまちづくり」を後押しする
- 【対談】加藤優一×平松佑介|銭湯から考える、「適度にひらき、閉じる」公共性のあり方
- 【対談】坂本崇博×若松悠夏|これからの街に必要な「働く」環境とは?オフィスからコワーキングスペース(そして自宅の作業部屋)まで
- 【おわりに】宇野常寛|アフターコロナの都市と地方に必要なこととは何か
- 【座談会】長谷川貴之×ブランスクム文葉×牧亮平|「次世代のスター」を生み出すためのまちづくり──東京の中心部・有楽町から考える
- 【SAAI会員インタビュー】岩田竜馬|会社の「外」を知った僕は『マトリックス』の「赤い薬」を飲んでしまったのかもしれない
- 【SAAI会員インタビュー】綿石早希|知らない人同士がフラットにつながる。自然な化学反応が引き起こされる空間設計
- 【SAAI会員インタビュー】脇奈津子|目的なき出会いこそが、成果につながるセレンディピティを生み出す
- 【座談会】青井茂×中森葉月×深井厚志×吉川稔|なぜビジネス街にアーティストが集うのか?
- 有楽町における「アートアーバニズム」の現在地
- 【座談会】井上成×鈴木規文×山本桂司|なぜ渋谷・六本木でも地方でもなく「大丸有」なのか?日本の中心から、街と働き方を変えるためのプロジェクト「Micro STARs Dev. 」の挑戦
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