新刊紹介

新刊紹介_20230625

 
新刊紹介

アダム・プシェヴォスキ『民主主義の危機―比較分析が示す変容』白水社

著:アダム・プシェヴォスキ, 翻訳:吉田徹, 翻訳:伊崎直志
概要

過去200年間の多様かつ詳細なデータを用いて、いまデモクラシーに何が起きているのかを徹底的に解明した比較政治学の最新診断

目次
  • まえがき
  • 第一章 イントロダクション
  • Ⅰ 過去――民主主義の危機
  • 第二章 全般的なパターン
  •  第三章 崩壊と生存の歴史
  •  第四章 歴史の教訓——何に注目すべきなのか
  • Ⅱ 現在――何が起きているのか?
  •  第五章 危機の兆候
  •  第六章 考えられる原因
  •  第七章 何に説明を求めるべきか
  •  第八章 何が前例なきことなのか
  • Ⅲ 未来は?
  •  第九章 民主主義の機能
  •  第一〇章 隠密な変化
  •  第一一章 何が起こり、何が起こりえないのか
  •  訳者あとがき
  •  人名索引/文献/註/図表一覧

岸見太一, 髙谷幸, 稲葉奈々子『入管を問う―現代日本における移民の収容と抵抗』人文書院

著:岸見 太一, 著:髙谷 幸, 著:稲葉 奈々子
概要

入管行政の権力神話を解体する

「不法滞在者」はいかなる暴力を受けても仕方がないのだろうか。なぜ、収容者の命がけの訴えは信用されないのか。そもそも入管法違反とは悪なのか。多角的な観点から入管政策を問い直し、その特質と構造を明らかにする。入管行政によって排除された無登録移民が「社会的に生きられる」社会を実現するための嚆矢となる一冊。

「政治的に存在しなければ、国民国家という政治社会秩序のなかでは、存在していないのと同じことである」と述べたのは、みずからも移民出身の社会学者アブデルマレク・サヤドである。政治的な存在として認知されなければ、社会的な存在をも否定される、とサヤドは論じる。実際、マイノリティは発言しても顧みられることがないし、そもそも発言の場そのものが、与えられてこなかった。新聞や雑誌、テレビなどマスコミの媒体で、意見を求められ、発言の機会が与えられるのは、多くの場合、「有識者」である。誰の意見が「聞くに値する」か誰の発言に「正統性」があるか、これらの判断にあたっては、本書で議論したように、認識的不正義が作用する。その結果、公共空間で発言する機会は、平等に配分されないのである。(「おわりに」より)

目次
  • はじめに  髙谷幸・岸見太一
  • 第1章 入管行政と無登録移民―現代日本における「人権のアポリア」  髙谷幸
    収容と追放のながれ 
  • 第2章 仮放免者の生活―国家からの排除/市民社会への包摂  稲葉奈々子
  • 第3章 収容所とは何か  髙谷幸
    入管収容所の歴史 
  • 第4章 なぜ収容者の訴えは信用されないのか―感情労働現場としての収容施設における認識的不正義  岸見太一
  • 第5章 収容所内での抵抗―ハンガーストライキ  稲葉奈々子
  • 第6章 「剥き出しの生」への縮減に抗して―無登録移民の生の保障をめぐる人権と人道  髙谷幸
  • 第7章 許可なく暮らすことは悪いことなのか―政治理論から入管政策を考える  岸見太一
  • おわりに―無登録移民が「社会的に生きられる」社会へ  稲葉奈々子
  • あとがき

小野寺拓也, 田野大輔『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』岩波書店

概要

「ナチスは良いこともした」という言説は、国内外で定期的に議論の的になり続けている。アウトバーンを建設した、失業率を低下させた、福祉政策を行った――功績とされがちな事象をとりあげ、ナチズム研究の蓄積をもとに事実性や文脈を検証。歴史修正主義が影響力を持つなか、多角的な視点で歴史を考察することの大切さを訴える。

目次
  • はじめに
  • 第一章 ナチズムとは?
  • 第二章 ヒトラーはいかにして権力を握ったのか?
  • 第三章 ドイツ人は熱狂的にナチ体制を支持していたのか?
  • 第四章 経済回復はナチスのおかげ?
  • 第五章 ナチスは労働者の味方だったのか?
  • 第六章 手厚い家族支援?
  • 第七章 先進的な環境保護政策?
  • 第八章 健康帝国ナチス?
  • おわりに
  • ブックガイド

M・クーケルバーク『AIの政治哲学』丸善出版

著:M. クーケルバーク, 著:金光秀和, 著:鈴木俊洋, 著:二瓶真理子, 著:古賀高雄, 著:菅原宏道, 翻訳:直江清隆
概要

AI倫理と同様に、不平等・民主主義・権力・ポストヒューマニズムに関する問題に焦点を当て、人工知能を理解する上で社会的・政治的理論の重要性を提示。前著同様、AIに対する単なる警告や安易な非難を超え、AIの政治についてどう語ればいいのかを分かりやすく、かつ前著よりも掘り下げて解説。人工知能は本質的に政治的であり、人々が関心を寄せる人種差別、気候変動、民主主義と監視社会などの政治問題は、AIをはじめとする技術的発展に照らして、新たな緊急性と意味を持つようになっている。本書は政治哲学というユニークな視点を通して、AIの本質的な政治性を明らかにし、AIという権力によってもたらされる課題に対処するための、豊かな概念的ツールボックスを提供する。

目次
  • 第1章 序論
  • 第2章 自由:AIによる操作とロボットの奴隷
  • 第3章 平等と正義:AIによるバイアスと差別
  • 第4章 民主主義:エコーチェンバー現象と機械全体主義
  • 第5章 権力:データによる監視と(自己)規律化 
  • 第6章 非人間については? 環境政治とポストヒューマニズム 
  • 第7章 結論:さまざまな政治的技術
  • 参考文献
  • 索引

クリストファー・オールドストーン・ムーア『ヒゲの文化史―男性性/男らしさのシンボルはいかにして生まれたか』ミネルヴァ書房

概要

男性のヒゲは時代とともに様々な変化を遂げてきた。男性性の象徴ともいえるヒゲの変化は、単なるファッションの一部にすぎないのだろうか? 長い歴史のなかでヒゲは男らしさの指標であり、社会的および政治的権威とも無関係でなかった。本書は紀元前から現代に至るまでの西洋社会において、男性がこぞってヒゲを伸ばした四つの時代を明らかにし、ヒゲの興隆期とヒゲ剃りの時代を対比することでヒゲの歴史の全体像に迫る。
《原著》Christopher Oldstone-Moore, Of beards and Men : the Revealing History of Facial 

目次
  • はじめに──男性のパターンの歴史
  • 第1章 なぜ男にはヒゲがあるのか
  • 第2章 古代文明とヒゲ
  • 第3章 古典的ヒゲ剃り
  • 第4章 イエスはどうやってヒゲをえたのか
  • 第5章 内的なヒゲ
  • 第6章 ヒゲのルネサンス
  • 第7章 理性のヒゲ剃り
  • 第8章 ロマン主義的想像のヒゲ
  • 第9章 工業の時代の家父長たち
  • 第10章 筋肉と口ヒゲ
  • 第11章 二〇世紀──組織の男たち
  • 第12章 左派の毛
  • 第13章 ポストモダンな男たち
  • おわりに──顔の毛がもつ社会的な力
  • 謝辞
  • 訳者あとがき
  • 人名・事項索引

森山至貴, 能町みね子『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ―性と身体をめぐるクィアな対話』朝日出版社

概要

“みんな”でいたくない“みんな”のために

「LGBT」に分類して整理したら、終わりじゃない。「わからない」と「わかる」、「マイノリティ」と「マジョリティ」を行き来しながら対話する、繊細で痛快なクィアの本。ときに反抗的で、しなやかな態度は明日への希望に――。

性、恋愛、結婚、家族、子孫、幸福、身体、未来――バラバラのままつながった壮大な「その他」たちが、すべての「普通」と「規範」を問い直す。

「『普通』や『みんな』という言葉に己を託したり託さなかったり、託せたり託せなかったりする読者のみなさんを、風通しのよい、というよりは強風吹きすさぶ場所へと連れて行ってしまおうというのが私たちの企みです。どうぞ、遠くまで吹き飛ばされてください」(森山至貴「はじめに」より)

「ワクワクだけでも足りません。ヒヤヒヤするかもしれませんし、何か責められたような気分でイライラしたり、何様だコイツ、という思いでムカムカするかもしれません。逆に、全然言い足りてないぞ、と思うこともあるかもしれません。そのくらいのほうが普通じゃないかと思います。そのくらいでないと、私たちも語った甲斐がありません」(能町みね子「おわりに」より)

目次
  • はじめに  森山至貴
  • 第1章:私たち「その他」は壮大なんですけど? LGBTQ+、分類して整理したあとの、その先の話
  • 当事者性が強すぎて
  • 第2章:基準を疑え、規範を疑え ——性、性別、恋愛ってなんだろう? 
  • 「わからない」って言いたいだけじゃん
  • 第3章:いい加減、そろそろ慣れてくれないかな ——マイノリティとマジョリティのあいだ
  • それは「論」ではありません
  • 第4章:制度を疑い、乗りこなせ ——「結婚」をおちょくり、「家族像」を書き換える
  • 第5章:そんな未来はいらないし、私の不幸は私が決める ——流動する身体、異性愛的ではない未来
  • 第6章:「出過ぎた真似」と「踏み外し」が世界を広げる——「みんな」なんて疑ってやる
  • おわりに  能町みね子
  • 参考文献