新刊紹介

新刊紹介_20230811

 
新刊紹介

榊原哲也, 西村ユミ編『医療とケアの現象学―当事者の経験に迫る質的研究アプローチ』ナカニシヤ出版

概要

医療やケアの実践の現場では何が起こっているのか?

医療実践に関わる医師や看護師や対人援助職,さらに医療を受ける患者や家族にとって,医療やケアに関わる実践はどのように経験されているのか。
現象学を用いた質的研究アプローチを通して、それぞれの当事者の視点から克明に描き出す。

看護を中心に現在行われている現象学的な質的研究では,「事象そのものへ+事象そのもののほうから」というこの〔現象学の〕精神が生かされている。すなわち,医療者が専門職となるために身につけ,専門職としての活動のなかで習慣化している自然科学的ないし医学的なものの見方を一つひとつ棚上げし――あるいは何らかの出来事をきっかけにそうした自身の先入見に気づかされ――,そのことによってみえてくる当事者の経験の時間的・構造的な成り立ちをできる限りありのままに記述していこうとする。そうしたなかで,その事象の記述にふさわしい方法や手続きも,事象そのものに即して選び取られていくのである。(「序章」より)

目次
  • 序 章 医療はどのように経験されているのか 医療実践の現象学の構築を目指して 榊原哲也・西村ユミ
    第1部 医師の視点から
  • 第1章 疾患と病いの現象学 ある医師の語りから 榊原哲也
  • 第2章 診療所で働く家庭医となる みんなと一緒に,時間を重ね,地域のなかの一人になる 西村ユミ
  • 第3章 人びとのケアにおける「対話」 家庭医としての私の経験から 孫 大輔
  • 第4章 地域に生きる摂食障害者へのアプローチ 「自覚的現象学」の試み 野間俊一
    第2部 看護師の視点から
  • 第5章 「伝える」ということ 病棟看護師の語りから(1) 小林道太郎
  • 第6章 「思い」を大切にする 病棟看護師の語りから(2) 小林道太郎
  • 第7章 あいまいな専門職の私 看護の〈専門性〉をめぐる哲学対話 西村高宏
  • 第8章 「ケアの意味を見つめる事例研究」のなかでの現象学との出会い 看護のマインドと技を記述する試み 山本則子
    第3部 対人援助職の視点から
  • 第9章 ソーシャルワーカーの「忘れられない臨床体験」 「巻き込まれ続けること」によって生成される専門職者としての基軸 福田俊子
  • 第10章 「心配だから会いたい」 重度の精神障がい者への多職種アウトリーチ支援における現象学的研究 近田真美子
    第4部 患者や家族の視点から
  • 第11章 透析療法導入2年以内の患者の妻の経験 病いは夫婦でどのように分かち持たれるのか 守田美奈子
  • 第12章 老いることと医療 現象学的老人存在論の一面 和田 渡
  • 第13章 ICUナースによるICUでの患者経験から 交錯する患者の視点と看護師の視点 村上靖彦

戸ノ下達也『戦時下日本の娯楽政策―文化・芸術の動員を問う』青弓社

概要

ダンスホールの閉鎖やレコードの検閲、「健全」な娯楽の推奨などに顕著なように、満洲事変期からアジア・太平洋戦争期に至る戦時期には、政治や経済だけではなく、文化や日常生活が総力戦体制に組み込まれ、統制されていた。

帝国議会や各種委員会の議事録、文部省、内務省、警視庁、内閣情報部(のちの情報局)の資料、新聞報道などの歴史的な史料やエビデンスを丹念にたどり、国民精神総動員運動や厚生運動の内実、決戦非常措置要綱の狙いや背景などを解説しながら、戦時下の娯楽政策の全容と変遷を明らかにする。

統制や制約、あるいは自主規制や忖度などが入り交じるなかで、音楽・映画・演劇・文学・美術など、日常に欠かせない娯楽が戦争に否応なく動員され、ダンスホールやカフェなどの飲食業が転廃業や従業員の解雇を余儀なくされた実態を浮き彫りにする。

目次
  • はじめに
  • 第1章 戦時期の娯楽認識
  • 第2章 満洲事変期の娯楽政策
  • 第3章 日中戦争期の変遷
  • 第4章 内閣情報部の娯楽政策
  • 第5章 アジア・太平洋戦争期の内閣の文化政策
  • 第6章 戦略的守勢から敗戦に至る文化政策
  • 第7章 敗戦に至る娯楽政策
  • おわりに
  • あとがき

山口智美, 斉藤正美『宗教右派とフェミニズム』青弓社

著:山口智美, 著:斉藤正美, 著:津田大介, 編集:ポリタスTV
概要

2022年7月8日に発生した安倍晋三元首相の銃撃事件。

これを受けて企画・配信された『ポリタスTV』の「宗教右派と自民党の関係――ジェンダーと宗教」(前篇・後篇)は、5日間限定の無料公開で10万回以上再生され、大きな反響を巻き起こした。

この配信コンテンツをもとに、全編書き下ろしでジェンダーやセクシュアリティ、家族をめぐる政治、それと宗教右派との関わりをまとめるのが本書である。

1990年代から2000年代初頭のバックラッシュから、安倍政権以後の家族や女性やLGBTをめぐる政策と右派・宗教との関係までを、具体的な政策や運動、テーマにフォーカスして解説し、フェミニズムの立場・視点から問題点を検証する。

知られざる宗教右派の実像と1990年代から現在まで続く苛烈なバックラッシュの実態を明らかにする問題提起の書。

目次
  • はじめに
  • 第1部 安倍政権以前――一九九〇年代後半から二〇〇〇年代初頭のバックラッシュ
    バックラッシュのはじまり
    一九九〇年代のバックラッシュ
    「ジェンダーフリー」バッシング
    第二次男女共同参画基本計画(二〇〇五年)と「ジェンダーフリー」の削除
  • 第2部 安倍政権以後――二〇〇〇年代中盤からのバックラッシュ
    第一次安倍政権以降のジェンダー、セクシュアリティ、家族をめぐる政策と宗教右派
    夫婦別姓問題に対する右派の運動
    「女性活躍」「一億総活躍」
    官製婚活・少子化対策
    プロライフと右派運動
    自民党改憲案
    性的マイノリティの権利と右派運動
    「歴史戦」
  • バックラッシュの政治を捉え直す
  • あとがき
  • 解説 津田大介

村上由鶴『アートとフェミニズムは誰のもの?』光文社

概要

アートとフェミニズムは少なくない人びとからよく見えなくなっていて、その実態がよくわからなくなっている。いわば、アートとフェミニズムは入門したくてもできない「みんなのものではないもの」になっているのが実情だ。もともと、「みんなのもの」になろうとするエネルギーを持っているアートとフェミニズム。理解の断絶が進む現在の状況に風穴を開けるには――。フェミニズムを使ってアートを読み解く、あたらしい試み。

目次
  • 第1章 アートがわからない
  • 第2章 フェミニズムもわからない
  • 第3章 アートをフェミニズムで読み解く
  • 第4章 フェミニズムをアートで実践する
  • 終 章 アートとフェミニズムをみんなのものに

TaiTan, 玉置周啓『奇奇怪怪』石原書房

石原書房
概要

ラッパーのTaiTan(Dos Monos)、音楽家の玉置周啓(MONO NO AWARE / MIZ)の二人が、映画・音楽・小説・漫画などのコンテンツから、生活の中で遭遇する違和感とワンダーの裏に潜む経済の謎まで縦横無尽に語り尽くす、Spotify Podcastチャートで最高順位第1位を記録した、超人気ポッドキャスト番組『奇奇怪怪』。

2022年にポッドキャスト番組としては異例の500ページ越え・本文三段組み・函入りという造本で書籍化され大反響を呼び(国書刊行会より刊行)、版元史上最高予約数を記録。同年秋にはアニメ化やTBSラジオでレギュラー番組『脳盗』が開始されるなど、領域を超えて広がりをみせる同番組が満を持して刊行する書籍版第二弾!

第一弾の百科事典的装いから漫画雑誌的オブジェクトへと変貌を遂げ、書き下ろし序文、語り下ろし跋文、そして巻末解説にギャグ漫画家・藤岡拓太郎氏の短編漫画を併録! 文化と経済の森羅万象を「強引に面白がる」ための言葉と思考の実弾が詰まった異形の対話篇。

目次
  • 序 
  • スラングとコミュニティの研究 2021.09.18
  • TikTokとテレビの中毒性論 2021.09.25
  • TikTok以降の音楽について 2021.09.25
  • 『イカゲーム』と炎上広告 2021.10.21
  • 言葉は身体に比べてダサい論 2021.11.02
  • 恋愛は等価交換なのか問題 2021.11.04
  • 新庄剛志と『嫌われた監督』論 2021.11.13
  • 大怪作『フォビア』と魚卵ビジネス 2021.11.16
  • 平成の胡散臭さ文化論 2021.11.23
  • 論破はなぜ流行るのか 2021.11.27
  • ドキュメンタルとDos Monos 2021.12.02
  • 『プロ野球経営全史』とナベツネ伝説 2021.12.07
  • ナルシストとは何か 2021.12.11
  • U‐NEXTのドキュメンタリー最強説 2021.12.18
  • M‐1とエヴァ 2021.12.23
  • 昭和のカリスマ論と敏腕P 2022.01.13
  • 楽屋ポルノ問題 2022.01.27
  • 深夜ラジオとポッドキャスト 2022.01.29
  • 便乗商法論 2022.02.03
  • 伝説の編集者と河童献金 2022.02.10
  • 藤岡拓太郎氏と語る笑いの原体験 2022.02.26
  • 2ちゃんねるとまとめサイト文化 2022.03.12
  • 平成令和の自己啓発書史を考える 2022.03.31
  • ウィルスミスのやつ 2022.04.02
  • 本音と暴露ブームの謎 2022.04.09
  • 推しがわからん 2022.04.14
  • ポストトゥルースとポッドキャスト 2022.04.16
  • 倍速病 2022.04.26
  • 令和のマナー論 2022.06.04
  • 『ぞうのマメパオ』と愛おしさの正体 2022.06.07
  • 『ハケンアニメ!』が最高だった 2022.06.09
  • 恋愛に興味ある前提なのなんなん問題 2022.06.11
  • 人間関係が壊れない愚痴論 2022.06.16
  • 『トップガン』とギターソロ問題 2022.06.18
  • 顔面恐怖症 2022.06.30
  • 放送禁止用語と『脳盗』 2022.07.02
  • 人は騙されたがってる論 2022.07.05
  • ギャグセン最強王 2022.07.16
  • スマホ以降の美しい顔 2022.07.19
  • なぜ人は飯の写真なぞ撮影するのか 2022.07.21
  • 人はなぜマッチングアプリで絶望するのか 2022.08.09
  • ZOOM会議はなぜしんどい? 2022.08.11
  • 今年のBEST映画が決まりました 2022.09.08
  • TBSラジオ『脳盗』爆誕 2022.09.20
  • M‐1とジョブチューン問題 2022.12.01 
  • 跋 
  • 解説短編漫画「人の話」 藤岡拓太郎

市来達志『東欧グルーヴ・ディスクガイド―革命前夜の音を求めて』DU BOOKS

概要

ロック、ジャズ、ファンク、ヒップホップから子ども向けレコード、エアロビクスBGM、ソ連との宇宙探査記念盤まで――

1989年の東欧革命が起こる以前、“鉄のカーテン”の内側で生みだされた魅惑の〈東欧グルーヴ〉650枚超を紹介!

〈掲載対象〉
ドイツ民主共和国/ポーランド人民共和国/チェコスロヴァキア社会主義共和国
ハンガリー人民共和国/ルーマニア社会主義共和国/ブルガリア人民共和国

目次
  • まえがき――時代に翻弄され、独自の発展を遂げた東欧グルーヴの世界
  • ドイツ民主共和国
  • ポーランド人民共和国
  • Column 越境する東欧グルーヴ―亡命、世界進出、東西の邂逅
  • チェコスロヴァキア社会主義共和国
  • ハンガリー人民共和国
  • Column 分断の時代に東西の架け橋となった「国際歌謡祭」
  • ルーマニア社会主義共和国 
  • Column レコードで蘇る国際ジャズフェスティバルの熱狂
  • ブルガリア人民共和国

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