新刊紹介

新刊紹介_20230908

 
新刊紹介

キャロル・ギリガン『抵抗への参加―フェミニストのケアの倫理』晃洋書房

著:キャロル・ギリガン, 翻訳:小西真理子, 翻訳:田中壮泰, 翻訳:小田切建太郎
概要

世界的なベストセラー『もうひとつの声で』に自ら応答した本、いよいよ日本で出版!

ケアの倫理は、フェミニストの倫理であると同時に人間の倫理である 

ケアの倫理の金字塔『もうひとつの声で』の刊行から時を経て、ギリガンがたどりなおす抵抗の軌跡。
出版後に向けられたフェミニストからの批判への応答に加え、ギリガンの半生の語りと、そこから紡ぎだされるケアの倫理をめぐるアカデミックエッセイ

愛の要求も民主主義社会における市民権の要求も、同じひとつのものだということを教えてくれる少女たちと女たちの声をここに読む!

目次
  • 第1章 未来を見るために過去を振り返る―『もうひとつの声で』再考
    第1節 正義対ケア論争の先にある議論に向けて
    第2節 なぜケアの倫理は攻撃にさらされているのか―家父長制への通過儀礼
    第3節 鍵としての少女と女の声―家父長制への抵抗
  • 第2章 わたしたちはどこから来て、どこへ向かうのか
    ある寓話
    第1節 わたしたちはどこから来たのか 
    第2節 わたしたちはどこまで来たのか
    第3節 わたしたちはどこへ向かうのか 
    第4節 なぜわたしたちは、いまもなおジェンダーを研究する必要があるのか?
  • 第3章 自由連想と大審問官―ある精神分析のドラマ
    第1幕 『ヒステリー研究』と女たちの知
    第2幕 トラウマの隠蔽
    第3幕 女たちの抵抗、男たちとの共闘
    第4幕 大審門官の問いかけ―愛と自由を引き受けるために
  • 第4章 抵抗を識別する
    第1節 美術館で
    第2節 もし女たちが…
    第3節 抵抗
    第4節 完璧な少女たちと反主流派たち
    第5節 少女を教育する女/女を教育する少女
    最終楽章
  • 第5章 不正義への抵抗―フェミニストのケアの倫理
    第1節 ケアという人間の倫理―少年たちの秘密
    第2節 ケアの倫理が目覚めるとき―民主主義を解放するために

マリーケ・ビッグ『性差別の医学史―医療はいかに女性たちを見捨ててきたか』双葉社

概要

医学はいつになったら「本当の科学」になるのか?

「心臓発作は“ヒステリー”」
「HPV(ヒトパピローマウイルス感染症)は“女性だけの病気”」
「卵子は“精子をただ待つ無力な存在”」…

心疾患、骨、幹細胞、更年期、セックス、ホルモン、そして生殖。
長らく「男性の身体」だけを基準としてきた医学は、いつしかあらゆる領域に男性優位主義を浸透させ「非男性の身体」の声を聞くことなく発展した結果として、人間を測りまちがい、不平等を温存し、健康を害しつづけている。
この現状をいかに正し、医学と科学をいかに未来に導くべきか。医療をジェンダーバイアスから解放し、「すべての身体」を救うものにするための必読書。

目次
  • はじめに:「自然な」女性
  • 第一部 得体のしれない身体
    第1章 婦人科学と女性の人生
    第2章 セクシーな研究
    第3章 「ウェルネス」と「エンパワメント」
    第4章 潮を吹く女たち
    第5章 ホルモンを解放せよ
  • 第二部 誤解された身体
    第6章 無視される痛み
    第7章 心臓(ハート)のフェミニズム
    第8章 骨の詩(うた)を聴け
    第9章 がんとグローバリズム
    第10章 精子と卵子の神話
  • 第三部 未来の身体
    第11章 フェムテックのジレンマ
    第12章 クリテラシーを養おう
    第13章 サイボーグであるわたしたち
    第14章 人工子宮に宿るもの

ベンジャミン・カーター・ヘット『ヒトラーはなぜ戦争を始めることができたのか―民主主義国の誤算』亜紀書房

概要

《 民主主義の危機から、戦争は現れる 》

格差、移民、差別、陰謀論……分断社会に解決策を示せないリベラル諸国。
渦巻く不安と不信、露わになるナチズムの脅威。
アメリカを代表する歴史家が描く、緊迫の第二次大戦前夜。

———

「他国が脅威として現れたとき、民主主義はどう対応すればいいのか」
「自国のリーダーが無謀で危険、あるいは無能とわかったとき、私たちはどう行動すべきか」

平和を望む民意を背景に、ヒトラーに譲歩を重ねる英首相チェンバレン。
ナチの脅威を一人訴え続けるチャーチル。
孤立主義の立場から機を窺う米大統領ローズヴェルト。
国内で粛清の嵐を吹き荒らすソ連のスターリン。

様々な思惑が交錯しながら、世界は戦争への道を進んでいく──。

———

アメリカを代表する歴史家が、1930年代から40年代初頭における民主主義の危機と覚醒を鮮やかに描く。
〈 『ドイツ人はなぜヒトラーを選んだのか──民主主義が死ぬ日』続編 〉

目次
  • 主な登場人物
  • プロローグ……民主主義の危機
    〈 PARTI・危機 〉
  • 1……首相の野望──「生存圏」の拡大
  • 2……グライヴィッツ市で何があったのか──ポーランド侵攻のきっかけ
  • 3……「同罪」──赤軍将校の命運
  • 4……「計画は模索中」──チャーチル、チェンバレン、ローズヴェルト
  • 5……「王は、ここでは理解していらっしゃる」──スキャンダル
  • 6……「将来がとても心配だ」──イギリス空軍戦闘機、スピットファイア
  • 7……鉄格子をこすり続ける──移民受け入れ
    〈 PARTII・ミュンヘン 〉
  • 8……「これだ、私が求めていたのは!」──将官たちの企て
  • 9……「この危険という茨のなかから」──ミュンヘン会談
  • 10……銃口を突きつけられて──民主主義の苦難 
  • 11……「不和の種を蒔く」──分断と差別
    〈 PARTIII・戦争 〉
  • 12……「国民のみなさんに申し上げねばなりません……」──宣戦布告 
  • 13……「これがプロイセンの将校か!」──指導者への抵抗 
  • 14……「力を合わせて、ともに進もうではありませんか」──就任演説
  • エピローグ……「始まりの終わり」──大西洋憲章
  • 訳者あとがき
  • 参考文献
  • 主な出来事

高橋康介『なぜ壁のシミが顔に見えるのか―パレイドリアとアニマシーの認知心理学』共立出版

概要

壁のシミがお化けに見えて眠れない……
風に舞う落ち葉が心や意志をもつ蝶のように見えてくる……

このような現象に、皆さんもきっと心当たりがあるに違いない。

私たちの周りに偏在しているこれらの一風変わった現象には、「パレイドリア」、「アニマシー知覚」という名前がある。
一見するとただの見間違いのように思えるかもしれないが、それだけで片付けてしまうのはもったいないほどの奥深さと面白さを秘めている現象である。

本書は、そのような「パレイドリア」と「アニマシー知覚」というたった2つの現象、認知心理学の中でも比較的ニッチな現象について、徹底的に解説することを目指した迫真の一冊である。

私たち人間は「知覚すること」のエキスパートであり、日常生活のなかで「知覚」について真剣に考えることは少ないだろう。
しかし、これらの奇妙な知覚現象を紐解くためには、知覚の基本を抑えておく必要がある。

そこで、本書ではまず、知覚の構造を読み解く作業から開始する。そしてその知覚の構造を参照しながら「パレイドリア」や「アニマシー知覚」に関するさまざまな現象や研究について議論を進めていく。さらには世の中にはびこる「パレイドリア」や「アニマシー知覚」に関連する実例を挙げながら、これらの奇妙な現象のポテンシャルも論じる。

人間の知覚とはどのようなものなのか。
なぜ壁のシミが顔に見えるのか。

本書を読み終えたとき、読者はきっと、人間の知覚の不思議さと面白さの虜になっているはずである――。

【読者対象】
・「知覚」「認識」「錯視」「錯覚」に興味のある高校生
・心理学(人間科学)に興味のある大学生
・知覚心理学や認知心理学を専門とする大学院生
・人間の認識の不思議さに興味のある一般人

目次
  • 第1章 「見る」とはどういうことだろうか?
  • コラム フォアラーのバーナム効果実験
  • コラム 錯視発見のすゝめ――錯視の発見に至るふたつのアプローチ
  • 第2章 パレイドリアの認知心理学
  • コラム パレイドリアの男性バイアス
  • コラム パレイドリアとソムリエ――熟達の不思議
  • 第3章 パレイドリアを巡る冒険
  • コラム 絵文字と顔文字の起源
  • コラム 星座とパレイドリア
  • 第4章 アニマシーの認知心理学
  • コラム 触覚で生まれるアニマシー
  • コラム BigDog ベータ
  • 第5章 日常に潜むアニマシー知覚
  • コラム エルスバーグのパラドクス――曖昧さを避ける
  • 第6章 なぜ壁のシミが顔に見えるのか
  • コラム 4次元知覚の可能性
  • 引用・参考文献
  • あとがき
  • 索引

土屋敦, 藤間公太編著『社会的養護の社会学―家庭と施設の間にたたずむ子どもたち』青弓社

概要

近年、児童虐待が社会問題化している一方で、社会的養護のもとで暮らす子どもへの支援も注目を集めている。これまで援助の「あるべき姿」などを中心に議論されてきたが、現場ではどのような困難が経験され、施設のありようをめぐって何が問題とされているのか。

本書では、児童養護施設や母子生活支援施設、里親などを対象に、各施設のフィールドワークを積み重ね、関連する政策文書や史料を丹念に読み込む。それらをとおして、児童養護施設で求められる「家庭」のあり方、施設で過ごす子どもや職員が抱える葛藤、愛着概念の変容、発達障害と施設の関係性、母親という規範などを浮き彫りにする。

医療、教育、ジェンダーなどの多角的な視点から、子どもを養護する現場や制度が抱える規範や規律を照射して、「家族・家庭」と「施設の専門性」の間に生じるジレンマを明らかにする。

目次
  • 序 章 「社会的養護の社会学」のインプリケーション 藤間公太
  • 第1部 社会的養護と「家庭」
    第1章 母性的養育の剥奪論/愛着理論の再構築と里親委託――一九七〇―二〇〇〇年代の里親関連専門誌の分析から 土屋敦
    第2章 社会的養護政策での「家庭的」の意味とその論理――二〇〇〇年代以降の政策関連資料から 野崎祐人
    第3章 児童養護施設が「家庭的」であること――中規模施設と地域小規模施設の比較から 三品拓人
  • 第2部 子どもの教育体制と施設内規律
    第4章 児童養護施設で暮らす子どもたちの〈仲間〉と〈友人〉――施設と学校でともに生きるということ 宇田智佳
    第5章 児童養護施設の職員は子どもの医療化とどう向き合ったのか 吉田耕平
    第6章 母子生活支援施設の母親規範を問う――介入手段としての生活の決まりに着目して 平安名萌恵
  • 終 章 二〇〇〇年代以降の社会的養護と社会規範・専門概念・ネットワーク 土屋敦
  • あとがき 土屋敦

小松佳代子『アートベース・リサーチの可能性―制作・研究・教育をつなぐ』勁草書房

概要

アートをベースにするとはいかなることか。最新の研究動向をとらえ、美術研究者・芸術家がアートベース・リサーチを多角的に分析。

アートベース・リサーチ(ABR)をめぐる状況は、ここ数年で大きく展開している。ABRは従来の人文社会科学の研究にアートを入れることで、言語的な記述や客観的な分析だけでは捉えきれない、人間の感情や身体的感覚に迫っていく。また、アート活動そのものが研究でもある。アートベース・リサーチの現在地がわかる一冊。

目次
  • はしがき
  • 第I部 ABRの理論的展開
    第一章 ABRの背景と現状[小松佳代子]
    第二章 アート研究としてのABR[小松佳代子]
    第三章 ABRの社会的可能性[小松佳代子]
  • 第II部 ABRの実践――制作者の思考と探究
    第四章 絵画制作というトートロジー――小川洋子『ことり』から制作の思考をたどる[さかいともみ]
    第五章 星屑に星座を与える――ファウンド・フォト作品の制作実践[飯塚 純]
    第六章 西郷隆盛像を作れなかった塑造家・藤田文蔵――近代日本彫刻の裏面史を紡ぐ[竹本悠大郎]
    第七章 文字によるアートの旅――タイポグラフィとの距離から[長島さと子]
  • 第III部 芸術的知性による教育の可能性
    第八章 R・アルンハイムから紐解く「目で考える」ということ[石黒芙美代]
    第九章 美術と美術教育の分断を越えるために――ポーランドの美術教育を手がかりに[南雲まき]
    第一〇章 〈驚くべき出来事〉に見るパラダイム転換と芸術的知性――アーティストワークショップのエピソードから[竹丸草子]
  • あとがきに代えて
  • 謝辞
  • 事項索引
  • 人名索引

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