新刊紹介

新刊紹介_20230916

 
新刊紹介

畑中章宏『感情の民俗学―泣くことと笑うことの正体を求めて』イースト・プレス

概要

私たちの感情は〈ならわし〉によってつくられる?

内側からこみあげてくるように感じられる「感情」。しかし、喜怒哀楽は、時代や慣習によって変わる。つかみづらい感情の正体をもとめて、民俗学をひもとく。

目次
  • はじめに 人は昔、「ぴえん」と泣いていた。
  • I 感情はどこからくるのか?
    1 感情は意外と新しい
    2 ありかを探して
    3 「しぐさ」と感情
  • 幕間 感情的会話 その1
  • Ⅱ 感情とはなになのか?
    1 感情は「表現」なのか
    2 「いいね! 」の進行形
    3 「微笑」と「奇妙な笑い」
    4 「笑い」と「ウソ」
    5 笑う祭と泣く祭
    6 『「いき」の構造』の「いき」
    7 「らしさ」のゆくえ
    8 感情の政治性と社会性
  • 幕間 感情的会話 その2
  • Ⅲ 感情はどこへ行くのか?
    1 共感の時代?
    2 感情の公共
    3 感情をつくる
  • 終幕 感情的会話 その3
  • 参考・引用文献一覧

村上靖彦『傷の哲学、レヴィナス』河出書房新社

概要

人間は傷つき、傷つける。ケアの現場と現象学とを結ぶ泰斗が、「傷」から回復し他者と生き延びるための方途を哲学者レヴィナスとともに探ってゆく、真摯で新しいレヴィナス入門。
日常生活のなかで、誰かを傷つけてしまったことについての後悔と、傷つけてしまうのではないかという畏れを私自身抱いている。人が人を傷つけてしまうという条件をどのようにリカバーするのか、私の行動が意味を持ちうる条件はどのようなものなのか、レヴィナスを日本という異なる文化圏で読み直すときに、私に訴えかけてくる切実さとはそのようなことだ。(本書より)

目次
  • 第1章 レヴィナスの生涯と作品
  • 第2章 外傷の哲学―レヴィナスの核
  • 第3章 逆流する創造―初期の世界論と他者論
  • 第4章 暴力批判論―第一の主著『全体性と無限』
  • 第5章 後期思想『存在の彼方へ』
  • 第6章 外傷としての主体から深淵の空虚へ
  • 第7章 メシアニズムを捨てて―信仰なき宗教について
  • 第8章 レヴィナスの歴史哲学
  • 終章 死者の復活―回復論としての歴史
  • 補章1 消えたアルベルティーヌ―メルロ=ポンティという鏡に映るレヴィナス
  • 補章2 レヴィナスとすき間のない世界―貧困地域の子ども支援を例に

吉村さやか『髪をもたない女性たちの生活世界―その「生きづらさ」と「対処戦略」』生活書院

概要

彼女たちは「髪は女のいのち」という根強いジェンダー規範に満ちたこの社会をどう生きてきたのか。

「生きづらさ」を軽減/解消させながら、この社会をしなやかに生き抜いてきた、髪をもたない女性たち。
その生活世界と多様な対処戦略に焦点を当て、
「女性に髪があるのは自然であたりまえ」「女性の髪は美しいほうが望ましい」という常識的知を問い直す。

目次
  • 序章 問題の所在――髪をもたない女性たちの生きられた経験を聞き取る
  • 第1章 髪をもたない女性たちの「生きづらさ」
  • 第2章 「ウィッグ生活」という対処戦略
  • 第3章 「このゆびとまれ」という対処戦略
  • 第4章 「さらす」という対処戦略
  • 第5章 「スキンヘッド生活」という対処戦略
  • 終章 髪をもたない女性たちの多様な意味世界に接近するために
  • 補論1 「髪の喪失」を問う
  • 補論2 隠すでも、隠さないでもなく――パートナーとの日常生活を通して
  • 初出一覧
  • あとがき
  • 参考文献

仲正昌樹『ドゥルーズ+ガタリ〈千のプラトー〉入門講義』作品社

概要

現代思想の“バイブル”を本邦初、完全攻略。

「リゾーム」、「抽象機械」、「リトルネロ」など、なんとなく訳知り&一知半解に使われ過ぎる用語やヘンテコリンな概念などを辛抱強く丁寧に説明。スピノザ、ニーチェ、フーコーや生物学史、文化人類学、精神分析、小説などをはじめ、その背景にある膨大な思想や文脈を抑え、きちんと詳細に解説。難しすぎる、よって途中で挫折することで有名なテクストを、この一冊で完全読解。これ以上にない唯一の入門書

目次
  • 講義 第1回 緒言、1「序―リゾーム」、2「一九一四年―狼はただ一匹か数匹か?」を読む
  • 講義 第2回 3「BC一〇〇〇〇年―道徳の地質学」、4「一九二三年十一月二〇日―言語学の公準」を読む
  • 講義 第3回 5「BC五八七年、AD七〇年―いくつかの記号の体制について」、6「一九四七年十一月二八日―いかにして器官なき身体を獲得するか」を読む
  • 講義 第4回 7「零年―顔貌性」、8「一八七四年―ヌーヴエル三篇、あるいは『何が起きたのか?』」、9「一九三三年―ミクロ政治学と切片性」を読む
  • 講義 第5回 10「一七三〇年―強度になること、動物になること、知覚しえぬものになること…」を読む
  • 講義 第6回 11「一八三七年―リトルネロについて」、12「一二二七年―遊牧論あるいは戦争機械」を読む
  • 講義 第7回 13「BC七〇〇〇年―捕獲装置」、14「一四四〇年―平滑と条理」を読む

クレール・マラン『断絶』法政大学出版局

著:クレール・マラン, 翻訳:鈴木 智之
概要

恋愛とその破局、愛する人の不在、家族との訣別、出産と生誕、怪我による身体変容、アルツハイマー病による人格変容……。存在の脆弱さ、壊れやすさに対する繊細な配慮が、常識的な期待や希望の言説に抗して、いかに人間存在が脆く、容易に破局から回復しえないのかを見極める。それでもなお、挫折を「肯定する」のでもなく、別離から「立ち直る」のでもなく、私たちはいかにして生き延びることができるか。

目次
  • 序 章 人生はいくつもの別れでできている
  • 第1章 自分自身に、そして他者に忠実であり続けることの不可能性
  • 第2章 愛する人との別れ
  • 第3章 自分自身になる
  • 第4章 散逸の喜び
  • 第5章 事故に遭った人
  • 第6章 誕生と別れ
  • 第7章 家族と別れる
  • 第8章 消失
  • 第9章 断絶の性
  • 第10章 夜を渡る
  • 第11章 契約の破綻
  • 訳者あとがき
  • 参考文献

ジェレミー・リフキン『レジリエンスの時代―再野生化する地球で、人類が生き抜くための大転換』集英社

概要

再野生化する地球で、人類が生き抜くためには、経済・政治・社会の大転換が必要だ。
地球を人類に適応させる「進歩の時代」から人類が地球に抵抗し、自然界と共存する「レジリエンスの時代」へ。
世界的な経済社会理論家が描く、危機脱出のための処方箋!

「人新世の危機」を解決する、コモン型経済のリアルな姿がここに。
――斎藤幸平(『人新世の「資本論」』)

目次
  • 第1部 効率vs.エントロピー─―近代の弁証法
    第1章 マスクと人工呼吸器とトイレットペーパー─―適応力は効率に優る
    第2章 テイラー主義と熱力学の法則  
    第3章 現実の世界――自然界の資本
  • 第2部 地球の財産化と労働者の貧困化
    第4章 大転換――時間と空間の地球規模の囲い込み  
    第5章 究極の強奪─―地球のさまざまな圏と遺伝子プールと電磁スペクトルの商品化
    第6章 資本主義の矛盾─―効率性の向上と労働者の減少と消費者債務の増加
  • 第3部 私たちはどのようにしてここに至ったか――地球上の進化を考え直す
    第7章 生態学的自己――私たちの一人ひとりが散逸のパターン
    第8章 新たな起源の物語─―生命を同期させ、形作るのを手伝う生物時計と電磁場
    第9章 科学的方法を超えて─―複雑で適応的な社会・生態系をモデル化する
  • 第4部 「レジリエンスの時代」――「工業の時代」の終焉
    第10章 レジリエンス革命のインフラ  
    第11章 バイオリージョン(生命地域)統治の台頭
    第12章 代議制民主政治が分散型ピア政治に道を譲る
    第13章 生命愛(バイオフィリア)意識の高まり

坂本龍一, 空里香監修『坂本図書』バリューブックス・パブリッシング

企画・原案:坂本 龍一, 監修:空 里香
概要

【坂本龍一が語る、本を介した36人の人物録】

坂本龍一の傍にはいつも本があった。「いつか古書店の店主になるのが夢だった」と語り、東京の仮住まいでも特製の本棚を設け新旧の本を蔵していくほど、無類の本好きで愛書家だった。
本書は、2018年から2022年にわたり、婦人画報に掲載していた連載『坂本図書』全36回分と、2023年3月8日に実施された、坂本龍一と旧知の仲である編集者・鈴木正文氏との対談「2023年の坂本図書」を収録しています。
本から始まり、本に気づかされ、本で確信する。
本を媒介に浮かび上がる、坂本龍一の記憶と想像の人物録です。

目次

coming soon…

加治屋健司『絵画の解放―カラーフィールド絵画と20世紀アメリカ文化』東京大学出版会

概要

モダニズム美術批評から
インテリア・デザインの広がりへ
ヘレン・フランケンサーラー、モーリス・ルイス、ケネス・ノーランド、ジュールズ・オリツキー、フランク・ステラら、20世紀半ばのアメリカで隆盛したカラーフィールド絵画の代表的画家5名を取り上げ、同時代の展覧会評や批評、美術動向に関する言説を丹念に読み解き、20世紀アメリカ文化との豊かな関係性を明らかにする。

目次
  • 序論 新しい出発に向けて
  • 第1章 モダニズム美術批評との関わり――教導から協働へ
    1 カラーフィールド画家とモダニズム美術批評家
    2 クレメント・グリーンバーグとマイケル・フリード
    3 グリーンバーグの美術批評の変化
  • 第2章 多様な美術批評による解釈――個展の展覧会評を中心に
    1 ヘレン・フランケンサーラー
    2 モーリス・ルイス
    3 ケネス・ノーランド
    4 ジュールズ・オリツキー
    5 フランク・ステラ
  • 第3章 六〇年代美術とともに――ポップ・アート、オプ・アート、ミニマル・アート
    1 同時代の展覧会と批評
    2 非コンポジションという共通の関心事
    3 カラーフィールド絵画に対するミニマリストの関心
  • 第4章 アメリカ文化のなかで――商品デザイン、複製メディア、インテリア・デザイン
    1 具体的なイメージや事物とのつながり
    2 複製技術の経験との比較
    3 インテリア・デザインとしての役割
  • 結論 絵画の解放
  • あとがき
  • 図版出典一覧
  • 参考文献
  • 索引

マーク・フィッシャー『K-PUNK 夢想のメソッド―本・映画・ドラマ』Pヴァイン

概要

私たちの生をむしばむ、政治的、心理的、対外的、対内的な抑圧に立ち向かい、聡明で、常に燃え続け、獰猛な激しさをもって今日における「失われた未来」を調査し、知性を磨く努力を怠らなかった思想家、マーク・フィッシャー。21世紀でもっとも重要な政治的テクストであり、すべての人にとっての必読書『資本主義リアリズム』を上梓し、1979年以降の資本主義が独自の「リアリズム」様式を押しつけ、それが左派リベラルにおいても内面化されていることを暴きながらも、社会主義という、いまとなっては「リアリズム」を喪失した大義を捨てずに思考し続けた批評家。スラヴォイ・ジジェク、ラッセル・ブランド、オーウェン・ジョーンズらが絶賛し、マーク・スチュアートやベリアルをはじめ多くのミュージシャンに刺激を与えた思想家。
ポスト左翼がブレグジットに直面した際に、旧来の左翼の惰性を非難し「右傾化」することが「大人」だとされたときも、マーク・フィッシャーはその惰性をどうしたら脱却できるのかと向き合い、安易な「右傾化」に同調することもなかった。
アカデミックになることなく、つねにポピュラー・ミュージックや映画、大衆文学を出発点としながら大衆迎合主義に陥ることも回避しつづけてきた知性の、彼の人気を決定づけた原点にしてすべて──それが彼の伝説のブログ『K-PUNK』だった。
その『K-PUNK』から精選されたコレクションが全三冊に分けられ、ついに翻訳刊行される。まずはその第一弾は「文学/映画/ドラマ編」。序文はサイモン・レイノルズ。
幸いなことに、こうして私たちは彼の文章に立ち返ることができるし、その文章のなかには、情熱的で、たとえどんなに悲観的になろうとも、未来を諦めてはいないマーク・フィッシャーがつねにいるのだ。

目次
  • 序文 (サイモン・レイノルズ)
  • 編者からのはしがき (ダレン・アンブローズ)
  • なぜKか?
  • 第一部
    夢を見るためのメソッド:本
    本のミーム
    空間、時間、光、必要なもののすべて──『J・G・バラード特集』(BBC4)についての考察
    私はなぜロナルド・レーガンをファックしたいのか
    移動遊園地の色鮮やかなスウィング・ボート
    退屈の政治学とは?(バラードのリミックス2003)
    あなたのファンタジーになりたい
    ファンタジーの道具一式:スティーヴン・マイゼルの「非常事態」
    J・G・バラードの暗殺
    不安と恐怖の世界
    リプリーのグラム
    夢を見るためのメソッド
    アトウッドの反資本主義
    トイ・ストーリーズ:あやつり人形、人形、ホラー・ストーリー
    ゼロ・ブックスの声明
  • 第二部
    スクリーン、夢、幽霊:映画とテレビ
    ひとさじの砂糖
    あの人は僕の母さんじゃない
    ナイジェル・バートン、起立しなさい
    ポートメイリオン:理想の生き方
    ゴルゴタの丘の唯物主義
    この映画じゃ僕は感動しない
    第三帝国ロックンロールの恐怖とみじめさ
    我々はすべて欲しい
    ゴシックなオイディプス王:クリストファー・ノーランの『バットマン ビギンズ』における主体性と資本主義
    夢を見るとき、我々は自分たちをジョーイだと夢見るのか?
    クローネンバーグの『イグジステンズ』の覚書
    撮影したから自分で思い出す必要はない
    マルケルの幽霊と第三の道のリアリティ
    反アイデンティティ政治
    「あなたは昔からずっとここの管理人です」:オーバールック・ホテルの幽霊的空間
    カフェ・チェーンと捕虜収容所
    理由なき反抗
    廃墟のなかの歴史家ロボット
    『マイク・タイソン THE MOVIE』評
    「彼らは彼らの母親を殺した」:イデオロギーの症状としての『アバター』
    雇用不安と父権温情主義
    贈り物を返品すること:リチャード・ケリーの『運命のボタン』
    社会への貢献
    「とにかく気楽に構えてエンジョイしましょう」:BBCに登場した被投性
    『スター・ウォーズ』は最初から魂を売り飛ばしていた
    ジリアン・ウェアリングの『Self Made』評
    バットマンの政治的な右派転向
    敵は誰かを思い出せ
    善悪の彼岸:『ブレイキング・バッド』
    階級の消えたテレビ放送:『Benefits Street』
    味方してしまう敵:『ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ』
    手放す方法:『LEFTOVERS/残された世界』、『ブロードチャーチ 〜殺意の町〜』、『ザ・ミッシング 〜消えた少年〜』
    英国風刺の奇妙な死
    『ターミネーター:新起動/ジェニシス』評
    名声が建てた家:『セレブリティ・ビッグ・ブラザー』
    アンドロイドを憐れんで:『ウエストワールド』のねじれた道徳観
  • 索引

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