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著者 | 小川公代 |
発行 | 講談社 |
発売日 | 2021/08/30 |
自己と他者の関係性としての〈ケア〉とは何か。
強さと弱さ、理性と共感、自立する自己と依存する自己……、二項対立ではなく、そのあいだに見出しうるもの。ヴァージニア・ウルフ、ジョン・キーツ、トーマス・マン、オスカー・ワイルド、三島由紀夫、多和田葉子、温又柔、平野啓一郎などの作品をふまえ、〈ケアすること〉の意味を新たな文脈で探る画期的な論考。
本書は、キャロル・ギリガンが初めて提唱し、それを受け継いで、政治学、社会学、倫理学、臨床医学の研究者たちが数十年にわたって擁護してきた「ケアの倫理」について、文学研究者の立場から考察するという試みである。(中略)この倫理は、これまでも人文学、とりわけ文学の領域で論じられてきた自己や主体のイメージ、あるいは自己と他者の関係性をどう捉えるかという問題に結びついている。より具体的には、「ネガティブ・ケイパビリティ」「カイロス的時間」「多孔的自己」といった潜在的にケアを孕む諸概念と深いところで通じている。本書は、これらの概念を結束点としながら、海外文学、日本文学の分析を通して「ケアの倫理」をより多元的なものとして捉え返そうという試みである。(本書「あとがき」より)
- 序章 文学における“ケア”(“ケア”の価値が看過されるわけ;ネガティヴ・ケイパビリティと共感力 ほか)
- 1章 ヴァージニア・ウルフと“男らしさ”(病気になるということ;負の「男らしさ」を手放す ほか)
- 2章 越境するケアと“クィア”な愛(ケアの倫理と民主主義;同性婚が認められない社会とオスカー・ワイルド ほか)
- 3章 弱さの倫理と“他者性”(ケアの倫理が問い直す正義論;ロマン主義時代におけるケアの倫理 ほか)
この記事では『ケアの倫理とエンパワメント』pp.192-221に記載の参考文献についてご紹介します。
序章 文学における“ケア”
ジョアン・C・トロント, 岡野八代(2020)『ケアするのは誰か?: 新しい民主主義のかたちへ』白澤社
ヴァージニア・ウルフ(2015)『自分ひとりの部屋』平凡社
ファビエンヌ・ブルジェール(2014)『ケアの倫理』白水社
神谷美恵子(1981)『神谷美恵子著作集 4 ヴァジニア・ウルフ研究』みすず書房
帚木蓬生(2017)『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』朝日新聞出版
チャールズ・テイラー(2020)『世俗の時代【上巻】』名古屋大学出版会
サンドラ・ギルバート, スーザン・グーバー(1986)『屋根裏の狂女―ブロンテと共に』朝日出版社
國分功一郎(2017)『中動態の世界 意志と責任の考古学』医学書院
S・T・コウルリッジ(1998)『『政治家必携の書 聖書』研究―コウルリッジにおける社会・文化・宗教』東京コウルリッジ研究会
中野剛志(2013)『保守とは何だろうか』NHK出版
1章 ヴァージニア・ウルフと“男らしさ”
ヴァージニア・ウルフ, ジーン・リース(2009)『灯台へ/サルガッソーの広い海』河出書房新社
著:ヴァージニア・ウルフ, 著:ジーン・リース, 翻訳:鴻巣 友季子, 翻訳:小沢 瑞穂
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『現代思想 2020年3月臨時増刊号 総特集◎フェミニズムの現在 (現代思想3月臨時増刊号)』青土社
川本隆史編(2005)『ケアの社会倫理学: 医療・看護・介護・教育をつなぐ』有斐閣
ヴァージニア・ウルフ(2019)『ある協会』エトセトラブックス
キャロル・ギリガン(1986)『もうひとつの声―男女の道徳観のちがいと女性のアイデンティティ』川島書店
品川哲彦(2007)『正義と境を接するもの: 責任という原理とケアの倫理』ナカニシヤ出版
ドゥルシラ・コーネル(2003)『脱構築と法―適応の彼方へ』御茶の水書房
著:ドゥルシラ コーネル, 原名:Cornell,Drucilla, 翻訳:昌樹, 仲正, 翻訳:清世, 望月, 翻訳:一勇, 藤本, 翻訳:達也, 西山, 翻訳:八代, 岡野, 翻訳:淳, 久保田, 翻訳:佳以, 郷原
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